第7話 自殺すら考えた

 テレビで報道番組がやっていた。

「東京都知事に当選した大池百合子さんです」

「はい。よろしくお願いします」

「どうして東京都知事になったんですか」

「それが、友だちが勝手に応募しちゃって」

 いっておきますが、この人は立候補しています。

「友だちが勝手に応募したんですか」

「はい、自分から都知事になりたいっていう人は都知事に向いてないと思うんですよ。みんなにならないかと推されて仕方なくなる人が都知事に向いていると思うんです」

 いっておきますが、この人は立候補しています。

 ぼくはその報道を聞きながら、ネットをやっていたのだが、パソコンのマウスが突然動かなくなった。やられた。また過激な発言が気にくわなかったハッカーに攻撃されたんだ。もう嫌だ。こんな不便な生活はしていられない。

 もう死のうと思う。

 ぼくは自殺まで考えた。

 一度、ベッドで横になり、気を落ち着けて、「生きるんだ。どうせ死ぬことはできない。みっともなくてもいいから生きるんだ」と自分に言い聞かせ、きっと明るい未来が待っていると信じ、決意をしてパソコンの前にまで戻ってきた。

 パソコンは、マウスは電池を交換したら治った。動くようになった。

 パソコンのマウスの電池切れで自殺すら考える。それが人間というものだ。人が自殺する理由なんてそんなものだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る