2014/9/28 Sun. - 1
日曜の午後。
藍華と乃々と共に、銀路の特訓の成果をゲーセンで確認した帰り道。
陽は傾き、空が茜色に染まる頃。
「近道しようぜ!」
唐突に言うなり藍華が路地に入っていった。
乃々と二人追いかけていくと、
「あれ? こんなところにゲーセンあったっけ?」
「いいえ、なかったはずだけど……」
「うん、あたしも覚えはないねぇ」
夕陽が差し込む路地のどんづまりに、木造の年期の入った建物があった。
古い木造の町工場の居並ぶ時が止まったような景色によく馴染んでいる。
外壁には色あせたポスターが貼られ、中からなにやら電子音が流れてくる。
昭和の雰囲気漂う、レトロな店舗。
黄昏の陽に照らされたオレンジ色の看板には、黒い毛筆のような字体で横書きに、
「『いぇうぃりふ』……いや、『ふりぃうぇい』かな?」
銀路が店名を読み上げる。
なんだか、既視感があった。
吸い寄せられるように、三人で観音開きの扉を潜ると、店内は外観通りのレトロな風情。ピコピコ音と電子のどぎつく鮮やかな光に満たされた空間だ。
「お、銀くん、『怒首領蜂』があるぞ!」
「こっちには『レイディアントシルバーガン』もあるわ」
「せっかくだから、やっていくか」
銀路は、『怒首領蜂』→『レイディアントシルバーガン』の順にプレイするが、
「火蜂……やっぱり倒せないか」
『怒首領蜂』は火蜂でゲームオーバーになり。
「こいつで、集中が切れる……」
『レイディアントシルバーガン』はラストの光の巨人に撃退される。
「ほほ、鍛えたものじゃのぉ」
老成した口調の幼女の声がする。
「え、だ、誰だ?」
「え、な、何……」
藍華が訝しみ、乃々が怯え、
「遊ちゃん」
銀路は、瞬間的に記憶が戻り、闘志も甦った。
「いい目じゃのぉ。ならば、余計なことは抜きにして、さっさと進めるかの」
世界が、変わる。
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