眼鏡を外せば皇帝陛下!

@ichiuuu

第1話

【眼鏡を外せば皇帝陛下!】


 あの夏の日に、二人は世界を変えた。


◆◆


 「暑い……めちゃくちゃ、暑いです……」

  十年前のあの夏の日、不世出の皇帝は今、うだるような暑さに辟易していた。彼は見晴らしと日当たりのよすぎる城郭の隅にある、石畳の牢に押し込められていた。時折、強面の看守が鉄の柵越しに

「水を……」

 と訴えられるのを、声なき威嚇で払いのけていた。ヒビの入った黒ぶち眼鏡をかけたナポレオン・ボナポルトも、

「どうかお恵みをくださあい」

と必死に懇願するが、強面看守は厳しい目つきをするだけである。それどころか、鉄の柵の隙を縫ってボナポルトの腹を足蹴にし、ほくそえんではこう叫ぶのであった。

「おら、黙れこの王党派の下っ端軍人が! 生かしてもらえているだけ感謝しろ!!」

 外は新緑の眩い六月、牢より少し歩いた崖の下には波涛が翻っては舌なめずりしている。

「くっそお、このままじゃ、僕たちゆでだこになってしまうよ。なんとかならないのかな」

  フランセーヌ軍部下士官、ボナポルトは、こげ茶のややねこっけな髪を包む帽子を取り去って、悔しそうに呟いた。それへ彼を慕っている(ことになっている)部下のアランが、ごろ寝スタイルのまま主人をたしなめる。

「そううじうじしなさんな。あんたらしいが、あんたらしくないぜ、ボナーさん」

「ボナーさん!? ボナーさんって誰!? もしや僕のこと!?」

 この部下のまったくなっていない呼称に、腹を立てたいがそんな気力もないボナーさんである。そのまま彼は熱された鉄の柵の一本を握り、ふうと嘆息する。

「まさか本土で捕まって、こんな僻地に送られるなんて! 僕はただ平和に争いなく生きていきたかっただけなのにい!」

「まあまあ、待てば果実も熟すように、何かいいことありますよ。ナポっち」

「さっきからどんどん敬意薄れていってない!?」

  ボナポルトは自分をなめまくる部下へと思わず突っ込んだところで、この熱された牢へと近づく足音を耳にした。その足音は二人分。一人目、このどたどたした偉そうな足音はまず看守のものと思われる。もう一人の足音、それは聞き慣れぬ、貴婦人のドレスがそよぐような優雅な足音であった。

「おらっ入れっ」

「ちょっと、やめて頂戴! 乱暴はよしてっ」

  あっ! と牢に押し込まれて、よろけたその女はボナポルトの膝へすがりついた。ボナポルトの膝に女の柔らかい感触が伝わる。

「そこで三人して、仲良く干上がりな!」

  看守の捨て台詞のあと、その偉そうな足音は遠のいていった。

「いたた……」

ボナポルトは、そう言いながらようやっとこうべをもたげた女を見据えた。その瞬間、心臓が止まるかのような愕きが彼の胸のうちを走った。

(なんて美しい女だろう……)

 牢に突如押し込まれた、白い粗末なドレス姿の女の美しさは、確かに言いようもなく、妖艶な魅力に満ちていた。その波打ったブロンドが、しなだれた彼女の足に絡んでいる。瞳は紫水晶のように、色合を様々に変じ、鼻は高く、唇は薔薇の咲き誇るような華やかさに紅く匂っていた。その女も、自分に瞳奪われる青年に気が付いたのであろう。実に優雅に立ち上がって裾を広げ、

「あら、ごきげんよう?」

 と挨拶した。挨拶されても、返す言葉もない程女に魅入られているボナポルトへ、部下アランはすかさず耳打ちをした。

(落ち着いて下さいよボナーっち! こういう女は確かに並外れて綺麗だが、大概悪女に決まっています! そうたやすく御されないでくださいよ)

