第6話

『彼』は何とも言えない表情を浮かべつつ、視線を再び軍事博物館のような雰囲気を漂わせているコーナーに向けた

 怖いもの見たさに好奇心を刺激され、銃器類が置いてある棚へ近づいていく

 陳列されている銃器類は、どれもこれも本物にしか見えない

 しかも、その一つ一つが、まるで生きているかのように存在感を放っていた

 恐ろしく精巧に作られている

 陳列されている銃器類は、ほとんど『彼』がが映画やテレビ、ゲームでしか

 目にしたことがない代物ばかりだった

 思わず触れたくなる衝動に駆られる程にだが、触れる事はしない

 そんな銃器類の傍に、弾薬が並べられているケースがある

 どうやら、銃弾も販売しているようだ


 販売されている銃弾の種類は、拳銃弾から対戦車ライフルまで様々だった

 しかも、その全てが本物に見えるから不思議だ その銃器類が放つ存在感が、

 本物のように見えるからだろう 銃器が発している

 オーラのようなものが、本物だと錯覚させるのかもしれない

 その銃器類が発している存在感は、どこか不気味さを感じさせるものだった

 まるで、銃器自体が意思を持っているかのように感じるほどに……

 どう見ても、『彼』にはモデルガンっぽくには見えなかった

 その銃器類の中で『彼』が映画やテレビゲームで良く見かける銃を見つけると、

 恐る恐る手に取り観察してみる

 その銃は、銃身が長く、グリップ部分が握りやすい形状をしていた

 そして、その銃は映画などで見るよりも、実物の方が迫力があった

 それは、銃が放つ存在感のせいだろう その銃の放つ気配は、恐怖すら覚えるほどの威圧感があった

 銃の放つ異様なまでの存在感は、ただのモデルガンでは出せないだろう


 いや……そもそも、こんな場所で銃器を販売する事自体、普通ではないのだ

 店内にいる客達は、誰もが迷彩服を着用しているし、銃器を手にしている者も多い

 中には、自動小銃らしき物を携帯している者もいる

 しかも、皆、腰に差したり、胸ポケットに入れていたり、手に持っていたりしていた まるで護身用と言わんばかりに

「(えーと・・・たしかこれ、テレビゲームや映画でよく見る、ベレッタっていう銃だったっけ?)」

『彼』は、手に持つ銃の外観を見ながら心の中で呟く

 確かに今手に持っている銃の名は、ベレッタという銃だ

 イタリア製の自動式拳銃で、アメリカ軍が正式採用する銃でもある

 この銃の特徴は、何と言っても、そのフォルムだ

 銃身が細長く、グリップ部分は握りやすくなっている そして、この銃の最大の特徴が、トリガーを引くだけで、 銃口から弾丸が発射される点だ



 つまり、引き金を引いている間は、常に弾丸を連射できる銃なのだ

 さらに、弾丸を装填する際には、専用の弾倉を銃本体に装着すればいいだけなので、素早く弾丸を銃に込める事ができる

 ちなみに、専用に開発されたマガジンは、30発の弾薬を収納可能だ

 他にも、銃口付近にマズルブレーキと呼ばれる部品を装着する事で、銃声を軽減させる事も可能だが・・・

『彼』にそんな詳しい知識はない

 価格が気になったのか、『彼』はふと裏返しになっていた値札のタグをひっくり返すと――――衝撃を受けた

「(何・・・この値段)」

 値札のタグには『10円』という手頃を通り過ぎて投売り感満載な

 数字が書かれていた

 明らかにおかしい

 このコンビニにある銃器類は、全て本物にしか見えない

 それなのに、この価格は安すぎる

 逆に怪しさを感じてしまうぐらいに 何かあるのではないかと思いつつ、

『彼』はもう一度数字と単位を確認して、幾つかの

 銃器類に手を伸ばす

 

 先ず、『彼』が最初に手を伸ばしたのは、M4カービンという名称の

 アサルトライフルだ

 米軍が制式採用しているライフルである

 M16A1を改良した銃であり、様々なバリエーションが存在する

 次に『彼』が手に取って見たのは、FN P-90 の名称で知られるセミオートマチック式のハンドガンだ

 こちらは、イスラエル軍の制式小銃として採用されている

 単発式で装弾数は7発

 次に触ってみたのは、H&K G3 MP5 短機関銃 ドイツの銃器メーカー、

 ヘッケラーアンドコッホ社が製造したPDWで、

 9mmパラべラム弾を使用する こちらの銃は、フルオート機能を搭載している

 また、命中精度も優れている

 最後に『彼』が触れてみたのは、AK-47 カラシニコフ アサルトライフル

 ソ連が開発した銃器 ロシアでは現在でも現役で使用されている こちらも、9×39ミリの銃弾を使用し、ボルト操作によって

 排莢・次発装填を行う なお、この銃は、使用する弾薬の種類により、いくつかの種類に分類される―――

 もっとも『彼』にはわからないだろうが

 だが、それぞれ銃器の値札のタグに表示されている『6円』という値段は、

 さすがに『彼』でも投売り過ぎる価格設定だと

 わかった

 まるで、銃器類が売れないとでも言いたいかのように


「(なんかズッシリしてるんだよな。 モデルガンって、こんなに重量なのか?)」

 この手の銃器が嫌いな訳ではなかったが、『彼』はあまりモデルガンも触った事もなかった

 そして銃器類が放つ威圧感に対して、何かが引っかかりどうしても

 購入する気にはなれなかった

 そもそも『彼』は、扱い方も分からない


 例え購入しようと思ったところで、身分証明書も持って来ていなければ、

 クレジットカードも自宅に置いてきている

 特に身分証明書が必要になるかもしれない

『彼』は他に何かあるのだろうかと見渡すと、視線の先に弾薬と爆薬らしき物を見つけた

 その弾薬や爆薬も商品として陳列されていた

 どうやら、弾薬と爆薬を販売しているらしい

 しかし、その弾薬や爆薬の値段を見て、思わず『彼』は眼を見開く

 その弾薬や爆薬の値段は、どれもこれも1円という信じがたい金額だったのだ

「(おかしいだろ、このコンビニ。何でこんなに安いんだ?)」

 そう思いながら、『彼』は頸を横に振った














 





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