第7話メール
僕は今までにない速度でスマホをし、メールを開き内容を確認すると
『今日は本当にごめんね。今大丈夫?』
という普通なら特に動揺するような必要のない内容だったが、それが白川先輩からのメールとなると、普通のメールでも僕の心臓を速くさせるのに十分なデンジャラスメールに早変わりだ。
とりあえず落ち着かないとマズイと思い、深呼吸を1回した。
(先輩を待たせるといけないし早く何返さないと)
そう思い1度冷静になると、スマホを操作して普通に先輩のメールを返すことにした。
『本当に大丈夫ですから、気にしないでください。今、夕食を食べ終わって暇ですから大丈夫ですよ』
書いたメールを確認してから問題ないと判断した僕はメールを送信した。
直後、先輩からのメールが来た。てかはやっ!僕がメールそうしてから5秒も経ってないんですけど
『そっか良かった。私も今お風呂から上がて、時間が出来たから、アドレスも交換したしせっかくだから青山君にメールでも送ってみようと思ったんだけど迷惑じゃなかった?』
しかも内容そこそこ長いし、先輩どんだけメール打つの速いんですか、凄すぎるよ。
『迷惑じゃないですから、安心して下さい。むしろ、先輩からメールをしてきてくれて、嬉しいです』
それにしても、風呂上がりの先輩かぁ、きっと水みを帯びた綺麗な黒髪に少し火照って赤くなってる白い肌状態なのだろうか?もしそうだとした、そんな艶めかしい姿の先輩を是非とも見てたい。そして記憶に焼きつけて直樹メモリーに永久保存したい。そして・・・・・
しばらくして、 暗黒時代の妄想力を発揮していた僕はあと少しで完全に現実から離れるといところで再びきた先輩のメールでなんとか現実に戻って来る事が出来た。
本当に危なかった、あと少し先輩のメールがくるのが遅かったら明日の朝まで現実に帰って来る事が出来なくなってたよ。いや、冗談抜きで。
それにしても、さっきの返信はあんなに速かったのに今回は少し遅かったなぁ、もしかしらもの凄く長いメールを打っていたのかも。
そう思いながらメールを開くと
『良かった』
「短っ!!」
予想外のことについ、声を出してツッコミを入れてしまった。
いや、それにしてもさっきとの落差が大きすぎるよ。とりあえず、さっきのメール返す速さは何処にいったのか気になるところだが、このままだと特に話題のもなく終わってしまうと思った僕は、適当に話題を作ることにした。
『先輩は今日はもう寝るんですか?それともまだやることあるんですか?』
無難にこんなもんだろうと1人納得していると、今度はすぐに返信がきた。
『寝るとするよ、明日は朝練が早く起きないといけないしね』
流石先輩だ。日常生活においても完璧過ぎる。
そんな先輩の完璧さを再確認してると
『それにしても今頃夕食なんて、今まで何をしていたんの?』
先輩から爆弾メールが届いた。
先輩、完璧なのは良いことだけど、そんなところをいちいち拾わなくてもいいですよ。
まぁ、そんな、先輩の完全無欠さへのちょっとした恨みはさて置き、馬鹿正直に答えたら失恋コースへの切符を切ることになるだろう。
そんなことになる事だけは避けたい為、ここは必要な嘘ということで適当な事でもでっち上げておこう。
『妹の勉強を見てました』
まぁ、実際は勉強を見るどころか、姿すら見る回数が少ないんだけどね。
妹の事を彼女への言い訳に使ったとバレたら、先輩にも、妹にも怒られるかも知れないけど、メールの内容さえ見られなければ問題はないだろう。
『そうなんだ、妹さんいたんだね』
先輩も疑ってる様子は無さそうだし、完璧だ。
『はい、二つ下の妹がいます』
『へぇ、勉強見てあげたりして、兄妹仲が良いんだね』
こ、心が痛い。すみません先輩、仲が良いどころか、むしろ険悪です。
『機会があったら、私にも紹介してね』
『はい、是非』
僕としてはそんな機会が一生来ない事を祈ってます。
『じゃあ、そろそろ寝ないといけないから寝るね』
『わかりました。ではまた明日学校で会いましょう』
『そうね、お休みなさい』
『はい、お休みです』
メールを送り終わると、スマホをベットの上に放り投げた。
今日はもう疲れたから、風呂に入ってもう寝よう。流石にもう何か気力が全く湧いてこない。
明日も何事もなく過ごせることを願おう。
朝起きた僕は、時間を確認しようと、スマホに手を伸ばしたところで違和感を感じた。
昨日僕は、充電機に繋いで自分の枕元の右側に置いた筈だ。
その為、僕はスマホを取ろうと、右に手を伸ばしのだが、不思議なことに手を伸ばし先にスマホが無かった。
僕は体を起こして、左右を見ると、枕元の左側の置いてあった。
「あれ?」
確かに右側に置いたと思っていたけれど、僕の勘違いだったんだろうか?