「い、いや、だけど……」

 ボナポルトはためらいがちに、微笑をたたえる彼女に声をかけた。

「いかにも貴族らしい気品に満ちていて、美しい、女性だと僕は思うよ……」

 「まあ! ありがとう」

 と、女は歯を少しばかり見せて笑った。決して大口をあけない。その仕草がどこかエレガントで、彼女が着ると貧しいドレスも、花弁のように石畳に散り広がるように思われた。

「ああ、挨拶を忘れたわね。あたくしの名はジョセフィーヌ・ド・メルシャンよ。あなたたちは?」

「ぼ、僕はナポレオン・ボナポルト。そっちで寝ころんでいるのは部下のアランだよ。僕らはただ王族の警護を任されていたという咎で、革命政府に睨まれここへ送られたんだ」

「へえ」

 さしたる興味もないようにジョセフィーヌが頷く。

「君はどうしてここへ来たんだい? 名前から察すると貴族の出みたいだけど」

 これへジョセフィーヌが苦い顔つきをして、くちどに答える。

「あたくしね、フランセーヌ本土の子爵の家に嫁いだの。もともとはこの島の出身なのよ。父がこの離島の総督だったの。ご存じだと思うけれど、今フランセーヌ王国は革命によって民衆の手で王政が打破され、王族貴族僧侶はみんなシトワイヤンによってギロチンにかけられているわ。逃げ遅れて捕まったあたくしの夫も、無論殺されたわ。あたくしも逃げるように亡命してこの島に帰ってきたはいいものの、新総督によって捕まり、ここに籠められたってわけ。このあたりのことは、もちろんご存じよね? 田舎者さん」

 「……僕も一応貴族だよ」

 ボナポルトが淡く自嘲の様を見せたので、ジョセフィーヌは眉根を寄せたまま

「それは知らなかったわ。ごめん遊ばせ」

 とそっぽを向き言い捨てた。

 ボナポルトはしかしこの無礼な対応に腹を立てなかった。今までうだつもあがらず、一兵士として生きてきた自分である。イタリア訛りのフランセーヌ語と、このさえない容姿とふるわない身分で、軽視されることは分かっていた。寂しげに俯くボナポルト。対するジョセフィーヌは昼の薄い月を見あげ、ぼそりと呟いた。

「まったく、なんてことかしら……今宵は六月の満月の日だというのに……」


 やがてこの島にも夜がやってきた。あたりは物々しいまでの月光に照らされ、城下に灯りがともっていく様が見てとれる。隠し持ってきた扇をボナポルトにあおがせ、その月光に濡らされるジョセフィーヌはまるで美神のようである。彼女が先ほどから何かイライラしていることはボナポルトにもアランにも伝わってきた。月がさしのぼった時からそれは始まったらしかった。先ほどから呪文のように抒情詩と焦りを彼女は取り

混ぜて唱える。

「フルムーンの、引き潮の折、天から神は舞い降りる。月光浴する教会に神は舞い降りる。ああ、早く、早くここを出ないと……」

「あの、ジョセフィーヌ」

「様をつけなさい」

「あ、はいジョセフィーヌ様」

「なあに」

 ジョセフィーヌはかれこれ二時間ほど扇をそよがせている男を睨んだ。ボナポルトがおもねるような目つきを返す。

「あの、もう扇ぐのやめてもいいですか」

「ダメに決まってるでしょう」

「でももう手首のスナップがきかなくなっているんですが」

「何を言っているの。もっと手首がはじけ飛ぶくらいの勢いで扇ぎなさいな」

「うっ……そんな」

 ついにボナポルトは膝から崩れ落ち嗚咽をあげた。彼の儚いメンタルはもう限界であった。下士官としてただ王族の側にいただけなのにこの僻地に送られ、部下にはなめられ、知り合った美女には下僕のごとく扱われる。その現実に耐え兼ねたのであろう。

 しくしく……月光射しこむ牢で泣かれると、他の者もテンションが下がってくる。次第にジョセフィーヌが苛立ち始めた。

「いい加減にしなさいこの弱虫眼鏡!! いい加減涙をお拭きなさい、ほらっ」

「あっ」

 ジョセフィーヌがボナポルトの眼鏡をかなぐり捨て、その瞳をごしごし手ずから拭いてやらんとしたとき。ジョセフィーヌは驚いた。今度はジョセフィーヌが魅入られる番だった。男の眼鏡を取り去って現れた瞳! なんと美しく、凛々しい瞳だろう! 顔立ちが整っているのは認めていたが、このまなざしはなんと力強く、男らしい魅力にあふれていることだろう! そのうえボナポルトは、甘いテノールでジョセフィーヌにこう囁いた。

「どうしたい、可愛いバンビーノ」

 それからジョセフィーヌの細い顎をすくい、にやと笑んでみせた。なんだこれは。それがジョセフィーヌの率直な感想であった。

「ねえ、アラン、とやら。この人、キャラ違くない?」

「……思いのほか冷静だな」

 ふん、とアランが苦笑を漏らす。それから彼は話を切り出した。

「まあ、バレちまっては仕方がないので話そうとしようか。俺の主君、ナポレオン・ボナポルトは普段はうだつのあがらない、弱気でめそめそしたさえない男だが、眼鏡をとるとどうも、別人格になるらしい。その、つまりは」

「ちゃらちゃらした、強気の俺様軍人になるってわけね」

「まあ、そういうことになる、か」

 ジョセフィーヌがたやすく主君の本性を見抜いたので、アランは少し驚いた風を見せた。どうも、この女は頭の悪い女ではなさそうだ、と思った。ジョセフィーヌは、なぜかシャツをはだけさせ、こちらに秋波めいたまなざしを送る男へ、ふふと笑んでからこう言い放った。

