眠れ良い子よ



『当番組のコンセプトは完全な双方向性です。話題沸騰。空前絶後。子守番組の決定版です。飽きさせない。逃がさない。決して自由にはさせません。二十四時間対応です。ご両親の目の届かない所まで、視聴者それぞれのニーズにお応えして、当番組がお子様をお預かりいたします。心置きなくパーティーにお出かけください。お買い物、お仕事はもちろんパチンコ、カラオケ、ラブホテルにお出かけの際もご利用いただけます。ご安心ください。』


  みんな集まれ。

     「アメリカザリガニの埋葬」

   はじまるよ!


 夫婦は番組に子どもを預けて外出した。

 子守は順調に進んだ。つけっ放しのテレビの音が窓の外まで聞こえていた。

「ハロ-、タロー」

 ついでに英語も教えてくれる?

「グッナイ」

 太郎を眠らせ、太郎の上にふとんをかけて、電気を消した。

「ジロー、プリーズ」

 次郎を起こし、トイレにいかせる。

(ここでちょっと悪戯。洗面所の脇で飼われているアメリカザリガニを茹でて食べてしまおう。ということで登場人物の一人、くまのぬいぐるみがペロリと一口で平らげる。

 ブラーヴォ!)

 午前二時。

 夜の木々は闇に沈み、小鳥のようにけたたましく囀っている。手話で。

 番組は放映中。

「ハナコ、オキロヨ。ハナコ、オフロダ」

 花子をフロに入れ、服を着せてやるまえに、いちばん高く入札した客に売る。

 視聴者といっしょに乱交パーティー。

「いめーじダケヨ」安全な供宴。

 両親が帰る頃は朝になっていた。番組はもう終わっていて、画面には日の丸がはためいている。


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