第2話
幼馴染みなのだから当たり前と言えば当たり前だが、愛輝と唯は親同士仲がいいのもあり、小さい頃から一緒に育った。
小さい頃から唯はぽやっとした性格だった。そのためか、愛輝はいつもそれを見守り、フォローする役回りだった。
愛輝は幼心に唯のことを「家族同然」に思っていた。
唯も愛輝のことを兄のように慕っていた。
そして、愛輝は本当の家族を1人失った。
父は事故で亡くなった。
父の葬式には多くの人が参列し、多くの人が速すぎる死を悲しんでくれた。
愛輝は悲しさに押し潰されそうになり、数日は夜通し泣いて過ごした。
そんな時も側に居てくれたのは唯だった。
慰めるわけでもなく、愚痴を聞いてくれた訳でもなかった。
でもただそれだけで、側にいてくれるだけで、1人じゃないと教えてくれた。救われた。
その後仕事人の母が相談を持ちかけた。
母が帰るまで家には誰もいない。だから祖父母の家には引っ越すのはどうかと。
愛輝はそれを断った。祖父母が嫌いな訳ではない。「家族同然」の彼女と離れることが嫌だったからだ。
むしろ、そんなことを何故言うのか。また自分から「家族」を奪うのかと、「家族」に思うほどだった。
それくらい、彼にとって唯は大切だった。
小学生の時、こんなことがあった。
よくある事だ。クラスの男子が2人のことを
「おまえら、夫婦かよ!!」
「夫婦なんだからちゅーしろちゅー!」
と、そんな事を言われた。ただ、冷やかしたいだけだと、分かっている。愛輝は冗談と分かっていても、夫婦がどのようなものか漠然としか分かっていなくても嬉しさは隠せなかった。
それでも、愛輝はうるせーよと仲のいい男子を小突いたが、唯の反応は違った。言い出しっぺの男子にテコテコ近づいて行って、
「夫婦に見えるー?私は愛ちゃんが旦那さんだったら嬉しいなー。」
なんてえへへと笑いながら言うのだった。
小突いた形で固まった愛輝はこの笑顔の守りたいと思った。
それが愛輝の、愛に生きる男の一生の道標となった。
余談だが、この後愛輝が唯の頭を全力で撫でていたのは、愛輝と唯しか知らない。
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