「……いいわ。悪くないわ、いえ、とてもいいわ! むしろ二千倍くらいいいわ! 」

「二千倍も!?」

 思わずアランが叫ぶ。その後でこの猛き男に成り代わった主君と、それにうっとりする美女の間に淫靡なムードを感じて、すぐさま話題を変えた。

「ところでばーさん、さっきあんたが言っていたことだが」

「ば、ばーさんですって!!」

 これにはさすがのジョセフィーヌも激高する。その七色に色合を変じそうな瞳で、アランを強く睨み据える。

「誰がばーさんよ! あたくしはまだ二十六よ二十六! お肌は曲がりかけてるけどまだ二十代よ! だいたい、そう言うあんたたちはいくつなの!!」

 ボナポルトが髪をかきあげつつ、答える。

「二十四だぜ。ベイビー」

 続いてアランも。

「俺は十九だよ、ばーさん」

「だいたい四捨五入したら似たようなもんじゃない! なに、あなたあたくしの何が気に食わない訳!! この薔薇のような美貌? 慈愛に満ちた性格? それとも豊満な体つき!?」

 きいいと喚くジョセフィーヌへ、アランがうんざりしたような目つきを見せる。

「いや、俺は十四から上は全員ばーさんで呼称は統一してるからな」

「あんたはすべての二十代以上の女性に謝りなさい!!」

 今にも噛み付こうとするジョセフィーヌを、ボナポルトが後ろから抱きとめ、なんとか押しとどめようとする。ロリk……ではなくアランは、そんな彼女など歯牙にもかけず、再度先ほどの話を話題にする。

「で、何なんだよばーさん。フルムーンの夜、ってのは」

「はあ? 何のことかしら~」

 ジョセフィーヌは当初歌ってごまかす作戦をとったが、ボナポルトに後ろから腕を絡めとられ、甘い声音で、

「教えてくれ俺様の可愛いバンビーノ。フルムーンに何があるんだい」

と囁かれると。

「気持ち悪い」

と早速免疫が出てきてしまったことを知らせた。

(でも、切れ者の俺様軍人と、腕の立つ護衛……もしかしたらうまく利用できるかも)

 そう思いなおした彼女は、またあの歯を見せない微笑を浮かべ、話を切り出した。

「ねえ、あなたたち、神の恵みが欲しくはなあい?」

 それからジョセフィーヌは、石畳にしどけなく座って、こう切り出した。

「この島に伝わる伝承よ。六月の、引き潮の刻、満月の夜、この島の裏手にある洞窟を幾多くぐり、丘を抜け血を捧げたものに、神よりのめぐみと栄誉が授けられるって話よ。お父様がご存命の折話してくれたの」

