第2話 告白

 と思ったののどうすればいいのかいきなり手詰まりになってしました。

 だって中学時代は暗黒時代だし、今まで彼女どころか3次元の女に恋したことなど無いんだから仕方ないだろ。

 そうだろ。分かるだろ? 全国の非リア充オタクの同士たちよ!

 まぁ、このことからわかる通り、オタク活動だけに熱を注いできた僕が告白のやり方を知ってるはずが無い。

 本当にどうしたものか。そんなことを考えて、授業を受けてるうちにいつの間にか放課後になっていた。

 とりあえずやれることがないので…いや、正確に言うなら出来ることがまだ分からないので今日帰ることにした。ちなみに部活には入っていない。

 そんな訳で帰ろうとすると隣の桐谷が声をかけてきた。


「おっ! 帰るのか?」

「ああ、お前は部活か?」

「もちろん、今から行くところだよ」


  一瞬、あれ? こいつって何部だっけと思ったがすぐに思い出した。


 「お前もバスケ部頑張れよ!」

 「そうするつもりだけど、お前大丈夫か?」


 桐谷が心配そうに俺を見てきた。


「何がだ?」

「いや、いつもなら休み時間になるごとにラノベを読んでるお前が、今日はラノベも読まずに何か悩んでたからな」

「なるほど」


 どうやら周りから見ても分かりやすいほどの悩んでたらしい。


「いったい、何に悩んでいる……なるほどそういうことか」


 桐谷が何かを察したみたいだ。


「生きて帰ってこれるように頑張れよ」


 どうやら朝の会話から僕が何に悩んでいるのか気づいたらしい。

 その証拠に桐谷の顔が腹立つくらいにニヤニヤしてる。


「そうするよ」


  否定するのもめんどくさかったから否定せず軽く頷いた。


「じゃあ、僕この辺で帰るわ」

「おう! じゃあな!」


 これ以外絡まれるのもだるいので僕は早々に帰ることにした。そして桐谷は僕が教室を出るギリギリまで腹立つニヤニヤした顔してた。殴りてぇ。


 教室を出た僕はこれからどうするかとりあえず歩きながら考えた。どういう告白すればOKしてもらえるのか等をひたすら考えてると、


「キャ!」


 女子の短い声が聞こえた。


「あっ、すみません!」


 考え事をしてたせいで注意力か散漫になり女子とぶつかってしまったみたいだ。

 ぶつかってしまった女子の方に目を向けると地面にいくつかのノートが落ちていた。先生から頼まれたのか職員室にノートを運んでたあたりだろう。

 とりあえず僕は落ちてしまったノートを拾い集める。


「あっ、ありがとうございます」


 女性は申し訳無さそうにお礼を言ってくる。


「そんな、ぶつかっての僕の方ですし、こちらこそすみません」


 謝りながら女性の方に顔を見ると、美しい女性がいた。童顔ながらも伸長は普通の女子よりかは少し高めで、ハーフなのか、髪の色は銀髪だった。そして一際目が行くのが豊満な胸だ。男子たちの夢を実現させたような胸をしていた。

 そこまで考えた僕は、ふっと、どっかで見た人だなぁと思い、思い出そうととするが中々思い出せない。確実にどっかで見たんだけどなぁ。 


 「えっと……黒咲 姫路くろさき ひめじです。一応青山君のクラス委員長なんだけど」


 どうやら僕の様子を見た黒咲さんが自己紹介してくれた。なんだか、申し訳ない。

 にしてもクラス委員長かぁ、クラスの事とか興味なかったから、あまり知らなかったとはいえ、クラス委員長を忘れていたなんて本当に申し訳ない。


 「その、本当にごめん思い出せ無くて、えっと青山 直樹です」


 とりあえず何を言ったら良いのかわからなかったので僕も自己紹介することにした。


 「うん、知ってるよ。青山君いつも本読んでて周りから浮いてるから、クラスじゃあちょっとした有名人だよ」


 どうやら僕はいつの間にかクラスの有名人となってたみたいだ。


 「へぇ、そうなんだ。あっ! このノート職員室に運ぶね!」

 「いや、そんな、悪いよ!」


 僕がノートを運ぼうとすると黒咲さんは申し訳なさそうな声で言ってくる。


 「ぶつかった僕が悪いんだし、それに女の子がこの量のノートを運んでるのを見過ごす訳にも行かないしね」

 「…ありがとう」


 僕がそんなことを言うと何故か黒咲さん頬を赤く染めて、お礼を言ってきた。

 何故だろう、ちゃんと話すのは初めてのはずなのに、どこかで話したことがあるようなきがしたが、それも思い出せなかった。

 しかし同じクラスなのだから、こちらが覚えてなくてもどこで話したのかもしれないと割り切ろう。

 そうだ! 折角女子と話す機会を得たのだから、黒咲さんにどういう告白したら良いか聞いてみよう。

 僕はノートを運びながら、横を歩く黒咲さんの顔を見ながら言う。

 

 「黒咲さん、1つ聴いて良いかな?」

 「良いですよ、なんですか?」

 「女の子ってどんな告白されたら嬉しいの?」

 「ふぇ! こ、告白、ですか?」


 黒咲さんはそんなことを聞かれるとは思わなかったといった顔をした。と思ったら 今度は顔を真っ赤にしながら俯いてる。

 やはりこの話題は女の子には恥ずかしい話題なのかな?


