第7話

 さて、水曜日も特に午前中は変わったことがなく。

 そういえば昨日も橘くんと打ち合わせしてた明日香がなんだかそわそわしてたくらいかな。

 後で何なのか聞いておかなくちゃ。

ということで昼休み、この時間になってもまだ元気の無い明日香に声をかける。

「なんかあったんでしょ、昨日」

 確信に満ちた態度、自分でもどうかと思うけど。

 明日香は明日香で言いにくそうにしてるし。

 さっさと言っちゃいなさいな、大体分かるんだから。

「あの……ね? 昨日橘くんと待ち合わせしてたんだけどね、待ち合わせの時間に遅れるって連絡があって。で、それはいいんだけどね? その後結局来てくれたんだけどすっごく元気なくて……なんか私の顔見て今まで見たことないような辛そうな顔するんだよね……そんなんだからすぐにお開きになっちゃって……あたし何か悪いことしたかなぁ」

 ちょっと泣きそうな顔をしてそんなことを言う。

 明日香は何も悪いことしてないと思うんだけど、この可愛い子にそんな顔をさせるって橘くんは罪な男というか恋って怖いものだなぁ。

 しかし傷付いてるのに待ち合わせは遅れても行くというのは律儀だねー橘くんも。

 見直すわけじゃないけれど。

「もしかして好きな子に振られちゃったとかじゃな……」

 そこまで言いかけて明日香の目に涙が溜まっていることに気付く。

 別にふざけているわけじゃないんだけどね。

「傷付いてるなら聞くべきだと思うけどね。そういう時って話を聞いてくれるだけでも全然違うもの。それは今話してる明日香だって分かるでしょ?」

 話をすれば状況が進む、いささかゲームのような見方すぎるけど、言葉は人間が産んだ最高の道具だから仕方ないのよね。

「ということで今日は生徒会も休んで絶対に副会長を誘って話を聞くこと。でもあたしからそんなアドバイス受けたなんて言ったら女が廃るんから言わないこと。いい?」

 ゆっくりと頷き、彼女はそれっきり黙ってしまう。

 はてさてどうなることやら。

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