「神よりの恵み……」

「それは本当なのか?」

 眼鏡を装着したボナポルトと、訝し気なアラン。ジョセフィーヌはくす、と漏らして、石畳をなす青い石の一つをねじとって、それで土を掘る。

「ああ、ほら、出てきた」

「ひいいいいい」

 彼女が地より掘り起こしたものに、ボナポルトが絶叫する。それは骨、であった。もう、少し力を入れればパキ、と折れるほどもろいものだが、確かに骨に相違なかった。

「この地で神の恵みにあずからんとしたものは千はくだらないわ。けれどみーんな、最後にはこうなっちゃうわけ」

「なんと……」

 軍人の二人は唖然とする。その後でボナポルトは身を震わせながら。

「絶対、絶対に、連れて行かないでくださいよ! 僕はそんな危険を冒すなんて、死んでもご免だ! 僕はただ平和に生きていたいんだあ!」

 すかさずジョセフィーヌが、ボナポルトの眼鏡をかなぐり捨てる。

「今夜中に必ず連れていけよ、ジョセフィーヌ。お楽しみはその後だ」

 豹変するボナポルトに、もはや免疫のついたジョセフィーヌである。

「何がお楽しみよ何が」

「と、まあ、話は決まったわけだ。問題は、この警備を抜けてどうやって洞窟までたどり着くか、だな」

 アランがすかさず柵の内からあたりを見渡す。あたりは潮騒が騒いでは、凪いで、月のたゆたいを海がその面に浮かべている。

「なんだか、静かだね? 」

 これにジョセフィーヌがふふんと、笑む。

「今夜はこの町の貴顕を集めた舞踏会なんだわ。それだから警備の数をそちらに割いて、こちらは警備が手薄なのよ」

「それにしても静かすぎるような……」

「とにかく」

 と、アランが口をはさんだ。

「何にせよ我々にはラッキーな状況のようだ。やるなら今宵しか、ないな」

「ええ、ではいくわよ」

 と、そこでジョセフィーヌが鉄柵右端の棒を下に沈め、ぐりぐりと時計回りに回し始めた。すると鉄の棒は思いのほか簡単に外れた。

「おわ」

 軍人二人もこれには愕きを隠せない様子である。ジョセフィーヌはご満悦気味だった。

「ふふ、この秘密は総督だった頃、父がこっそり教えてくれたの。まさか娘がこれを悪用するとは思わなかったでしょうけれどね」

 そう言ってから、ジョセフィーヌはにっこりと破顔して。

「では、お先にお行き遊ばせ」

 と告げた。その心のうちはどす黒い計算に満ちていた。

(これでこいつらが先に行って、看守と遭遇したらきっと倒してくれるわ。そうしたらあたくしはその後で優雅にここを出ていけばいいのだわ。うまくいけばお宝もあたくしのものかも……男って本当に便利だわあ。うふふ、くふふ)

「っていったああああ!! 痛い痛い背後からあたくしを押し出そうとするのやめて! ちょ、やめてええ」

 そんな風に思案をめぐらしていたジョセフィーヌを、細い柵の間から外へ押し出そうとするのは無論、ボナポルトとアランであった。ジョセフィーヌは鉄柵に圧迫されながら叫ぶ。

「何すんのよお!! やめてえ」

「お前のどす黒い計算なんかまるっとお見通しなんだよ!」

「悪いが俺様にもレデイ―ファーストの精神が宿っているものでね」

 二人は悪い男の顔をしながら、ジョセフィーヌを下界へ送り込む。

「やめてえーあたくしをねじりパンみたいにするのやめてええ」

  スポンっ。

 ジョセフィーヌがようやっと柵の外へ脱出に成功した。その時である。

「何をやっているんだ」

 角を折れて現れた、看守に見事に見つかった。あ……と三人は石像のごとく固まる。

「な! まさか、脱走か!!」

 思わずサーベルのつばに手をあて、身構える看守へ、ジョセフィーヌは予想外の言葉を口にした。

「待って、待って頂戴! あたくし、あなたにお会いしたくてここを抜けようと思ったの!」

「えっなっ」

 その、潰したにきび跡夥しい、鼻毛のちらと見える、赤ら顔のもてなそうな看守へ、ジョセフィーヌがうっとりしたようなまなざしを送る。

「毎朝あなたの凛々しい素敵なお顔を拝して、毎晩あなたに胸をときめかしていたの。あなたに比べたら、ここの二人なんて毛虫蛆虫みたいだったわ! だから、そんな毛虫どもより逃れて、早くあなたのお顔を拝したいと思って、思わず脱走を試みてしまったというわけなの」

 この上なく美しいジョセフィーヌにそう囁かれ、看守は茫然としている。牢の二人は唖然としている。

「なっだが、しかし……」

 いまだ任務と愛の重さを測りかねている看守へ、ジョセフィーヌが潤んだ瞳を見せる。

「やっぱりおいや、よね……こんなあたくしでは、この上なく素敵でハンサムなあなたとは、釣り合わないって、ことよね……わかってたわ。わかってたの……」

「いやはやそんなことは!!」

 思わずジョセフィーヌの肩を掴む看守へ、ジョセフィーヌは媚態を繕った。

「ねえ、あたくし、あなたと誰もいないところへ行きたいわ……」

「誰も、いない、ところ……」

 ごくり。

 看守が生唾を飲み込む音まで聞こえた。思えば看守は少し酒が入っているようだ。おそらく舞踏会の祝い酒を少しあおったのだろう。

「そ、そうだね。いこう、二人きりで、快楽の宴を、催そうじゃないか……」

 このいたく気持ち悪い一言を残し、看守はジョセフィーヌの肩を抱いて人気のない角を曲がっていった。その際、ジョセフィーヌがちらと牢を一瞥した。この隙に出ろ、ということなのだろう。二人はちょっと唖然としたあと、柵からの脱走を試みながら。

「ね、だから言ったでしょ? ああいう女は悪女に違いない、って」

「うむ……俺様もああいう女には重々気を付けるとしよう」

 無事脱走出来たところで、二人はさっそくあの悪女の姿を探した。

「なんだかんだであの女は助けてくれたからな。今度はこちらが助けねばならん」

 ボナポルトがあたりをうかがっていると。

ボンっ!!