 「わ、私は」


 そんなことを考えると俯きながも黒咲さんが答えてくれた。


 「普通の人の分からないけど、私、なら、真っ正面から告白されたら嬉しい、です」


 黒咲さんが震えた声で言った言葉に、僕は目を見開いた。

 そうか、別に色々計画する必要なんてないんだ。

 真っ正面から自分の気持ちを伝えれば良いんだ。

 僕は自分の考えを根底からひっくり返される感覚に襲われた。


 「黒咲さんありがとう! 助かったよ」

 「いいえ。そんな、私なんかの答えで役に立ったなら良かったです! また何かあったら相談して下さいね」

「そうさせてもらうよ」


 僕は職員室に着くと黒咲さんもう一度お礼を言い別れる。

 そして僕は黒咲さんの答えを聞いて昂った自分の気持ちを伝えるために走り出した。


 僕は走った、とにかく走った、早くあの人にこの気持ちを伝えるためこの昂った気持ちをぶつけるため、今持てる力を全てをつかって走った。

 もし今50メートル走をしたなら、確実に自己ベストを出せる自信がある。

 先ほど委員長に“どういう告白が女子には嬉しいか”と聞いたところ“真っ正面から告白されると嬉しい”と言われた。

 そして僕はその言葉を聴いた時から気持ちが昂ってる。そしてあの人にこの気持ちを早く伝えたいと心が急かし、心臓が急いであの人の所に行くためと、ものすごい勢いでポンプしている。

 そうして、全速力で走ってると通りかかる先生に、


「廊下を走るな!」


 と言われるがそんな声をお構い無しと全速で走ることを止めない。


 しばらく無我夢中に走ってると白川先輩が所属している空手部の練習場に着いた。

 そして、そこには今練習場を入るところなのだろうか、白川先輩が練習場の方にむかって来てる。胴着姿の白川先輩は凛々しく何より美しい。そんな白川先輩を見た僕の心は更に昂って。


「あの! 白川先輩!」


 いつの間にか、ちょっと恥ずかしいくらいな大声で白川先輩を呼び止めていた。


「ん?……君は?」

「1年、青山 直樹です。今、少しお時間を頂けないでしょうか?」


 僕の呼び止めに先輩は驚きながらも、こちらを振りむき、何故か僕の顔を見た瞬間更に驚いてる(ように)見えた。

 しかし僕はそんな小さなことを気にしていられる程の冷静さは残ってなかった。

 その証明に先輩からの問いに対してなんとか答えたものの、だいぶ早口になってしまった。


「ええ、少しなら大丈夫ですが。何の用ですか?」

「ありがとうございます」


 僕は一言お礼を言うとどんどん動悸が速くなる心臓を落ち着けるため、1回深呼吸すると覚悟を決め、この昂った気持ちを伝えれる。


「白川先輩に一目惚れしました! よかったら僕と付き合ってください!」


 なんとか噛まずに言えた台詞に先輩は一瞬目を見開いたが、すぐに、


「私は、こんな真っ正面から告白されたことあまりないので嬉しいです。こんな私で良ければよろしくお願いします」


 僕の告白なんか断っ………ん?

 今、先輩は何と言った?


 「あの、白川先輩? 今何て言いました?」


 ついそんなことを聞いてしまった僕に対して先輩は1回目の恥ずかしそうな赤面した顔ではなくて、まるで天使のような笑顔で再び


「こんな私で良ければよろしくお願いします。直樹くん♪」


 そう言った先輩の言葉でようやく状況を整理できた僕は、信じられないものを見るような目で先輩を見た。

 告白しといてなんだか、振られると思ってた。知らない男子がいきなり告白して成功するとはあまり僕自身思ってなかった。

 先輩の口調が変わっているような気もしたが、そんなことはどうでも良く思えた。

 僕はその場で十秒程度フリーズしてしまったが、何か言わないとまずいと思い。


「ありがとうございます!」


 と一言お礼を言った


「いえ、こちらこそ告白してくれて嬉しかったわ。だから、絶対に浮気とかしては駄目よ」


 そう言った先輩の言葉自体は珍しくはないだろうが、何故か後半の言葉に悪寒が走った気がしたが、すぐに気のせいだろと切り捨てる。


「じゃあ私は部活に行くわね、また明日ね直樹くん」


 そういえば此処は練習場の入り口前だったことを思い出し練習場の扉の所を見ると、男子部員の死の呪いでかけられそうな視線がいくつもあった。

 此処に留まってたら確実に自分の命が無いことを悟った。


「はい!白川先輩、ではまた明日 !」


 そう言うと先輩は軽く笑顔を向けて練習場の方に歩いていった。

 

 その日の僕は嬉しさのあまりどう帰ったのか覚えてなかった。ただ、帰り道に「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!」と叫んだことだけは鮮明に覚えていた。


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