進化論



 帆を張れ、ともづなを解け。空で尻を振るかもめ、ヨーソロー!

 右手には大海原、左手に草原を望む密林から、高くとびだした樹木の天辺に坐って、猿は思った。思ったことを言葉にした。

 思想は猿の天敵である。

 猿が木から落ちる。人間になってしまった猿は、サバンナに侵出する間もなくヒトトリソウに喰われてしまう。

 何度それがくりかえされたことだろう。ヒトトリソウの葛藤かっとうを断ち切り密林から逃れでたのは、木から落ちただけの猿だった。人ではない。

 人は檻の中にいる。

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