 何か岩が破裂したような音が響いた。まるで何者かが超人的な力で何かを破壊せしめたかのような。軍人二人の顔が青くなる。

「まさか、ジョセフィーヌ……!!」

  角を急いて曲がり、そこに広がっていた光景に二人は息を呑んだ。そこでは看守が泡をふいて倒れ伏していた。ジョセフィーヌがそのかたわらにいてハンカチーフで手を拭いている。

「な、ジョセフィーヌ、これは……」

 ジョセフィーヌは何でもないことのように言う。

「おっぱいチラ見一回でアッパー百連発の刑よ♪」

「いや、本当お前だけは敵に回したくないわ。いや、本当に」

 男二人は怖気を感じながら、洞窟を一路目指した。


 それから間もなくのこと、この島の丘にある総督の家に、青い軍服の男が入った。そしてうら若き新妻に背中をもませている、総督の寝室のドアをノックした。

「なんだ」

 齢六十を超す総督がベッドの上から苦い顔でそのノックに応える。軍部の一人がひそやかな声で告げる。

「はっそれが、あの牢からナポレオン・ボナポルト下士官とその配下が脱走したようで」

 「ナポレオン……? どいつだ、それは」

 まるで記憶にないと言った風の総督へ、手下は言葉を続ける。

「暫定政府よりの文書を覚えておいででありませんか総督。ナポレオン・ボナポルトは平時は目立たないが、時折異常に野心を見せ、またきわめて冷静に自分に有利な判断を下す切れ者だということで暫定政府より恐れられ、秘密裏にここへ送られたではありませんか」

「あ、ああ? 確かにそうあったような……」

 いまだこの報に薄い反応の総督へ、手下はより声をひそめた。

「その切れ者を逃がしたとあらば、政府もいい顔はしますまい。また、脱走した際は部下との二人ではなかったという話です。女連れだった、という町の民の話もありました」

「その、女連れというのは」

「はっ。おそらく前総督の娘、ジョセフィーヌではないかと」

「頭の切れる要注意人物の下士官とその部下、そして前総督の娘……まさかそいつらは」

 ようやっと顔をもたげた総督に、ドア越しで男もうなずいた。

「おそらく、あの伝承を探りに行ったのでしょう」

「それを早く言わんか馬鹿者!」

 きゃっ、と新妻をおもちゃのように押しのけ、総督は立ち上がって白い軍服を纏う。それからふらつく新妻に葉巻をつけさせ、口に運ばせる。

「思えば確かに今日は六月の引き潮……伝承の詳しい場所までは知らなかったが、あるいはそいつらが教えてくれるやもしれぬ。さればこの世の栄誉が手に入る……こんなくだらない下民くさい島の総督などやめて、わしがこの地上を覇する時代が来たのかもわからんな。ふっふっふ」

 はーははは! 大きく高笑いを発して、総督はその白髪を撫でつけ、口ひげを撫でさすり廊下の手下へと命じた。

「すぐさますべての兵をあやつらの行った方角へ行かせろ」

 ◆

その頃、例の三人は洞窟内部へたどり着いていた。引き潮時にしか現れぬ、ぬめった黒々とした崖にうがたれた洞窟である。三人は中を覗き込み、町で借りてきたランプをたよりに歩を進めていた。時折海水が淡くしみ込んで地が滑る。

「まったく、本当にこんなところに宝なんてあるのか」

 いまだ疑念を捨てきれぬアランへ、先頭を歩むジョセフィーヌが振り返る。

「あるに決まってるでしょ! 前総督だった父がいまわの際にも言ってたことだもの。

「この島には神がいる。黒き洞窟の果てに」って。父は生涯あたくしに嘘をつかなかった。きっとあるに違いないわ」

「それにしてもジョセフィーヌ、君の歩幅広くない? そんなにお宝をいの一番に見つけたいの?」

「そりゃあそうよ! あたくしが最初にお宝を見つけたら全部あたくしの。アランが見つけたらちょっとあたくしだけ気持ち多めの三分割。ボナポルト、あんたが見つけたら全部あたくしに頂戴。運ばせてやるくらいのことはするわ」

「何がするわだよ! お前結局俺たちを巧妙に利用してるだけじゃないかこの悪女! 」

 アランがこれに噛みつき、ジョセフィーヌがほほ、と扇を開こうとする。その時であった。

「いいのよ男なんてみんなあたくしの下僕なんだからってぐきゃああ」

突然、彼女のセリフが途中から悲鳴に変わった。いや雄叫びか。なんとジョセフィーヌが急いていた道が途中で落ち、地が口をあけ落とし穴の呈をなしていたのだ。

「可愛くも憎たらしいバンビーノ! 掴まれっ」

ジョセフィーヌが夢中でボナポルトの腕を掴む。その間にも、ぽっかりとあいた地下の落とし穴を吹きすさぶ風に、ジョセフィーヌの細身が揺れる。

「きゃあああぐひゃあああ早く助けて! 助けて頂戴!」

 ジョセフィーヌの揺れる穴のはるか底には、白いものがそこここにひっかかっていた。おそらくここに落ち、体をかち割られた死体のいくつもが、白骨化してジョセフィーヌを待っているのだろう。ジョセフィーヌはもはや下も向けず、悲鳴だけをひたすらに発していた。


