第5話 劣等感を感じて読むのが耐えきれないほどの名作

 今から本当のことを話そう。ちょっと難しいかもしれないが、これがぼくの本音だ。

 あれは今から百三十八億年前、まだ人も獣もいなかった。すべてが混沌としており、生きるも死ぬもなかった。

 つまり、そういうことだ。きみは何か社会の問題を生きるか死ぬかで考えてないかな。それはまちがいなんだ。ぼくの生まれる前の世界では、まだ生きるも死ぬもなかった。そんなことはたいした問題じゃなかったのさ。

 ぼくには人類に恋愛が必要な理由がまったく思い浮かばないんだけど、恋愛ってのは神様にしか理解できない人類への贈り物みたいなものなんだろうな。

 そして、ぼくはキモブサだ。ああ、きみも人生に挫折してふと自分のことを省みる時に思い出すがいい。ぼくというキモブサがいたことを。そして、いつかこの世界が本当に終わる時、真のキモブサが現れすべてを滅ぼしてしまうだろう。その時に思い出すがいい、あの醜くて憐れなキモブサのことを。行け。もう話すことは何もない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る