第4話 祝冒険王ビィト連載再開、だが単行本は……
月刊ジャンプにおいて連載された『冒険王ビィト』は私が最も熱中した漫画作品の一つである。原作三条陸、作画稲田浩司という名作『ダイの大冒険』を執筆したペアが手掛けた『ダイの大冒険』に劣らない傑作であるが、作画を手掛ける稲田氏の体調不良が理由で長い間休載しており、その間に月刊ジャンプは廃刊、月刊ジャンプの後を継いだジャンプSQもけっこうな歴史を刻んでしまった。
月刊ジャンプで『ビィト』とともに連載していた『ロザリオとバンパイア』、『クレイモア』、『テガミバチ』は移籍した『SQ』でも人気を誇り、既に連載を完結させていたくらいだ。
原作の三条氏はその後すっかり他の漫画原作やアニメ、特撮作品の脚本を手掛けるようになっており、稲田氏の回復も聞こえてこなかったので、これはもう再開はないかと何度か思った時もあった、だが『ビィト』という作品のすばらしさを考えると完全に諦めることはできなった。
兄が結婚を機に所有していた漫画を処分した時、私にも漫画を減らすようにとのアドバイスをしてくれたことがあった。私もこの時、今後のことを考えると(私にとっての)一級品以外はそうしようと考えた。
当然『ビィト』は残す方の代表である。兄も『ダイの大冒険』からのこの黄金コンビの大ファンであり、『ビィト』が最高に盛り上がってからの御預けを約10年くらっていた読者の一人であるが、この時断捨離のハイテンションのせいか「ビィトもう再開しないだろうし、未練を立ちきるために処分したら」と冗談を言った。
当然答えは「NO」である。作中の人物になぞらえれば、私はビィトがキッス復活を信じたように、三条稲田氏の黄金コンビの復活を信じたかったのである。その時の思いは裏切られることなく2015年12月中旬に『連載再会』の吉報があった。
正直夢かと思って友人にメールしたり、兄と電話を介して喜びを分かち合った。
2015年の年末帰省した時は、色々仕事の残りもあったが、連載再開の感動に突き動かされ、全て初版で揃えてあり帯も損なっていないビィトの単行本を読むことにした。押し入れの中に本棚を配置し、日焼けや劣化を防いでいたので、単行本の状態は最高である(といってもちょくちょく読み返していたので経年劣化に気付かない部分もあるだろうが)。
時間的な制限で途中を残してしまったが、ビィト再開まではまだ数か月ある。私は当然次の帰省の時にいくらでも読めるだろうと考えた。今考えれば(意味のないことであるが)この時、単行本を持って帰ればよかった。
2016年1月9日、火事によって『冒険王ビィト』も『ダイの大冒険』の文庫版も全て焼失したのであった。連載再会を喜んだ矢先にである。
『正負の法則』という考え方があるが、正も負も尋常なものではなかったということだろうか。
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