第18話 ある日の会話(お豆腐屋さん)


===

2016年6月


ある年の昼下がり。

町に豆腐屋さんのラッパの音が鳴り響く。


・・・ぱ〜〜〜〜〜・・・


      ・・・ぱ〜〜〜〜〜・・・


私:「ねぇねぇ、なんであのお豆腐屋さんっていつも中途半端に音鳴らしてんだろうね」

父:「え?ああ、言われてみれば本当だね」

私:「普通はぱ〜〜〜〜ぷ〜〜〜〜だよね。『と〜〜〜〜ふ〜〜〜〜』的な感じでぱ〜〜〜〜ぷ〜〜〜〜だよね?」

父:「最近よく来るけど、いつもあの音だけだね。どうしてだろ?」

私:「はっ・・・もしかしてあのお豆腐屋さんは生き別れになった兄弟がいて、ああして片方だけ鳴らして自分の存在を知らせているんじゃ・・・!」

父:「そ、そうか!じゃあこの世のどこかにもう片方を鳴らしてこのお豆腐屋さんを探すお兄ちゃんとかがいるに違いない!」

私:「そうだよきっと!どこかにぷ〜〜〜〜だけのお兄ちゃんがいるんだよ!毎日ぷ〜〜〜〜だけ鳴らして弟を探すお豆腐屋さんが!!」


・・・ぱ〜〜〜〜〜・・・


      ・・・ぱ〜〜〜〜〜・・・


父:「言われてみればどことなく音も物悲しい気がする!」

私:「うおおなんていうドラマチックな人生を歩んできたお豆腐屋さんなんだ!」


二人して愛と感動の人間ドラマを作って勝手に盛り上がった昼下がり。



===



そして数年たった現在。


・・・ぱ〜〜〜〜〜・・・


      ・・・ぱ〜〜〜〜〜・・・


私:「ああ、またあのお豆腐屋さんが来てるよ」

父:「本当だ。まだ生き別れのお兄さんは見つかってないのか」

私:「早く見つかるといいねぇ」


お豆腐屋さんのドラマはまだ続いている。




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