第13話 相合傘のおまじない! ④
私は初めからわかっていた。
外岡愛の能力ではミッションを達成することが不可能であると、わかっていた。
しかし、出番が与えられないのは可哀想だった。
だから外岡愛に仕事を与えた。
唐草史郎を決められたルートに誘導すること。
――彼女が唐草史郎よりも先に居るという状況をつくること。
「ねえ、君子ちゃん。早く愛ちゃんの所にいってあげようよ。絶対悲しんでるよ愛ちゃん。君子ちゃんと私でフォローしてあげようよ。あんなの、あんまりだよ」
私の考えを知らずに。
結菜がいけしゃあしゃあと何かを言っている。
そんなことをしている場合ではない。
私は、現場監督として、このミッションを達成する義務がある。
「グスッ……ヒグッ……」
電柱の傍に、一人の少女が泣きながら座っている。
見るから小柄で、見るからに虚弱そうで、見るからに守ってあげたくなるおかっぱ頭の少女が、膝に顔をうずめながら泣いている。雨の中、傘も差さずに。
彼女の名前は青山(あおやま)郁(いく)美(み)といい。
有する能力は――『雨の中泣きながらうずくまっている自分に何の躊躇もなく無言で傘を差し伸べてきた相手を惚れさせる能力』であり。
今回配属された能力者の中では比較的発動しやすい能力ではあるが。
それでも、何の躊躇もなく傘を差し伸べられるほど素晴らしい人物はそれほど多くはなく、更にそういう人物ほど優しい言葉をかけながら傘を差し伸べるので、これまで陽の目を見なかった能力であった。
――だが。
相手が唐草史郎の場合は、雨が降れば間違いなく発動できる能力である。
何の躊躇もなく唐草史郎は折り畳み傘を無言で差し伸べる。
わかっていた。
こうなることは、わかっていた。
青山郁美が、発動条件を満たしたことを確認する。
能力を、発動する。
青山郁美が思いっきり唐草史郎に抱き付き、無表情ながらも唐草史郎は頬を赤く染めて青山郁美を抱きしめる。
わかっていた。
こうなることは、わかっていた。
唐草史郎が冷酷無比な人物ではなく、信じられないほど優しい人物だとわかったからこそ確信していたミッションの成功。
全ての能力者の出番が終わり、私たちに課せられたミッションは終わりを告げる。
こうして。
唐草史郎は、リア充となった。
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