泥棒市場



 山猫はうんざりしてしまいました。

 国会議員一号行きます!

 役人十三号行きます!

 公団理事二十四号行きます!

 特殊法人役員七十三号行きます!

 町内会長三百十八号行きます!

 ……………

 かれらが披露するものといったらどれもこれも貧乏な人たちから盗んだ、破れた寝具や、こっそりためたお小遣い、あとで食べようと隠しておいたおまんじゅう、さらには無理やりひっぱりだした跡が残る入れ歯や義眼、車椅子のクッションなど、あとあと、どぶに捨てるようなものばかりだったのです。

 山猫は長嘆息して言いました。

 きみたち、こんな腕ではとても一流の泥棒としては売りこめないよ。かんたんに盗めるところからしきゃ盗んでいないじゃありませんか。これでは追いはぎと変わりないです。インドの王様から象を盗んだオツベルのような人材が、以前はあったもにょでしたが。あなたがたも盗品もとても市場に出せやしない。この時節、あたしが料理店を閉めねばならないというのも、仕方のないことかもしれないねえ。

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