第2話 はるばる来たのです。
さて、今日も働いたな、外も暗くなり、庭の木々も黒く染まっている。
店の方の照明を消して、上の階、つまり居住スペースに上がろうとすると外が一瞬昼のように明るくなりまたすぐに暗くなった。
イタズラ?にしてはやり過ぎだろう、人の店の庭を光らせるなんて。外に出てみるか、なんとなく嫌な予感がした。あんなに明るくなるということは、間違いなくイタズラではない。つまり相手は本気と書いてマジなのだ。
とりあえず、鍋の蓋とお玉を装備して外に出た。威嚇して居なくなればいいとドアを大きな音がするように開けたが、何も変化はなかった。
「だ、誰かいるのか!」
「……」
応答はなかった。しかし、大きな物音がした。すると、庭のライトが逆光になり、影のようだが、なにか人型の生物がいた。
俺は怖さで手足が震えていることを隠そうと声を出した。
「ここから、立ち去れさもないと法的手段をとるぞ!」
うん、我ながらビビっていることが丸分かりだ。声が震えているし、法的手段ってなんだよ。
でも、その時向こうから声がした。
「ついに、来たの!」
「ああ、どんなモンスターがいるか楽しみだな!」
「二人とも、騒いじゃ駄目よ!」
これが、日本語であることは間違いない。但し、話している者の影から、猫耳のような物がついている奴、明らかに剣を持っている奴、耳が尖っている奴の三人がいることが分かった。
その時、俺はパニックに陥り自分が何を言っているか理解できていなかった。
「皆さん、とりあえず家に入りませんか?」
「え?」
その瞬間背筋に冷たい何かが通った気がして、一気に現実に戻ってこれた。
俺は、何を言っているんだ。
「じゃ、入るのです」
「そうだな、そうするか」
「お言葉に甘えて……」
そう言いながら近づいてきた三人はライトに照らされよく見えるようになった。一概に言えることは、「可愛い」だった。
俺が呆然と立ち尽くす中、ドアが開く音がして、そして閉まった。
「家に、入られた……」
俺も後を追うようにドアを開けて中に入ると、カウンター席に座る獣と調理器具を触る人、それから、その二人を見ているエルフ耳の姿があった。
「あ、椅子借りるの!」
「刃物、見せて貰うぞ!」
「綺麗な家具ね」
とりあえず、話の通じそうなエルフ耳に話を聞くことにした。
「あの、お客さんどちらから?」
「どこって、エクスティアからですよ」
そう言ってニコッと笑った。綺麗……とか、そういう問題じゃなくて、どこだよ!
「あの、カフェはもう今日は終わりなのと、店内でコスプレはお止め下さい、あと閉店時間過ぎてるので……」
「こすぷれ?なんのことですか?」
「コスプレっていうのはあなたたちみたいに仮装することです」
「私達、仮装はしていませんよ」
「え?じゃあ何しにここへ?」
「えっと、赤い月と黒い太陽が重なった時に、吸い込まれた食堂の生き残りで……」
「え?」
「名前は、獣族がスノウ、人族がマーク、エルフの私がミルヒです」
ああ、これが俗に言う厨二病ってやつか。俺は早く晩飯食って寝たいのだが。まあ下手に動かれても困るので話だけでもきくか。
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