「はあ、はあ」

 なんとかジョセフィーヌを穴からすくいあげ、三人は先へ進もうとする。

「もう、こんな怖いところ嫌! とっととあたくしのみがお宝をゲットして帰るわよ!」

「お前の欲心には底がないな! 」

 と、アランが言い放った時だった。前をつかつかと速足で歩むジョセフィーヌの前に、ボナポルトが立ちはだかった。

「あら、何よあんた。あたくしの先を歩きたいの」

「違うジョセフィーヌ。少しそこにいろ」

 ボナポルトがためしにそこらに落ちていた石を薄暗い洞窟の先へ投げてみる。すると。

 凄まじい音がして、洞窟の天井が剥がれ落ちてきた。その先端には白いナイフのようなものが幾重もはえ地を突き刺しており、あやうく串刺しになるところだった。

「ひいいいいい」

 衝撃で眼鏡がずり下がったボナポルトが涙目になる。続いて。

「ねえ、何か、音がしない?」

 その串刺し天井を超えて、さらに洞窟の奥深く下り道に入っていった時。ジョセフィーヌが異変に気付いた。さっきから何か、背後から音が迫ってくる。そう、まるで巨石がこちらへ迫ってくるような……。

「まさか……」

 三人は一斉に振り向き、そして我さきにと首を前に戻して逃げ出した。まさに大当たり、坂道になっているこの道を、大きな球状の岩が転げて迫ってきていたのである。

「ひいいいいいいいい」

 三人はみなみなすごい顔で走っていく。と。

「あっ」

 ジョセフィーヌが思いがけず転んでしまった。巨石が彼女を挽きつぶそうとする。

「アラン、斬れ!」

「承知」

 主君の命に。アランがサーベルを抜き、岩を一刀両断にした。岩はぱっかり割れて、坂道の底へ半円になりながら駆けていった。

「また何か妙なものを斬ってしまった……」

「大丈夫かい、ジョセフィーヌ」

 ボナポルトがよろめくジョセフィーヌを立たせてやる。ジョセフィーヌのこころはもう限界を超えていた。

「もー!! 何なのよこの洞窟!! お宝はまだなのお!!?」

「お、おや、あれは」

 ボナポルトの何か気づいたようなつぶやきに、アランもジョセフィーヌも洞窟の奥に目をこらす。

 そこには壁に埋め込まれた扉があった。その隙から明るい光が漏れだしている。光はまさに金色で、神の降り立ったような厳かさを醸し出していた。

「あそこがゴールだ! 行くぞ」

 ボナポルトが叫び、扉をひらく。そこに広がっていたのは。

「わああ……」

 もはや衣服もぼろぼろになった三人は、思わず子どものようにその光景に見入った。扉の向こう側には、驚くべき光景があった。まるでエジプトのピラミッドさながら、金の延棒が天まであろうかという三角形を描くようにたんまりと積まれていた。しかもその三角形は一つではなかった。大きく開けた洞窟を埋め尽くすように、あちこちで金の光を放ち、もはやランプの灯りもいらない程であった。

「あれは」

 金の延棒へよだれを垂らすジョセフィーヌをなおざりに、ボナポルトとアランは奥へ向かった。無数の金のピラミッドの奥、そこには白い十字架を背にした、漆黒の玉座が用意されていた。

「黒の、玉座、か」

 これにボナポルトが目を眇めた。何か妙なものを感じたのであろう。はわわわああと金の延棒に夢中になりすり寄ろうとするジョセフィーヌへと彼は叱声をあげた。

「おいジョセフィーヌ、それに障らん方がいい」

「そうだとも、それは君らのものではないのだからね」

聞き慣れぬ声が響き、ボナポルトもアランも、ジョセフィーヌも背後へと振り返った。

「やあ、諸君。ここまでお導きありがとう。おかげで素晴らしい宝を得ることが出来たようだ」

 そこには先ほどの白髪の総督と、それらに率いられた軍人たちが立っていた。総督の右手には金の短銃があった。

「君たちのおかげで楽にあの迷路もぬけられたよ。礼を言わなくてはならんね」

「あんたたち、ついてきていたのね!!」

 ジョセフィーヌが喚くのに、総督がにまあと口の端をあげる。

「そうとも。道案内ご苦労だったね、美しきジョセフィーヌ嬢」

 その時総督が舌なめずりをしたようだったので、ジョセフィーヌは慌ててボナポルトの側へ寄った。

「まさか、宝を横取りするつもり!? ダメよ、これはあたくしたちが見つけたんだから!」

「横取りとは言葉が悪いなあ、ジョセフィーヌ。わしらはただ脱獄犯を追いかけてここに来たまでの話さ」

 その右手の短銃はいまだボナポルトたちの方角を向いている。ジョセフィーヌはぐぬぬと歯噛みした。

「さあ、その玉座から降りてきたまえ、さすれば命は保証しよう」

「あ、はい」

 総督のこの一言に、眼鏡をかけたボナポルトが思わずうなずく。その眼鏡を、左右からアランとジョセフィーヌが引きちぎった。

「何を馬鹿なことを言ってんだこの腹黒オヤジ。秘密を知ったものを生かす気もないくせに。いいか。神よりの恵みを受けて王になるのはてめーじゃねえ、この俺様だ。そして俺様はこの女を妃とし、アランを重臣として重用し、そしてわが身を王として遇し遇され、生涯栄光に浴するのだ!」

