第4話 日常?
「せ、先輩?」
今だに悪魔のような笑みで微笑み、話してくる先輩に僕は何も言えずにいた。
「青山くんから告白してくれたんだし、青山くんが裏切りなんて思ってないけど、万が一のことがあったら、私自身なにするか分からないから私を裏切らないでね。私を愛し続けてくれるよね?!」
先輩のこの質問に対して、間違った台詞を言ったら殺される!物理的にも精神的にも、そう思わせるほどの殺気を先輩から感じた。
しかし、僕の中では、この質問に対する答えは決まっていた。
「大丈夫ですよ!僕は先輩のことが好きだから告白したんです。だから先輩以外の人を好きになったりすることはありませんから安心してください」
僕がそういうと先輩は目を見開き、驚いた、はとが豆鉄砲を食らった顔とはこう言う顔なんだろうなそんなことを頭の片隅で思ってると、先輩は顔を俯せて頬を赤く染めていた。
「まさか、そんな直球にかえしてくるなんて」
何か小声で呟いていたがよく聞こえなかった。
しばらく先輩は下を俯いたまま顔を上げようとしなかったので、僕はとりあえず残りのお弁当を食べることにする。……それにしても本当にこのお弁当美味しく色とりどりだが、この一部の赤い色をした野菜はどんな野菜を使ってるんだろ?不思議でままならないが、何故かその野菜だけは体が食べることを拒否したので食べなかった。
「ご馳走、おいしいかったです。ありがとうございます、先輩」
食べ終わり、お弁当の蓋を閉じたタイミングで、先輩が顔を上げた。
「お粗末様でした。食べてくれてありがとうね」
そう言って、喜ぶ先輩の顔は、ラノベやアニメでよく見る乙女の顔そっくりだった。
完全無欠の先輩でもそんな乙女のような顔するんだなぁ、きっと誰も見たことない、白川先輩の素顔なんだろうな。
そう思うと、何故か謎の優越感が沸き上がってきた。
食べ終わり、お弁当を先輩に返した後はしばらく沈黙が続いた。
だって仕方がないじゃないか、面白い話なんて出来ないし、つい最近まで2次元の女の子しか愛して来なかったんだから、女の子に対してどんな話をしたらいいか全く分からないし、僕に出来る話なんて、アニメの良いところやラノベの感想など、2次元のことを語るぐらいだ。しかし、そんなことをいきなり語りだしたら引かれるのは目に見えてる。
ふと、先輩の方を見ると
「…………………………………………………」
どうやら、先輩も同じことを考えてるらしく、メチャクチャ複雑な顔をしていた。
そもそも、先輩がどんな趣味を持っているかも知らないし、普段どう過ごしてるかも知らない。
そうか、知らないなら聞けばいいんだ!話題作りにもなるし一石二鳥だ。そう決まれば、
「あ、あの、先輩は休みの日ってどんな感じで過ごしてますか?」
「え、あ、や、休みの日?そ、そうだなぁ、まぁ勉強したり、トレーニングとか、かな?」
休みの日の過ごし方を聞いただけなのに何故か先輩は歯切れの悪い口調で答えた。何? もしかして、何か変な地雷踏んじゃた?
まぁそれは置いとおこう、そうしよう! 僕は無理あり自分の中で折り合いをつけた。
それにしても、休みの日まで自分を高めてるなんて、先輩はどこまで完璧なんだ。
「青山くんは休みの日どうしてるの?」
先輩の完璧具合について考えていたら今度は先輩に質問させれてしまったが、どう返そうか、素直に、
「アニメ鑑賞と漫画がラノベの漁り読みしたりしてます!」
なんてことを言うのはさすがに気が引けるしなぁ、う~ん、本当にどう答えようか?
「青山くん?」
「あー、まぁテレビを見たり、読書したりですかね、ハハハ!」
完璧ではないだろうかこのオブラートな包み具合、これならなんも違和感ないはずだな!
それにしても、だいぶ会話も出来てきたし今度は趣味の話とかでもしてもっと会話を続かせるべきだよな、この話せてる流れてを切らせないように・・・よし! そう決めて再び先輩の方に顔を向けると
「へぇ、へー、テレビ、テレビかぁ、へぇ、テレビねぇ」
何故か僕の言ったことを繰り返し呟いていた。なに?! 僕まさか、変なこと言ってしまっのか?!
