第2話「年頃の娘が父親を好きで悪い?」


――年頃の娘が父親を好きで悪い?


  友人 U海氏



===


2016年3月


あれは20歳の学生の頃、友だちとの会話で起きた。多分私の発言がきっかけだったと思う。


私:「お父さんとほぼ毎日居酒屋行ってる」


「嘘ーっ?」

「なんでー!?」


なんでってなんでだ。

……とは思ったが、こんな反応は初めてではなかったので言いたいことは判る。


一般家庭では大抵年頃の娘は父親を嫌がるらしい。

反抗的になったり、一緒の洗濯を嫌がったり、喋るのも嫌がったり。……見たことないからそうなの?って感じだけどね。


私:「うちは父親と仲良いからさ」


その答えにもほとんど似たような言葉が帰ってきたが、一人U海だけは真剣な顔で言った。


U海:「私も父親とよく飲みに行くし、嫌いとか思ったことない」


U海:「父親は消防士で、私はすごく尊敬してるよ」


年頃の娘が父親を好きで悪いか? とU海は言った。言ってなかったかもしれないが私にはそう聞こえた。意訳でおーまかにそんな感じだった。


きっとU海もこれまで何度も「嘘ー」「信じられない!」といったやりとりを重ねてきたのだろう。

私はこの話題で自分と同じ立場の考えを持つ人と初めて出会い、親近感を持った。

それと同時に昔のあるやりとりを思い出していた。




私の親は学校の先生だ。

昔習い事の師に言われたことがある。


「親が先生だと大変よね」


師もまた親が教師で、回りの目を気にしながら過ごす堅苦しい学生時代だったそうだ。


しかし小学生だった私は首を降った。

何故なら私の親はそういった意味で世間体を気にすることはなく、親が教師であることの重圧など微塵も感じたことはなかったのだ。


私幼女:「わたしの家はそういう感じじゃありませんので。普段から偉そうじゃないし。親が学校の先生でも苦労したことはないです」


今考えると生意気だな私幼女。

それはともかく。




私たちは何も親が教師だから、消防士だから尊敬している訳じゃないのだ。

かつて「親が先生だと大変よね」と仰った師が今自分の親をどう思っているかは判らないが、かつて疎ましく感じた時期があったことは確かなようだ。


だから私と、多分U海は、職業なんて関係なく、親の生き方を尊敬し、自分たち子供への真摯で率直な接し方に感謝しているんだと思う。



だって消防士は凄いけど、学校の先生なんて別段偉くもないし凄くもない。苦労が多い大変な職業だな、とは思うけどね。

私がそう考えるのはそれこそ親の教育の賜物かもしれない。



もしそれが世間一般とちょっとずれた考えだというのなら、それもきっと親の教育の仕業なのだろう。

私は自分の親が一番だと言えることに誇りを持っている。

「変なの〜」と言われたら、そうとも変なのだ!私の親がいかに変わってるか説明してやる!……と、嬉々として語り始めることだろう。


諸君も覚悟するように。




〈追記〉

友だちとこの話題で険悪になることはありません。

常に話のネタとして周りの反応を楽しんでいます。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る