○ぼのぼの(いがらしみきお)

 いきなり大御所である。現在アニメ放映中。是非チェックを。

 色々と悩んだが、この漫画は私の人格形成に置いて重要な意味合いを持つ。はっきり言おう。この漫画は『哲学書』だ。詳しくは後述。

 主人公はラッコの子ども、ぼのぼの。ぼんやりしていて、考え事ばかりしている子だ。運動も苦手で、どうでも良い事に悩んだり、すぐ泣いてしまう。

 友達であるシマリス君、いじめっ子のアライグマ君をはじめ、魅力的なキャラクターがたくさん居て、その日常が描かれる作品だ。

 一見ほのぼの動物漫画、かと思いきや、シュールな毒を多分に含む。特に1~3巻の頃など、作者の前作「ネ暗トピア」のシュールギャグの影響を残している。

 4巻を過ぎてから、子どもの冒険譚やぼのぼのの妄想による悩みが展開され、最近では「老い」をメインに家族関係の変化や自分自身の変化などに注目して展開されている。

 とはいえ、重くない。ギャグが織り交ぜられており、笑いながら考える。そして最後にはすとんと納得いく。

 

 キャラクターの悩みが全部納得がいく。「あるある!」と頷きながら読み進み、そしてある種の答えがポンと示される。押しつけられないその答えは、すんなりと心に入ってきて、「そうか、そう考えればいいのかぁ」と思える。

 中身にちょっと触るが、一例を挙げてみる。

 前妻の子が、親父と会う話。今の子であるキャラがその子(異母兄)と微妙な距離感で遊ぶ話だ。(ほのぼの動物漫画にあるまじき設定だな……)

 終始シュールなギャグが展開され、すごく笑える。

そして最後に「親父に怒っていないか?」と聞くと、「怒っていた」という。

「今は?」と聞くと、「全然」という。

「何で?」と聞くと、「怒るとキリがない。許して忘れるんだ」という。

 すごく泣けた。そしてこう思える人間になりたいなぁと思えた。


 何というのだろう、心の指針が示されているのだ。心の指針とは、即ち哲学である。

 哲学というのは、言い換えれば「どう生きたらいいのか」という事を言葉にしたものだ。私はこれをこの作品からたくさん学んだ。


 連載開始から30周年。巻数は40に近いが、基本的にギャグマンガなので読みやすく、とっつきやすい。10巻過ぎてからは、基本的に1冊に3エピソードほどのペースで掲載されており、より読みやすくなる。是非一読を。


 因みに私はフェネックギツネ君が好きだ。フェネックギツネ君の親父も好きだ。いや、グズリ親子も、いやアライグマの親父も、アナグマ君も……あぁ、いや全員好きだわ。

 ビビジランテ・ソンテネグロ・ホメストーニ・カルマンドーレ・ポポス君の名前は子どもの頃に覚えて以来まだ覚えている。

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