「せ、せんば」
キーンコーンカーンコン
不安になり先輩を呼ぼうとしたところで予鈴がなってしまい、言葉が途切れてしまった。
「先輩?」
「あっ、そろそろ戻らないとね!お弁当食べてくれてありがとう!じゃ、また放課後に!」
そういうと僕の言葉を聞かずに先輩は駆け足で校舎に戻っていた。
それにしてもなんだったんだ?最後僕の話を聞いたときの先輩は?
白川先輩との昼食タイムが終わると教室の戻ることにしたのだが、さっきの予鈴が鳴ってから授業が始まるまで十分の間がある。
つまり・・・
「よぉ!白川先輩との昼食はどうだったよ」
こんな風教室に入った直後に、桐谷に絡まれる。
「食べさせあいとかしたのか?それとも手作り弁当でも作ってもらったのか?」
「手作り弁当を作ってもらったよ」
嘘を言って誤魔化すのも面倒だったので、正直に言うことにした。
「白川先輩の弁当かぁ、羨ましい限りだな」
全くだ、僕自身いまだに、あの白川先輩と付き合っている上に手作り弁当を作ってもらうなど現実離れしすぎていて信じられない。
正直、幸せ過ぎて吐きそうだ。
とはいえ、懸念していることもある。
「そういえば、お前・・・
桐谷が何か言おうとしたところで教師が教師が入ってきたので自分の席に戻ることにした。
まぁ、桐谷が何を言おうとしたのかはだいたい予想がついたので続きは聞かなくても問題はなかった。
七限目が終わり、そのままホームルームが終わるとさっさと荷物を片付けて帰ることにした。
どうせ白川先輩は部活で帰りが遅くなるだろうしな。
部活が終わるまで待つという手も無くは無いが、そんなずっと待ってて気持ち悪がれるのこともありえる可能性がある。
なので、傷つく前に帰り、録りだめしているアニメを消化することにした。
「あの!」
帰ろうと、扉に手をかけたところで後ろから声をかけられたので、そっちの方に振り向くと。
顔を下に向けている黒咲さんがいた。
「黒咲さん、どうしたの?」
「あの、その」
「?」
黒咲さんは何か言いたそうなのは分かるが、顔を下に向けたままだから表情も見えず、何を言いたいのか全く分からない。
「青木君!」
「はい?」
「今週の日曜日って空いてますか?」
「???」
何故そんなことを聞くのだろうか?
そんな疑問をを心の中で思いつつも
「うん、いつも通り家でごろごろしてるつもりだけど?」
正直に自分の予定を伝えた。
ついでに、彼女がいながらも、休日に予定がない自分の惨めさを実感した。
いや、本当に何やってるんでしょうね俺は・・・・
そんな、自分の愚かさと惨めさを思いつつ顔を上げると
「ほ、本当ですか?!」
「あ、ああ。本当だよ」
いつも緊張してるか、不安そうな顔をしている黒咲さんがこの時だけ満面の笑みに満ちていた。
そして、そんな満面の笑みのまま僕に聞き返してくる黒咲さんに圧倒されてしまった。てか、満面の笑み過ぎて、二次オタの僕からしたら眩しいんですけど。
「よかったぁ!」
うわぁ!眩し!!
僕の返答を聞いた黒咲さんの笑みが更に増した。本当にやばいよ、黒咲さん、腐女子が自分の好物を見つけた時と同じくらいの笑みだよ。
「えっと、用件はそれだけ?」
「えっ!あ、はい」
僕が声をかけると、黒咲さんは冷静になったのか再び顔を下に向けた。今度は下を向いてても、黒咲さんの顔がザクロみたいに赤くなっているのが分かった。
「じゃあ、僕は帰るね」
「はい!時間を取らせてしまいすみません!」
「いやいや、別にこれくらい大丈夫だよ」
「やっぱり優しいですね」
「ん?」
「なんでもありません。では、明日」
「うん、また明日」
結局なんだったのか分からないが黒咲さんが納得したなら良しとしよう。
それよりも早く録りだめのアニメを見るために帰らなくては。
下駄箱で靴に履きかえて玄関を出たとき、自分の目に映った光景を疑った。玄関口から少し歩いた先にある校門のところにいるはずの無い人物が立っていたかである。
僕は無視するわけにもいかないので、とりあえずその人物の所にむかった。
そして、その人物も僕が近づいてきたのに気づき、こっちにむかって柔らかな笑み向けてきた。
僕はその人物の前に着くと、思ったことを素直に言葉にした。
「何でここにいるんですか、白川先輩?!」
ここにいるはずのない白川先輩は、僕の質問に対して何も言わず笑みを浮かべるだけだった。
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