第2話 自室に関する記録、1

 二階にあった四つの部屋のうち、物置として使われていた部屋も含め、私が自室として使わなかった部屋はないが、隣の家のk氏に自宅を燃やされるまで最も長く愛用していたのは、二階の北西側に位置した陽当たりの悪い部屋であった。

 

 かつて兄が使用していたこの部屋は、大きな衣装箪笥と押し入れがあったため、私が不在の時は主に母と兄によって布団置き場や衣裳部屋として活用されていた。帰省すると畳に置かれた荷物を踊り場に出すのが半ば儀式となっていたが、このように利用されるのはこの部屋のモノの保存に優れた性質のためでもあるので、諦めていた部分もあった。


 二階の他の部屋は洋風のドアで出入りする造りであったが、唯一この部屋だけは引き戸であり、なおかつ床も畳敷きである。最も気軽に入室できる性質に加え、畳六畳のスペースの他に、出窓のように突き出した一畳分のフローリング、一畳分の押し入れ(二段)が大量の荷物を安置するのに適していた。


 私は既に中学の時にはこの部屋を愛用していた。記憶は曖昧だが、小学生の時は主に別の部屋を用いていたので、兄が大学に入り上京したのをきっかけに移動したのであろう。

 ちょうどこの頃から始まった収集の趣味と、この部屋の性質は相性がよかったのが、部屋を入れ替える大きな理由になったのかもしれない。


 日光の射し込まないこの部屋は、漫画や小説といった光に弱いものを保存するのに適している環境だった。唯一採光をする北側の窓を避け、押し入れを中心に書籍やCD、DVDを十数年かけて蓄積していった。もちろん長らく収集を続けたので、今では手に入らないものも多く、それ故今回の火事におけるダメージは大きかった。


 

 

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