第11話 借金の果てにあるもの

 あるところにお金にだらしのない男がいた。すぐに借金しては支払わずにトンズラするダメ男であった。男は、酒を飲み、女を買い、遊び呆けたが、返すお金は持っていなかった。男の貯金口座は借金を示すマイナスが記されていた。

「てやんでえ。借金が怖くて博打ができるか」

 男は賭け事にも手をだし、借金取りに常に追われていた。

「おら、今日こそは逃がさねえぞ。借金二千万円、きっちり払ってもらおうか。払えないなら、臓器を売る覚悟はあるんだろうな」

 いよいよ追い詰められた男の貯金口座に、光が灯った。

「くそお。おれの人生ここまでか、真面目に働くのもバカらしいから二十二で死んでもせいせいするぜ」

 すると、借金取りが驚いていた。

「待て。おまえの口座に振り込みがあったぞ。二千万円ちゃんと振り込まれている。借金はチャラだ。運がよかったな」

 男は正体不明の存在に借金を肩代わりしてもらって、生きのびることができたのだった。

 その後も男は遊びつづけた。酒に女にわき目もふらずに突っ込んでいった。

「おれの貯金口座には魔法がかかっているのよ。借金が返せなくなると、不思議と返済されるんだな。まあ、きっと神か何かの存在がおれを守ってくれているんだろう」

 男はそんなことをいいふらしていたが、貯金口座の振り込み人からの伝言が届いた。

「お父さん、そちらの時間ではわたしはまだ生まれていないと思います。でも、わたしはわたしが生まれるためにお父さんの借金を肩代わりしています。毎日、売春をしてお金を稼いでいます。客筋が悪くなると生活もたいへんです。あなたの娘はあなたの借金を支払うために幼い頃から汚い大人に犯されつづけました。これ以上は借金は返せそうにないため、真面目にお母さんに出会って結婚して子供を産んでください。大好きなお父さんへ」

 男は借金をするのをやめた。

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