31と32

「今日って何日でしたっけ?」

「ん?3月の~26日だな」

「……」

「どした?」

「いつも思うんですよ」

「おう」

「31って数字、32に比べて恵まれすぎてると思いません?」

「……は?」

「だって、31っていっぱい出て来るじゃないですか。例えば日付、『31日』なんて年に七回も登場するんですよ」

「そりゃまあそうだが」

「それなのに! ほら、『32日』って口にしてみて下さい!」

「さ、32日……ちょっと語感が悪くて気持ち悪いな……」

「でしょ?! 32は悪くないのに! たった1違うだけで!」

「大げさだなぁ」

「これだけじゃないんです! 短歌の文字数って知ってますか?」

「五・七・五・七・七だな」

「全部足すと?」

「ん~と……31だな」

「でしょ!? 昔っから『三十一文字(みそひともじ)』なんて言われて綺麗に扱われてるんですよ!」

「32だと字余りになるなぁ」

「たった1違うだけなのに!」

「確かに、ちょっと不公平に思えてきたなぁ」

「それに31は素数なんですよ! 素数! あの神父様に数えてもらえるじゃないですか!」

「あの神父は素数数えるの好きだからなぁ。でも待てよ。32は2の5乗でキリのいい数字だし、出番があるだろ?」

「……日常生活で『2の5乗』なんて何回口にするんですか? 2進法ラヴァーですか? コンピューターですか?」

「えぇい、冷たい目で見るな。ほら、方位とか?」

「……普通東西南北の四方向か、八方向か、十六方向が精々だと思いますよ。32もあったらびっしりになっちゃって気持ち悪いじゃないですか……」

「う、確かに」

「とにかく、31は恵まれすぎ! 32は不憫すぎ! せめて直木先生が三十二で止めて置いてくれればまだ活躍の機会があったのに……!」

「三十五で止めたからなぁ」

「おまけに31はアイス……」

「おい、それは止めろ」

「いいえ、止めません! 何故なら私がこの話題振ったのは、アイス食べましょって誘いたかったからなんですから!」

「下らない理由だな、おい」

「と言う訳で行きましょうよぅ」

「あ~、はいはい。この仕事が終わったらな」

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