第2話 生は苦楽の波の中に
あらゆる植物、あらゆる動物がこのように発達してきたのはなぜだろうか。試しにその辺の雑草の葉っぱをちぎって見てみるとよい。葉脈の複雑さはこれをもし自分が作るとすれば、おそらく不可能と思われるほど複雑である。また、自分の手の平には幾つもの皺があり、手の甲には幾つもの毛が生えている。これら生き物の持つカタチは天によって形作られて来たものだ。
苦楽こそ生物の法則であり原点であるのではないだろうか。楽とは広がることである。身体が、あるいはできることが広がることである。新しいことに挑戦することである。苦とは環境の力によって、身が削られることである。楽によって広がったあらゆる能力、あらゆる習慣、あらゆる形態の無駄が削ぎ落とされ結晶のようになっていく。この苦楽の応酬に沿って、生物は様々な形態と機能を獲得してきた。私達が生きている時、その意思と生活習慣もまた苦楽に晒され、晒されればこそ生の実感を味わうことができる。楽だけならば水のようにすべて流れるだけ。苦だけならばただ固まって石ころのようになっているだけ。生物は水でありながら自分の形を持つものである。楽によって広がり、苦によって尖る。これが生きることの姿ではないだろうか。
幸福の体系 山川一 @masafuro
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