第3話 別れ、そして…
「お世話になりました、リミナさん」
モトコは
翌日の昼下がり、颯太とともに船で日本へ行くことになったモトコを、店の入り口先でリミナは見送っていた。
旅費や船賃は、
リミナには少々の名残惜しさはあったが、かといってこれ以上モトコを引き留める理由もなかった。
「貴女と過ごした毎日は楽しかったわよ、モトコ……これランチよ。お2人で仲良く食べてね」
リミナは、サンドイッチが入った小さなバスケットをモトコに渡すと、同時に小さく薄い木箱のようなものも手渡した。
「これは?」
「貴女と私の、永遠の友情の証よ」
中を開けると、ひとふりの柳刃包丁が綺麗に納められていた。キッチンで使われていたものだ。
「よろしいのですか? 大切なものだと……」
「いいのよ。2本あるのだから、1本は私。そして1本はぜひモトコに持っていて欲しいのよ」
リミナは感慨深そうに言うと、2人の元を離れる。後部座席にモトコを乗せたバイクは、力強いエンジン音を轟かせ、幸ある未来へ続くであろう道を駆け出していった。
リミナは今日もカウンター越しに腰掛けて、ぼーっと外を眺めている。
磨き上げられた硝子越しには、夕焼けに紅く焼かれた西部特有の荒れた大地が映っている。いつもと変わらぬ、しかしリミナにとっては安堵感のある光景。
カラン……
「いらっしゃいー……!?」
雑貨屋の小さな扉が開かれ、ひとりの男性の姿を認めた瞬間、リミナはカウンターを飛び越えて、男性のもとへ駆け出していた――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます