鼻を笑う
タイトルは『鼻を笑う』。バラエティーの棚にあった新作DVD。
「鼻で」笑うのでもなく「鼻よ」笑えでもない。
早速借りて見てみると出演者には鼻がなかった。男も女も皆同じ。顔の真ん中は平面で、水滴型の黒い穴が二つ開いているだけ。
司会者は小さな嘘をついて出演者の鼻先だけを笑わそうとする。懸命の努力にもかかわらず、幻の鼻先はクスリともしない。嫌な空気が流れる。
空気を変えようと出演者の一人が立ちあがり、風船をとりだすと、鼻の穴で不器用に吹きはじめた。風船はなんとかふくらみ、手をはなすと奇妙な破裂音をたてながら萎んだ。それから彼らはむきだしの鼻孔にフックをかけてピンと張った金属線の上で独楽を廻したり、金属線をたわめて羽根をついたりした。
どこで笑おうか。
とりあえず洟をかんでみる。
あっ、と思ったがまだ鼻はある。よかった。
なかったら断固店に抗議しているところだ。
抗議したところで木で鼻をくくった対応をされるのが落ちだったろう。
そんなDVDは元からない。貸出記録にも残っていないのだ。
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