 これに総督はみるみる顔をしかめて。

「何を、至らん下士官の分際で夢物語を」

 と、手をあげ手下の軍人どもに銃の弾詰めの準備をさせた。

「いいか、12で別れるぞ。ジョセフィーヌ、お前は俺についてこい」

「承知!」

「ええ!」

 その言葉が切れる前に、激しい銃弾の音が響きわたった。軍人たちは、広い洞窟の金の間を逃げ惑う三人へ銃口を向け、射撃する。

「金のピラミッドは撃たんようにしろよ」

 金の亡者である総督は、髭を撫でさすりながら悠然としている。

 ボナポルトはジョセフィーヌをかばうように駆けていた。やがて一瞬の隙をぬって金のピラミッドの影へ身をひそめた。銃声は鳴りやまない。

「ジョセフィーヌ、あの抒情詩の続きを、その美しい声でもう一度歌ってくれ」

「こんな時までくどかなくていいわよ」

 そう微笑みながら、ジョセフィーヌは震えた声で抒情詩をなぞり読んだ。

「月光射しこむ教会で、神の恵みは授けられる。ただし邪心欲心を持たば、ただちに神の怒りが降り落ちる」

「欲心、邪心……そうか」

 ボナポルトはそれに得心したようにうなずいて、銃弾の雨が止むのを待った。

 さて、この欲心深い総督は、今、黒の玉座に腰掛けんとしていた。邪魔ものはもうじき排する。さればこの金のピラミッドを我が財力として、神よりの恵みを後ろ盾にして、自分は永遠に栄光に浴しよう。あるいはこのフランセーヌ全土を支配出来うるかもしれない。彼の胸は歓喜にわきたっていた。玉座近くに置かれた金の延棒を抜き取り、その頬にあて撫でる。

「ふふ、これですべてはわしのものだ、わしの……」

 そこで、にわかにつるされていた巨大な十字架が、揺らいだ。

「わしのものだ、誰にも渡さん、わしの……」

そのまま十字架は己を縛っていた壁から解き放たれ、なだれ、ついには総督を地に押しつぶした。

「ぐわっ」

 総督は口から血を溢れさせ死んだ。

「う、うわあああ」

 気が付くと洞窟が激しく揺らいでいた。金の延棒に夢中になっていた軍人たちが慌てふためいては、落石に押しつぶされ次々圧死する。

「まずい、洞窟が崩れるぞ!」

「早く逃げましょう!」

 ボナポルトとアランが、欲心深く金を見つめるジョセフィーヌをかつぐようにして玉座奥、上へと通じる石段を走り抜ける。

「待てー!! よくも総督をー!!」

 後ろから兵士たちに追いかけられながら、三人は石段を登り続ける。

「ああん、ちょっとお! あの大量のお宝どうするのよお!」

「もうお前の惜しみない欲望の発露にはうんざりだ! だが、確かにマスター、黒の玉座はよかったのか」

「いいのだ!」

 そう口々に言い交す二人へ、ボナポルトが前だけを見据え叫ぶ。

「さっきの抒情詩の一文、邪心を持たばというのは、王位より金に目がいく阿呆には王の位などやらんということだ! だから王位を狙いながら金の延棒を引き抜いたあの総督は神よりの怒り、十字架に圧された。きわめつけは最後の一文、おそらく、月光に浴する教会というのは……」

 やがて頂上の穴を抜けると、今度は石段が断崖にうがたれ、海を足下に感じられるようになった。一歩でも踏み外したら瞬く間に海に真っ逆さまである。風にあおられるジョセフィーヌの手をしっかりと握り、ボナポルトは潮に滑る石段を駆け上がっていく。

「こらー!! 待てー!! 」

 そこで追いかけてきた兵士たちとの距離が狭まったので、アランが主人へ向けて声を発した。

「先へお行き下さい! そしてマスターよ、真の宝をっ」

 そのままアランは兵を海へとちぎっては投げちぎっては投げ、乱闘になった。石段は人ひとりがようやっと通れる広さなので、兵士たちも群がって戦う、ということは出来ない。

「頼んだぞ、アラン!!」

 ボナポルトはその様を見てとり、ジョセフィーヌの手を握って石段を登り詰めた。すると、そこには。

「わあ……」

 石段の先は青草香る丘になっており、白い愛らしい花がそこら中に咲きそろっていた。

 そこには古い、屋根のない赤煉瓦の教会があった。海はいつの間にか凪ぎ、はるかかなた空が黒から青く変じている。もうじき夜が明けるのだろう。美しい、ながめであった。兵士たちとの乱闘を終え、同じく石段を登り詰めたアランが遅れて言う。

