STAGE4
2014/9/22 Mon. - 3
乃々のプレイの後に藍華と銀路もそれぞれのプレイを披露する。
藍華は『怒首領蜂』をプレイして火蜂をワンコインで撃破し、銀路は『デススマイルズ』の全ステージをワンコインでクリアした。
お互いのプレイを見せ合うことで親睦を深めたところで、藍華お勧めの喫茶店でお茶をすることになった。
「なるほど、藍華さんのお勧めだったんですね。銀路君がこんな店を知っているなんておかしいと思ったんです」
「あっはっは、よく解ってるじゃないか、乃々ちゃん」
藍華がお勧めと言って向かった喫茶店は、銀路が乃々を連れて行った喫茶店である。
「入るよ」
酷い言われように少しむすっとしながら、銀路は店の入り口を潜る。
藍華と乃々が並んで後に続いてきた。
銀路が意図せず道化を演じたことも効を奏したのか、乃々が笑えない理由や藍華が笑顔に執着する理由など、踏み込んで話せるほどに打ち解けていた。
銀路は、そこで更に踏み込みたかった。
これから踏み込むのは己の内側だ。
気合いで鬼畜弾幕をねじ伏せる藍華。
厳密なパターン化で鮮やかなプレイを見せる乃々。
今、目の前にいる二人の少女は、自分が及ばないレベルのシューティングゲームの業前を誇っている。この輪の中にあるならば、少しでも彼女らに追いつきたい。
今までなら、ストイックに己の力のみを頼りに努力と根性で試行錯誤しただろう。
だけど、今日。
乃々の輝きに満ちたプレイを見たことでその信条は崩れ去った。
ならば、泥臭くとも前に進める道があるなら進むべきではないか?
それもまた努力と根性で試行錯誤の一環ではないだろうか?
そう思ったのだ。
「あのさ、俺からも、一つ踏み込んだ話をしてもいいかな?」
「ん? どうした、銀くん?」
「別に構わないけど、急に何かしら?」
唐突な銀路の申し出に二人は面喰らったようだが、構わず話し始める。
「俺は、『努力と根性で試行錯誤』をモットーに泥臭くゲームをやってきたんだけどさ。こうして二人を前にして、一人のゲーマーとして憧れと嫉妬を抱いている」
「……ほぉ」
藍華が感心したように息を漏らす。
「俺は攻略サイトとかに頼らず、独力でマニュアルなどの公式情報だけを頼りに攻略するスタイルだけど……それだと、永久に二人には追いつけない、そうも思ってる」
「当然よ。そんなに簡単に追いつかれたら、立場がないわね」
乃々が、バッサリと言う。
「その通りだ。だけど、今日、俺は乃々のプレイを見てしまった。もう、これまでのスタイルは崩れているんだ。だから、誰かのプレイを見ることに、躊躇はない」
そこで頭を下げて、
「だから二人に、俺のゲームの師匠になって欲しい。二人に、少しでも追いつけるように俺を鍛えて欲しいんだ」
頼み込んだ。
これが、銀路が前に進むために思いついた泥臭い手段だった。
「よく言った!」
藍華が豪快に笑いながら、とても嬉しそうに銀路の背をバシバシ叩いてくる。
「そうだ。そうだよ、銀くん。変なこだわりで自縄自縛する必要なんてない。時には教えを請うことも必要だって、ずっと思ってたんだ。頼ってくれてお姉ちゃんは嬉しいよ」
と、わざとらしく涙を拭うような仕草。
「そうね。人づきあいをしてこなかった、ぶっちゃけコミュ障のわたしが言うのもなんだけど……悪くないわ。頼ってもらえるのは」
そして、あの笑顔の兆候を見せながら、
「でも、厳しいわよ、覚悟しておきなさい」
と、乃々。
かくして、乃々と藍華に少しでも追いつくため、銀路は二人に教えを請うことしたのだった。
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