異世界から来た女の子達とカフェやってます。

森田ムラサメ

第1章 この世界の生誕祭

第1話 普通のカフェです。

 俺は去年、長年の夢だった自分のカフェを手に入れた。調理師免許の取得、店の開店資金、その他諸々、大赤字だ。別に調理師免許はとらなくても良かったのだがここが失敗したらどこかに雇って貰うしかないので保険も兼ねている。


 まさに、火の車といったところだろう。といっても客がいない訳ではなく、少ないのだ。理由は、近年のコンビニの普及などたくさんあるが、一番の原因は、他所の店と大きな変化がないことだろう。


 それにここは都内でもなければ田舎でもない、つまりは中途半端な場所なのだ。


 しかしだ、俺はそれを好機つまりはチャンスと捉えて、なら地元のものでと考えたりもしたが、あまり効果もなく今も店内には客がたった一人しか居ない。


「お客さん、ご注文はお決まりでしょうか?」

「えっと、じゃあナポリタン下さい、おすすめなんですよね?それとコーヒー」

「はい、おすすめですよ。それじゃあナポリタンとコーヒーですね」

「はい」


 メニューには「当店自慢のナポリタン」と書いてある。当店自慢といってもなんかひとつそういうのが欲しかったから調子に乗って作ったものなんだけどね。


 注文を確認して、奥の厨房へ向かった。これも、厨房とは名ばかりのキッチンだけど。


 パスタの茹で加減が難しいというぐらいで後はどうにか、いつも同じ味に近づけている。それから、ナポリタンには、少し唐辛子を入れている。そうするとアクセントになるのでおすすめだ。


 そういえば、ナポリタンってイタリアには無い料理なんだよな。

 そんなことを考えながら時計を見るとあと五分ちょっとだった。


 アルデンテ、パスタの外側はモチモチとして、内側には芯が残っている茹で方だ。


 最初の頃は、柔らかくなったり固くなったりして、友人には「日替わりパスタ」とよくからかわれたものだ。


 ちなみに、コーヒー豆は知り合いの店から安値で仕入れているものの、かなり満足のいく香りと味に近づけた。


 あ、あとそうだ、ナポリタンは銀の皿というイメージがあったのだが購入が面倒だったので、陶器の皿を使っている。


 まあ、今までの説明でイメージできるくらい、どこにでもあるカフェだ。


 なんやかんや、考えたがいつも通りの普通の料理が出来上がった。店員を雇う金も無いし、雇うほど人も来ないので、俺が運ぶ。


「お待たせ致しました。ナポリタンです。それとコーヒーはいつお出ししますか?」

「食後でお願いします」

「はい、かしこまりました」


 いま、いるお客さんは確かここら辺で働いている、女の人でよく来てくれる人だ。


 気に入ってくれてるのか、近場にあるちょっと洒落ている場所だからかは知らないが、常連さんだ。



さて、そろそろコーヒーを淹れないとな。


 ミルを使ってコーヒー豆を挽く音が店内に響く。それと、同時にコーヒーの良い香りも広がっていく。


 この、ミルは結構値が張ったの覚えている、最初の頃はちょっと高すぎると思っていたが、使っているうちに愛着がわいてきて今となってはコーヒー豆を挽くのが楽しくてしょうがない。


 あと、コーヒー豆を細かく挽くとその分苦くなってしまうことは忘れてはいけない。


 さてと、お湯を沸かすことともうひとつコーヒーカップを温めておこう。


 ふう、そういえばここからも庭が見えるのか。この店で出してる紅茶はコーヒーより仕入れ値が高いからどうしても高くなってしまうんだよな。そこで、理想としては庭にハーブを植えて仕入れ値ほとんどゼロの「自家製ハーブティー」でも出せれば良いのだが。


 その時、お湯が沸いたらしくやかんから高い音がした。沸いたお湯は少し、温度が落ちるまで置いておいてと。


 ミルから、粉を取り出して篩にかける。


 よし、ドリップに入ろう。フィルターを折ったら、お湯を注いでいく。このとき、フィルターには絶対にお湯をかけないようにする。


 粉全体にお湯が行き渡ったら数十秒おいて、今度はよく言われる「の」の字を書くようにお湯をいれていく。


 後はドリッパーを通ってコーヒーが出てくるのを待てば良いだけだ。


 この方法を使うことでコーヒーを美味しく淹れることが可能になる。


 最初はお湯がなくなるまで、淹れていたが何ヵ月か前にテレビで最後まで淹れてはいけないと知った。まあ、最初の頃は友達しか、来なかったから、セーフだけど。


 コーヒーをお盆にのせて客のテーブルまで運ぶ。多分今日のコーヒーはいつものより美味しい気がする。まあ、あくまで気だけど……


「お待たせ致しました、コーヒーです」


 そう言いながら、カップを持って、テーブルに置く。そして、お盆から、砂糖の入った入れ物とミルクを置いて、おしまいだ。


 実は、コーヒーを一杯真剣に淹れると結構大変なのだ。ミルも電動だったら、もっと楽になるし、ドリップもコーヒーサイフォンを買えば楽になるのだが、これは自分でやりたい。少ない人数のお客さんだからこそ出来るこだわりだろうか。


 次はお会計かな、えっとナポリタンが750円でコーヒーが450円だから合計1200円か。


 料理の値段を税を入れてもくっきりするように、計算していたから、わりと便利だ。


「ごちそうさまでした。」

「はい、いつもありがとうございます。お会計合計1200円です」


 そんなやり取りをしたのち、レジには、千円札1枚と百円玉2枚が入った。


 また、お越しください。

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