第13話
『彼』がいる外では、続々と戦闘用装甲車がコンビニ前停車していた
その他にもバイクや単車、自転車で駆け付け始めた迷彩服姿の住民達も
姿を現しはじめた
彼等彼女等はそれぞれ敏捷な身のこなしで、『鬼獣』と呼ばれる化け物に
応戦をはじめる
「日本にようこそ!! 歓迎してやるぜ!!」
一台の戦闘用装甲車からモヒカン頭の男性が飛び出し、自動小銃を
片手に持っては、銃を乱射しはじめ 次々と鬼獣の群れに弾丸を撃ち込んでいく
周囲の通行人や住民達も、皆が思い思いに銃の引き金を絞り、銃声の
オーケストラが奏でられる
しかし、それでも鬼獣の群れは怯むことなく銃弾の嵐に怯まずに
突進を続けてくる
「これだから『鬼獣』警報は当てにならねぇっ!!」
フェイスペインティングを施した貌を歪めた男性通行人が、貌を
歪めつつ悪態をつく
「文句を言っている暇があったら、手を動かしなさい!!」
そんな男性通行人に、隣にいた女性住民が機関銃を乱射しながら叱咤する
「わかっているよ! ちくしょう! 本当に最悪な気分だ!!」
フェイスペインティングを施した男性住民は、手にしたM16A4アサルトライフルを
両手で握り締めると、『鬼獣』に向かって銃弾を掃射していく
M-16A4アサルトライフルから放たれる5.56mm弾は確実に鬼獣に着弾し、
その肉体を 破壊していく
その度に、緑色の体液が辺り一面に飛び散る
戦闘用装甲車―――この時点では『彼』は知る由もないが、イギリスの
アルヴィス社が開発した偵察戦闘車『FV101 スコーピオン』の運転席にいた
男性通行人が鋭く口笛を吹いた
すると、自動小銃の引き金を絞っていたモヒカン頭の男性通行人が
視線を向けた
「速やかに前進し、死傷者を回収しろという事だ!」
男性通行人はそう言うと、スコーピオンから飛び降りた
「まじかよ……ここがどういう状況なのか、わかんないってのに」
その声を聞いたモヒカン頭の男性は舌打ちをしつつ、M16A4アサルトライフルに
弾倉を叩きこむと、素早くコッキングレバーを引いて薬室に初弾を送り込み、
男性通行人の後を追う
銃火器類の音が響き渡る中、他の通行人達もそれに続き、次々と移動を始める
通行人の年齢も様々な男女が入り混じっているが、誰もが必死の形相を浮かべて、
鬼獣に向かって銃弾の嵐を浴びせていた
食パンを咥えている学生らしき通行人や、両手で抱えられるほどの大きな
バッグを持っている小学生の女の子も必死の形相を浮かべて
銃口を鬼獣に向けては、引き金を絞る
表情は恐怖に染まっている者もあれば、怒りに打ち震える者もいるが、共通
している事は誰一人逃げ出そうとしている姿が見られないという
事だった
それを見た『彼』は、この『世界』の人間達は全員死ぬ覚悟が出来ている
という事に気付く
その光景に『彼』は理解できなかった
「(なんだ、この修羅場は? どうしてこんなバケモノと普通に戦っている?)」
なによりもっと理解できないのは戦闘に参加している人々が、あまりにも手馴れて
そして躊躇なく殺し合いをしているということだ
統制のとれた射撃といい、無駄の無い弾倉の入れ替えといい、一つ一つの
動作が洗練されている
その証拠に、『鬼獣』と呼ばれる怪物達の身体には無数の穴が空いており、
緑色をした 体液が飛び散り、倒れ伏している個体もいた
まるで映画でも見ているような感覚に陥ってしまう光景だ
『彼』が驚愕している最中にも、銃火器の嵐は止むことはなく、鬼獣の群れは
緑色の血飛沫を撒き散らしながら、次々と倒されていく
それでも『鬼獣』の数は一向に減る気配がなく、 むしろ
増えてきているような気がする
戦闘は激しさを増していくが、『彼』はこれが日常なのか?と疑問を
抱くほどに、この戦闘風景が非現実的に思えてならなかった
金切り声を発した『鬼獣』に突進されて齧られた何人かが、悲鳴と怒号を
上げながら地面に倒れる
瞬く間に地獄絵図と化していくがそれを横目に見ながらも通行人達の
動きは鈍ることなく、 的確に反撃を行い次々と押し寄せてくる
『鬼獣』へと銃弾を撃ち込む
『鬼獣』の肉体は強靭でもあり、銃弾がなかなか貫通しない
しかし、それでも彼等彼女等は怯むことなく撃ち続ける
「( いや、そんな事は後で考えよう。)」
『彼』は一刻も早くこの場から立ち去ることにした
『ゼノモーブ』と同じ姿の『鬼獣』と闘えるはずが『彼』には到底無理だ
それに、もし仮に彼等彼女等と共闘したとしても足を引っ張るだけだ
そう考えた結果、その場から逃げ出す事を選択した
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