第2話 脅し?そんなものはありませんよ?
今朝もいつも通り、通い慣れてきた通学路を通って学校へと登校していた。
以前のように襲われている女生徒もいないようだ。
うむ、いいことだ。
だがしかし、そのまま通学できる、とは問屋が卸さないらしい。
俺の異常察知能力が事故を察知した。すぐに時間を止め、瞬間移動でその場所へと向かう。
すると、目の前にはちいさな子供が泣きながらこちらへと向かっていて道路にでてしまった状態で止まっている。後ろから彼女の両親と思しき二人の人物が必死に追いかけてきている姿が見えた。
そこに大きなトラックが走ってきていた。このままでは子供轢かれてしまうだろう。だが、それを両親が許さず、身を守ろうとするかもしれない。どちらにしてもこの家族に良い未来は訪れないだろう。
ということで、ここはこの子を反対向きにして歩道まで移動させてやる。ふぅ、
これで危機は去った。生徒が5人しかいないような学校に行くこともないはずだ。
一度時間停止を解除して、姿を消して様子を見る。小さな女の子も、両親も一体何が起こったか分からないようだが、三人とも抱き合っている。うんうん、良い光景だ。大きなトラックは問題なく過ぎ去っていった。
そしてこの事故はまだ終わりではない。仕組んだ奴がどこかに居るはずだ。俺は再度時間を停止させ、辺りの気配察知を行う。
見つけた!
レッサーデーモン、下位悪魔だ。こいつらは何かにつけて人に不幸を起こそうする。なぜなら、負の感情がこいつらの糧だからだ。そんな奴は生かしておけない。下位悪魔は逃げようとするが、俺は以前と同様に魔力弾を打ち出し、消し去ってやった。俺の魔力弾はホーミング機能がある。逃げ切ろうとしても無駄なだけだ。
これで今日も平和だろう。
自分が元いた場所へと戻る。誰もいない場所を選び、時間を動かしてまた学校へと歩き出す。
誰もが、何か面白い、複雑な日々、刺激を欲する様な出来事を求める時期だろうが、そんなもの実際に会ってみろ?
「ああ、変わりばえの無い日常がこんなに幸福だったのか」
ということを知ることになるぞ。
教室に入ると、声をかけてくる女生徒が居た。
「おはよう、カズくん」
基本ボッチだが、数少ない俺の友人、というか幼馴染の神宮司茉奈だ。ボブカットで八重歯が特徴的な女の子だ。容姿は凄く良いというわけではないが、整っており、誰とでも仲良くなれる性格で、男生徒からも人気がある。
「おはよう、マナ。でも俺に話しかけない方がいいぞ。」
「ええ?どうして?幼馴染じゃない。」
「まったく。お前は周りを気にしなさすぎなんだよな。」
「まぁまぁいいじゃない。それでさぁ、テストあるじゃない?ノートなんだけど…」
茉奈は自分の体を俺の体に摺り寄せてくる。何か頼みごとをしてくる時はいつもこれだ。
はぁ……。この様子をみられるこっちの身にもなってほしい。
「またか……」
「だってカズ君のノートめっちゃ綺麗にまとまってて、色分けまでされてかなりわかりやすいんだもん。」
「わかった、わかったからそうやってくっついてくるな。暑苦しい。それで、どの教科のノートが必要なんだ?」
「ふっふーん。まんざらでもなさそうだけど?そりゃそりゃ。えーと全部?」
俺はこれ以上くっつかれないように茉奈を突き放して必要な教科を確認するが、そんなに嫌がってないことを見破ると、余計に体をこすり付けてくる。
全くけしからんものを二つぶら下げていることも自覚していただきたいね。それに、怨念のような視線が先程から突き刺さってくるからホント辞めて!
「はぁ……、わかった。もう全部コピーして渡すよ。もちろんカラーコピーで」
「やったー。これだからカズ君大好き。」
とどめの一撃がやってきた。勢いよく飛び込んでくるものだから男たちの目をとらえて離さないその双丘が俺の旨に押し当てられて、形が歪み、その感触が制服越しに伝わってくる。
おおう、なんてすばらしい感触なんだ!って堪能してる場合じゃない。
どうやら今のやりとりで完全にターゲッティングされてしまったらしい。俺の後ろを歩く男子生徒が俺のポケットにこっそり紙を差し入れる。
はぁ、まったくついてない……。
「それじゃあ、ノートの件、宜しくね!」
「ああ」
彼女が離れて暖かなぬくもりがなくなり、彼女がニカッと笑って自分の席へと戻っていった。
さて何が書いてあるのやら。まぁ想像ができるけど。
俺は席についてポケットに入っていた紙を取りだし、四つ折りにされていたそれを開いてみる。
「昼休み、屋上にこい」
だから嫌だったんだ。茉奈のことは幼馴染としてもちろん好きだし、何かあれば守ってやるつもりだが、一緒に居ると大体俺がとばっちりを食うのだ。全くこれだからモテる人と関わるのは難しい。俺は普通でいたいというのに。
ということで、俺は先程の茉奈と俺のやり取りを見ている連中で、嫉妬の感情をいただいている奴の記憶を消去することにした。
最強の俺にとって、人がどのような感情を抱いているか感知するなど造作もない。というか全員分かりやすい程こちらをにらんでいるので感知をする必要すらないのかもしれないのだけど。
まぁ念のためだ。
俺は指をパチンとならすと、全員の体の周りの赤や黄色、緑や紫などといった湯気のようなものが見える。これは感情のオーラだ。赤は怒り、緑は安堵、黄色は喜び、紫は妬みや嫉みといった陰湿な感情である。危ないのは赤と、紫の奴らだ。
というか女子にも紫や赤の奴が一人二人いるんだが?これはやっぱり百合的なあれなんでしょうか。うん、ここは深く突っ込まない方が良さそうだな。
俺はもう一度指を鳴らし、赤と紫のやつの記憶を抹消した。するとなんで自分が怒っていたり、嫉妬していたりしたのか分からなくなったのか、辺りを見回している。
うむ、これで今日の学校も問題なく、平穏に過ごせるだろう。
まぁ昔からよくあることだ。問題ない。
俺は特に何事もなく、今日一日を過ごし、また依頼メールを確認して、解決へと向かうのであった。
「あらあら……うふふ」
だが、俺は気づかなかった。今日の様子を観ているモノがいたのだ。
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