第4話

~エピソード1~

俺は久しぶりに福山の実家へ帰省した。 たまにはおふくろの顔を見たくなったのかな。 俺が福山に住んでたのは18歳までだから、繁華街事情なんて知らずに生きてきた。 実家に居るのも飽きてきた頃だから、福山市内で酒でも呑むのも悪くない。俺は何の情報も無く、繁華街をゆっくりと歩いた。吸い寄せられるように、ごく普通の小料理屋の暖簾をくぐった。 店の名前は「金魚」。 「すいません、キンミヤ焼酎ありますか?」女将さんとおぼしき人に尋ねる。 「お客さん!キンミヤ焼酎好きなの⁈ウチも好きやけん、あるよ!」。少しアゴのしゃくれた女将さんが、キンミヤ焼酎の炭酸割りを作ってくれた。「ウチも飲んじゃおー」

勝手に飲めよ… そう小さく呟きながら、グラスを持った。 お通しのヒジキ煮がとても美味い。「もっと食べる?」 「あっ、、お願いします」。改めて周りを見渡すと、客は俺だけだ。

「今日はもう店終い!一緒に飲んでもええ?」。

女将さんは隣に座り、俺の太腿に手を置き…キンミヤを飲み始めた。

その時、店の電話が鳴る。 チリリリンチリリン…。 俺をチラリと見ながら、電話口に女将さんが出る。「もしもし?金魚やけど……何の事言うとりますの?……切るよ?」

そう言うとガチャンと電話を切った。「間違い電話が多くて困るわ(笑)」。

そしてグラスのキンミヤを一気に飲み干した。 「お兄さん、今日はトコトン飲も!」 そして夜更けまで飲み語り合った

女将の名前は和子。 和子のアパートで飲み直し、時計の針は…夜中の3時。

「我孫子さん、泊まってけば?」 かなり酔った和子が、部屋着で俺にもたれかかる。

胸元が大きく広がった和子の上着から、谷間があらわになり、目のやり場に困ってしまう。

「我孫子さん、いまエッチな事考えたんとちゃう?(笑)」

その時、部屋のチャイムが鳴る。 ピンポーンピンポーン! ガンガン!

福田さん!警察です!

そして俺は訳がわからず途方に暮れる。

次の瞬間、和子はイキナリ自分の額を人差し指で押し、寄り目になりながら奇声を発した!

「切るよ!切るよ!全員包丁で切るよ!」

全く・・・あぶないあぶない。

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