「ま、まさかよくある、この美しい風景が宝だなんて言うんじゃないでしょうね」

「いや……」

 教会の奥にはステンドグラスの窓があり、そこから射しこむ色合に石畳が七色に染まっていた。そのステンドグラスに架けられた、十字架の影の先端に、五芒星と六芒星を模した石がはめこまれていた。五芒星は既に誰かに踏みつけられ、へこんでいた。ボナポルトはそれに目ざとく目をやり、いまだ石より抜きん出る六芒星を踏みしめた。

 「よく来たな、勇者たちよ」

 十字架から煙のようなものが立ち、その煙が人の形をとったかと思うと、それは純白の羽を怒らせて、世にも美しい天使となった。

「きゃあああ何か来たっ変なの来たっ」

 すごい速さで玉座を滑り降り、ボナポルトへすがりつくジョセフィーヌ。それへ天使がしかめつらを向ける。

「変なのとは失礼であろう。私はこの教会にまつられた古代の天使エルフィーン。よく来たな、邪心なきものよ」

 その、ブロンドを耳のあたりでそよがせる、美しき紫の瞳の天使の一声に、じろじろと男たちは女を見やる。さっきまで玉座ににおい付けしていたジョセフィーヌがむきいいと怒りだす。

「何よその目は! あたくしだって邪心なき者よ! ただ玉座やお宝が好きなだけ!」

「邪心ありまくりじゃないか!」

 と、切れ味悪く男たちが突っ込んだところで、この場の空気を察していた天使が口を挟む。

「あーえーと、いいか? 神よりの恵みは抒情詩のとおり二つある。一つは覇者としての恵み、もう一つは王者としての……」

「玉座っ玉座っ! 王座寄こせっ」

「お前ら本当に邪心ないんだろうな!?」

 天使に向かい、飲んだくれのおっさのごとく欲深いコールを巻き起こした三人へ、エルフィーンが思わず疑問を呈する。

「ごほん、とまあ、二つあるが、そのうちの一つ、覇者の恵みをお前たちにもたらそう。生贄も差し出したことだし……」

「生贄?」

 ジョセフィーヌがきょとんとして首をかしげる。彼女へと察しのいいボナポルトが答える。

「あの悪心てんこもりの総督のことだろう」

「そう、我を呼び出すには哀れな子羊の血と肉が必要……お前たちはそれを捧げた。よってほうびをとらせよう……」

 それまで厳かであった天使は、古びた羊皮紙で出来た古書を広げ、ボナポルトへ、

「ここにサインお願いしまーす。苗字だけで結構でーす」

と急にくだけた調子になった。ボナポルトが流れるような手つきでサインを残す。古書にその名が刻まれる。それからは天使は威儀を再び正して。

「ごほん、よいか。お前たちは我の力を貸してやらんこともない! 願いを言え! 言えば我が叶ええてやろう」

「「「金が欲しいです」」」

「ユニゾンしてるなよ! 本当は?」

「王座が欲しい!」

 ボナポルトがそう高らかに言い放ったとき、ジョセフィーヌも、アランも、にこやかに頷いた。

「大したことを考える奴らだな」

 そうは天使も言いながら、この者たちの瞳の輝きを見れば肯うほかなかった。

「ならばゆけ! フランセーヌへ、玉座はお前のものだ! お前の旅路は、この我が切り開てやろう! さあ、ゆくのだ」

 天使が朝焼けの海を指さした。

出港の時が来たのだ。

 未来のフランセーヌ皇帝ボナポルト、その皇妃ジョセフィーヌ、寵臣アラン。やがて人臣位を極める三人の冒険譚はこのようにして始まったと伝えられる。しかし希望に満ちたこの未来に待ち受けるものは至上の栄華と、悲哀であった。


◆◆

 こののち、ボナポルトは皇帝へあがり、ジョセフィーヌと結婚したが男児に恵まれぬということで離縁を言い渡した。アランは寵臣として、毎日を馬車馬の如く働いたのち、ブリテン帝国との戦で戦死。

ナポレオン・ボナポルトは戦に負け始めたころ合いで遠流された。最後には、「愛するジョセフィーヌ」そう言って死んでいったと伝えられる。


あの夏の日に、二人は出会うことで世界を変えた。

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眼鏡を外せば皇帝陛下! @ichiuuu

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