第5話 ペルソナのサイン色紙
漫画やDVD、文庫本やゲームソフト、それぞれ個別の思い出があるにはあるが、姿形だけならば同じものが世の中にあるにはある。
金額的な損失はかなりのものだが、今までの話で取り上げた漫画の類は、資金と労力を確保できれば取り戻せなくもない。
しかし、当然のことではあるが炎には慈悲や手心はない、世の中で唯一無二のものをも容易に奪う。貰い火で全焼した自室にはそういうものが幾つかあった。
その中で、火災直後に最も惜しいと思ったのは、キャンペーンで当選したサイン色紙であった。
「ペルソナ」というゲームシリーズがある、「ペルソナ2罪」ではじめてこの作品群に触れ、「異聞録」や「2罰」、「3」「3FES」「4」と本編は一通りプレイした、最も好きなゲームシリーズの一つである。
現在はやはり派生作品が多い「4」、劇場アニメ化した「3」が有名であるが、2008年に、この「ペルソナ3」を原作に「PERSONA -trinity soul-」というアニメが放映されている。
ストーリーや映像、音楽、あらゆる要素が私にとって最高の作品であると同時に、ペルソナシリーズの要素をアニメに完全に落とし込んでおり、傑作中の傑作と評して差し支えつかえない作品である。
もちろんDVDは揃えたし、関連書籍も発売中止になったもの以外は全て集めた。主題歌やサウンドトラックも購入していたので、関連商品の発売に合わせて実施された「ペルソナサマーキャンペーン」にはもちろん応募した。
キャンペーンで当たるサイン色紙は、どれも魅力的だったため応募する段階で相当悩んだが、その頃にはすっかりアニメのファンになっていたので、「キャスト直筆サイン付きイラスト原画」の項目を選び、トリニティソウルで好きなキャラクターであった榊葉拓朗の色紙を希望したのである。
既にタイトルにサイン色紙とあるのでお察しの通りだが、このキャンペーンに当選、アニプレックスよりサイン色紙が届いた。
キャラクターデザインを務めた石井百合子氏直筆の拓朗の画の上に、拓朗役の田坂秀樹氏のサインと私の名前が書かれたサイン色紙である。当時、正直自分の運に驚いた(今は別の意味で自分の運に驚いている)。すぐに額を購入し、学生時代はアパートの壁にかけておいた。その後、仕事の都合で何度か転居したので、保存環境を一定に保つことを重視し、転居の際には持っていかず、実家の押し入れに戸を開けば見られるように安置したのである。
この日光や温湿度変化を抑えた保存方法環境に置き、帰省の度見直すのが最適だと思っていたのだが、まさか保存環境そのもが燃える日が来るとは……、
サイン色紙は写真データとして残しており、持っていたという事実と姿は確認できる。さながら、戦災などで焼失した美術品のような扱いである。
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