昨日は風呂に上がった辺りからだいぶ眠気に襲われてて、意識ははっきりしていなかったから確実にそうだとは言えない。
少し違和感が残るものの、寝ぼけていて場所を勘違いしたという事で、納得することにした。
そんなことがありながらもスマホを見ると、7時40分と何気に遅刻ギリギリの時間になっている事に気づいた僕は、すぐ洗面台に行き、顔を洗いて髪を整えると、再び自分の部屋に戻り、制服に素早く着替えて、家を出た。
朝飯は食えなかったが、仕方ないので昼まで我慢するとしよう、金も今は金欠だから、間食するものを買う余裕も無いし、早弁はしたくないので他に方法が無い。
「はぁ、果たして僕の腹は耐えられるのか?」
そんなことをボヤきながらも、何とか学校に着いた。
朝飯を抜いた甲斐もあり、ホームルーム5分前というギリギリながらも遅刻せずに済んだ。
「これで遅刻してたら、朝飯抜いたの僕の努力報われ無かったよ」
そう言いながら自分の席に座ろうとすると、
「よう、朝からリア充様はお疲れだな」
桐谷が声をかけてきた。汗をかいているようだが、大方朝練の後なのだろう。
朝からそんなに動けるなど、オタクの僕からしたら考えられない事だ。だから、正直に凄いと思う。
が、リア充オーラ垂れ流しのこいつにリア充様と呼ばれるのは皮肉にしか聞こえず腹が立つ。
しかし、僕はこいつと違い大人なのでそんなこと直接本人には言ったりせず、受け流すとしよう。
「おーい、屑丸出しの心の声がお前の目で丸分かりだぞ」
「お前こそ、朝から大変だな」
「無視かよ、まぁ良いけど、流石だな」
桐谷が何か言っているが僕には何も聞こえない。
「好きでやっているからな、苦でもなんでもないぜ」
「わーかっこいい」
「そんな棒読みの、貰っても嬉しくない褒め言葉はいらねーよ。それより、お前こそ朝からどうしたんだ。」
全く、 人がせっかく褒めてやったのになんて奴だ。
「どうもこうも、寝坊して、急いだ挙句、朝飯を食べてないから辛いんだよ」
「なんか買って来れば良いじゃん」
「残念ながら金欠で昼食代がない」
「早弁すれば?」
「それだと午後が持たない」
「なるほど・・・・詰んだな」
「ああ、お前が金を貸してくれるなら、解決しそうだけどな」
僕がそう言うと、桐谷は財布から少しばかりの小銭取り出しを見せてくれる。
「すまんが、俺も金欠でな、自分の分しかない」
「詰んだ」
完全に終わった。そう思い机にうつ伏せになると、マナーモード状態のスマホが鳴ったので、ポケットからスマホを取り出し、開くと先輩からメールが来ていた。
『今日も一緒にお昼食べない?青山君の分のお弁当も作ってきたんだけど』
「どうした?呆然として飯にありつける当てでもできたのか?」
僕がスマホを見て呆然としているように見えらしい桐谷がそんなこと聞いてきた。
僕はその問いに満面の笑みを浮かべ、
「ああ」
とだけ返した。
「マジか?!何で?」
驚きに満ちた顔をで聞いてくる桐谷に僕は、
「白川先輩が今日も手作り弁当を作ってくれたらしい」
後々しつこく聞かれても面倒だったので正直に答える事にした。
まぁ、自慢してやりたいという気持ちも3割ぐらいあったのも事実だ。
「なん、だと。二日連続で白川先輩の手作り弁当だと!」
桐谷がまるで世界の終わりを見るような顔をしていた。
そして一回顔を下に向けると、再び、僕の顔を見て、
「おまっー」
キーンコーンカーンコーン
桐谷が何か言おうとしたけど、チャイムの音でかき消された。
僕も先生が教室に入ってくる前に先輩にメールを返す事にした。
『勿論です。昨日、昼食を食べた、屋上で待っていて下さい』
そう打ち込み送信すると、スマホをポケットにしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます