第4話 得意技
空は、深い青色で、昼なのか夜なのかもわからない。
雲は炭のように黒く、その中を、絶え間なく稲光が走る。
次から次へと生えてくる棺を避け、こちらを睨み付けてくる巨大な犬(なのか狼なのか)を振り切り、俺は走り続けた。
「アーサー、この先に森がある。それを抜ければ、町がある。そこまで走れ」
前世の俺は、身長168cm、体重120kgのぽっちゃり体型だったけれど、今は驚くほど身体が軽い。
息は切れるし、多少足が痛いが、まだ走れる。
本当に生まれ変わったんだな。
でも、生まれ変わった先がこんな薄暗いバケモノだらけの世界なんて…。
この世界にも…アニメとかあるのかな…。
草むらに生えていた木が、だんだんと密集し始めた。
木の葉で陽の光りが覆われて、あたりは薄暗い。
「ギョェェェェッッッ!」
「ギィェェェェッッッ!」
「ギゥェェェェッッッ!」
…鳥…かな…この鳴き声は…知らんけど…。
木の一本一本の幹は、太い、なんてもんじゃない。
貯水塔や灯台といった建物みたいだ。
その太い幹から生え出た枝が絡み合って、木の皮の隙間がないほど、つるが巻き付いている。
そして、枝の間を飛ぶトンボみたいな巨大な虫。
虫…かな…俺よりでかいけど…。
しばらく、剥き出しの木の根をよけながら走り続けると、切り立った岩の壁にぶち当たった。
建物三階分くらいの高さで、90度よりも少し手前に傾斜している。
「街はその先じゃ。アーサー、ボルダリングは得意か?」
「得意じゃねえよ」
女子高生がやっているのをアニメで見たことはある。
「登らなくても、このくらいの高さだったら、イケるじゃろ。ほい、飛べ。ジャンプしろ」
「この高さは無理だって…。迂回するか、つるをどこかに引っ掛けて登るしか…」
「お前の得意技はジャンプだ。そういう風に設定したからな。一度飛んでみぃ」
ゲームのパラメーターみたいなこと言ってんな。
でも…手から松明も出せたんだし、とにかく、試してみるか。
前世では、体重が重すぎたから、ジャンプなんてできなかったけど。
膝をまげて、こうやって一気に伸ばせば…。
ッッッ!
浮いたッッッ!
地面遠ッッッ!
「もう一回踏み込んで、足を伸ばせ!もう一段いける!」
もう一段って何ッッッ!?
踏み込んで伸ばすッッッ!?
ッッッ!
また浮いたッッッ!
怖ッッッ!
「手伸ばせ! 手!」
あッッッ!
これッッッ!
つかッッッまッッッたッッッ!
あぶねぇぇぇッッ!
「二段ジャンプじゃ!」
「へ」
「お前の必殺技、二段ジャンプじゃ!」
「…なんで、そんな、ニッチな…」
「魔界村じゃからな」
いや、まあ、そうだけども…。
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