第16話 特攻

 後ろについているヒッチコック2体が、一斉に巨大な卵を飛ばしてくる。

 その巨大な卵が乗っているヒッチコックに当たるたびに、身体がもっていかれるくらいに、大きく揺れる。


「近接攻撃以外ってどういうことだ!?」

「このヒッチコックを燃やして、ぶつける!」

「何!?」

「こいつを全部燃やしてしまえば、充分な火力になるだろッ! それをでかいやつにぶつけるんだッ!」

「ちょっと待て師匠ッ!そんなことをしたら私たちはもう地上に戻れないッ!地上に真っ逆さまだッ!」

「大丈夫ッ!俺がお前ら二人を抱えて落ちるッ!」

「バカ言うんじゃないッ!この高さだッ!いくら師匠でも間違いなく死ぬぞッ!」

「ファッファッファッ、なるほどな!分かったッ!アーサーッ、お前に任せようッ!」

「クロエちゃん、でも師匠がッ!」

「大丈夫じゃ、こいつはできている。時間が無い、もう一発くるぞッ!」

 

 後ろから2本の、そして前から1本、首がこちらに飛んでくる。

 こちらのヒッチコックは、何度も身体を傾け、高度を変えながら、その首を避けている…が。


動物調教テイムがそろそろ切れるわいッ! 次にヒッチコックを水平に戻したら、火をつけるんじゃッ!一気に突っ込むッ!」

「合点承知ッ!」


 空中で首が波打つ。

 何度も。

 何度も。

 そして一瞬。

 首が巻き戻った。 


「今じゃッ!態勢を戻すッ!火をつけろッ!」

「おっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!」


 両手を握り、たいまつを錬成する。

 後ろに向かって、そのたいまつを投げつける。

 しっぽが赤く、燃え上がった。


「火が点いたッ!クロエッ俺にしがみつけ!」

「分かったわいッ!」

「レイナも来いッ!」

「ええぇぇぇッ!?そんな急にッ!?抱きつくのッ!?」

「大丈夫だッ!俺を信じろッ!」

「そういわれてもッ!」

「ええーいじれったいッ!」


 俺はレイナを腰から抱え上げ、お姫様抱っこした。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁッ♥!?」


 準備完了ッ!


「クロエッ飛ばせッ!」

「分かっとるわいッ!」


 ヒッチコックが大きく羽ばたく。

 もう一度。

 さらにもう一度。

 風が強まり、火が一瞬で身体全体に行き渡った。 


「ギィェェェェェェェッッ!」


 熱さでヒッチコックが悲鳴を上げている。

 もうそろそろ限界だ!


「やつをとらえたわいッ!」

「行くぞ~~~~~~~~ッッッッッ!」

「し、ししょう、や、め」

「どりゃぁぁぁぁぁぁぁッッッ!」

 

 クロエとレイナを抱きかかえ、俺はヒッチコックから飛び出した。

 空気が頬を切り、風の音が耳をふさぐ。


「見ろッ!でかいやつに当たったわいッ!」


 瞼が開かない。

 が、かすかに、遠くに、燃えあがるヒッチコック2体が見える。

 

「し、ししょう、お、おちッ!」

「大丈夫だレイナッ!」

「なにが!?」


 俺は魔界村に

 空のかなたから

 そして、地面に当たる直前に、回転して、

 俺の能力は2段ジャンプだ。

 しかし、それだけじゃない。

 俺の本当の能力は…。


「俺はッ!」

「ファッファッファッ!」

「嘘でしょッ!?」

「どんな高さでも、俺は地面に着地する!足から!」


 そうッ!

 ガンダーラが落ちるがごとくッ!


 地面が段々近づいてくる。

 草原に捨てられた、棺が見える。


「あ、あた、あたりゅ」

「つかまっとけよッッッ!」


 そして、俺と、クロエと、レイナは、地上に降り立った。

 驚くほど、簡単に。

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