第10話

『奇妙な集団』は少なくとも『彼』は、元いた『世界線』では見た事はないし、

 ましてや 遭遇した事もなかった

 あるにはあるが、それは映画でしかない

『奇妙な集団』は、ダン・オバノン脚本の70年代SFホラー映画シリーズ作品内で

 登場した『 架空生物』にしか見えない

 それは最初の1作目では大型宇宙船の薄暗い閉鎖空間の中で乗組員達が

 次々と襲われたり、 2作目では宇宙海兵隊と壮絶な戦いを繰り

 広げたりする怪物だ

 番外ではもう一つの有名狩猟生物との凄絶な死闘を繰り広げてもいる

『奇妙な集団』は、その宇宙生物に酷似していた





 人間の頭蓋骨に似た頭部に、半透明のフードのようなものを被り、

 貌にはそれと判るような形状の鼻や耳、目などは存在しない

 口の中にもうひとつ小さな口が付いていて、その口からは無数の

 歯が生えている

 背中には枝の様な長い6本のパイプがあり、身長は2mほどで長い

 手足を持っている

 身体には衣服のような物は身に着けていない

 口から発せられるのは、独特で一度聞けは忘れられない耳障りな金切声だ

 奇怪かつ不気味な姿をした異形の化け物集団は、『彼』からするとどう見ても

 SFホラーの金字塔として有名な『ゼノモーブ』にしか見えなかった



「(『鬼獣』って、……あれかっ!! アレがそうなのかっ!? 

『ゼノモーブ』の奴らじゃないか!!)」

『彼』は、『鬼獣』の姿を確認して驚愕する

 一方、銃撃を浴びせ続ける通行人達は一歩も引く事無く、金切り声を発しながら

 凄まじい速さで向かってくる『鬼獣』へ容赦のない弾丸の雨を降らせ続けていた

「糞ったれが!! 次から次へと湧きやがる! ゴキブリ並みにしつこい野郎どもめ!!」

 奇妙に銃弾を躱しつつ、金切り声を発しながら次々と向かってくる『鬼獣』に

 男性通行人が悪態をつくと、再び自動小銃の引き金を絞る

「いい加減にくたばれよっ この化物がぁああああっ」

 別の男性通行人も負けじとばかりに、鞭のようにしなる尾を振り回す

『鬼獣』へ引き金を絞る

 そんな存在に対しても、人々は必死に応戦している

 鬼気迫る形相で自動小銃を撃ちまくっているのは男性通行人ばかりではなく、

 女性や子供、老人の姿もあった



 コンビニ店内にいた客も店員も、例外なく小銃を手に取り撃ち続けている

 中には、『鬼獣』の反撃で負傷して他の通行人に助け起こされている者もいた

 だが、負傷者を助け起こす通行人の通行人の貌には余裕は一切無い

 皆、一様に緊張と焦燥感で表情が強張っている

「衛生兵っ、衛生兵っ!!」

 と叫んでいる通行人もいれば・・・

「おい、しっかりしろぉおおお、死ぬんじゃねぇえぞ!!」

 負傷した仲間を怒鳴りつけている通行人もいる

 担架に乗せられて搬送されるのは良い方なのか、負傷者の大半は

 アスファルトの上に倒れていた

『彼』がいるコンビニ店内にも血臭と硝煙が漂い始めていた

「(何なんだよこれはっ!? 

 朝起きて目覚めたら、異世界でしたてきな、ネット小説や

 アニメは読んだことも見た事もあるが、朝起きて目覚めたら、

 そこは地球外生命体と戦争している世界線でしたなんて、俺は

 聞いてないぞっ!?)」

 彼が混乱している間にも、 あちこちで爆発音と怒声が響いている

 これが夢なら早く覚めてくれっと心の中で、『彼』は必死に祈った

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