第2話

~第二章TVスター~

「本番10秒前!」俺は分けも分からぬまま、ビート武という男のTV番組の収録に参加していた。周りには何となく見たことの有る芸能人が座っている。必死で額の汗を手拭で拭く男や、ずいぶんと調子のいい事ばかり言う男(正に口から生まれてきたような奴だ)。楽屋でプロデューサーと名乗る男から「我孫子さん、好きに暴れちゃってくださいよ!」

「暴れるって、、どの程度だよ?」「まあ適当っすよ!」

まったく胸糞悪い野郎だ。そんなこんなで収録開始。事前に撮影した映像を皆で鑑賞。バズーカーで寝てる奴を起すという代物。ナンセンス極まりない・・・・。ビートからコメントを求められた「我孫子ちゃんもバズーカー持ってるらしいね?股間のバズーカーじゃないよだってバカヤロー!」会場から大爆笑が起こる。何が面白くて笑ってんだ?。「バズーカー出しますか?」手拭い男が「アビちゃんだめだめ!ww」アビちゃんって俺か?、ずいぶん馴れ馴れしい野郎だ。一通り収録も終わり楽屋に戻ると、ビートが現れた。「我孫子さん、ちょっといいかな?」「はい、どうぞ」収録の時の印象とは違い、穏やかで紳士な人だ。ビートはとても有名なコメディアンだとプロデューサーから聞いていたので、随分とイメージが違い好感が持てる。「オイラさ、何となく我孫子さんとおんなし匂いがすんだよなー・・」目をそらし気味にビートさんがそう言う。「俺もなんかその感覚わかりますよ」「そう?」「ええ」そんな流れで、一杯呑もうという流れになり、中野のビートさんの行き付けの鮨屋へ。奥の座敷に通されると、既に5~6名位の男達が正座で待ち構えていた。“殿!お勤めご苦労さまです!”と全員が声を揃えて発する。「バカヤロー!客人連れてきてんだからよ、オイラが堅気じゃねーと思われるじゃねーか!」冗談混じりでビートさんが怒鳴る。

「我孫子さん、ごめんねー、こいつらオイラの弟子達でさ」。こんなに沢山の弟子が居るのか・・・やっぱりビートさんは凄い人なんだな。

「おい、おまえら、こちらが我孫子すぐるさんだ。お前らとは人種が違うぞ。この人はすぐに天下取っちまうようなタイプだ」。何の天下だか分からんけど、悪い気もしない。とりあえずビールで乾杯だ。美味い!。俺はビール中瓶をいつものようにラッパ呑みした。「随分ワイルドだなーw」ビートさんがそう言うと、同じようにラッパ呑みをした。「オイラも昔はこうしてたっけな・・・我孫子ちゃん、杯だ!」こうして俺とビートは兄弟の杯を交わした。

黒人の店員が寿司を運んできた。口の中でもごもごと英語で呟いている。俺は黒人の店員に言ってやった「ファッキンジャップくらい判るよバカヤロー!」するとビートさんが「よっ!我孫子ちゃん!イイ台詞だなー、いただき!」「?」

その後の記憶は完全に吹っ飛んだ。

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