第6話

「こねーな」


「ね、遅いなー。大丈夫かな愁...」


 真剣に心配する顔を見るところ、余程あいつが好きらしい。アレのどこがいいのか教えて欲しいくらいだな。愛輝、お前の名前は出なかったよ。

 そう思っていると、ケータイに通知がきた。ケータイに目線を落としながら、隣で階段に座り込みながら、両手で顔を支える可愛らしいけど、字面が全く可愛くない格好をした唯に尋ねた。


「いつ?」


 唐突な質問に唯は何のことだかさっぱり分かっていない。困惑で頭の上に?が浮かんでる。


「いつ、告白すんの?」


 親友はしばらく固まった後に顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。その姿はいつもなら可愛いと思えたんだろう。でも、そんな気分じゃない。意識していないけど顔は強ばっていた。


「ええ!いや!その...」


 初めて聞いた時は大反対したが、それでも聞かなかった。好きになったものは仕方ないのだろう。異論はもうない。きっとそれは彼もそうだ。と言うか、彼が認めているのに私が認めないのは違う気がする。


「冗談だよ」


 自称150cmの女子はスカートのホコリを叩き、立ち上がった。


「ちょっと、様子みてくるな」


「あ、私も行く!」


 急いで立ち上がろうとする唯を楓は止めた。


「いいよ。購買ついでだから」


「すぐ戻る。」


 嘘だ。購買なんて行くつもりもないし、様子みてくる気もない。いや、それには語弊があるな。1人を見に行くから、2人を見に行くわけではないわけで、まあよく分からない。でも、そんなことはどうだっていいや。


「じゃ、待っててな」


 止めたのに行く準備をしていた唯を置いていく。


「あ、楓ー!もう!」


 ため息をついた。仕方ないので待つことにしたようだった。唯はそれでいい。幸せに生きていい。

 でもそれはきっと、森の木みたいに何かの死体が大元の栄養が必要で、その死体の上に君達の幸せがあるんだ。そう叫びたい。

 でもそれは彼が望むことじゃない。



 階段を降りている途中、全力で階段を駆け上がる、顔が真っ赤な馬鹿とすれ違った。

 すれ違う直前止まった、向こうもそれに気づき、止まる。そして一声、「頼んだ」それだけ言い残し、楓は階段をまた降り始めた。

 その馬鹿は初めて見せたような気がする、真面目な顔で、「頼まれた」それだけ言って、去っていった。


 その後一番上の私たちの昼食場、屋上への階段の方から話し声、その後に泣き声、歓喜の声が聞こえてきた。


 全てはあいつの予想通りだった。

 それは嬉しくて。

 全く面白くなかった。






 通知:愛輝


 校庭のベンチにお前さんだけで来てね。今から馬鹿と可愛い妹分が青春するから。





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