2014/9/22 Mon. - 3
「……これが、『笑わない魔女』の、誕生秘話よ」
淡々と、淡々と、表情もなく語り、そう、乃々は締めた。
銀路は、すっかり温くなったコーヒーで口を湿らせる。乃々も、ミルクと砂糖がたっぷり入ったコーヒーを一口啜った。
彼女が語っている間、銀路は何も言えなかった。今も何を言っていいか解らない。
これはきっと、最終的には乃々自身が乗り越えないといけない問題だから、解ったようなことを言うのは何か違うだろう。
だけど裏腹に、銀路を気遣ってフェアな友達であろうと語ってくれたのだから、この話を受け取ったことを乃々にきちんと伝えるべきだとも思った。
「ありがとう、その、話しにくいことを話してくれて。事情は理解したよ。それに、なんというか、これで本当に友達と認めてくれたようで、嬉しいよ。俺に何かできるような力はないけど、少なくとも、笑顔になれないことで、俺に負い目を感じたりしなくていい。俺は、たとえ笑顔を見せてくれなくても、真城も楽しんでくれてるって、これで信じることができるから」
あんまり上手くまとまっていないけれど、とにかく、思ったままを言葉にする。
「こちらこそ、ありがとう。つまらない話を聞いて、解ってくれて……」
寂しいような哀しいような強ばったような、あの表情で、乃々。
「でも、この話には、今へ至るまでの続きがあるの」
そう言って、俺を見る。
「もう少し、お話を聞いてもらっても、いいかしら?」
「勿論」
控えめに口にした乃々の言葉に、銀路は即答した。
再び、乃々は語る。
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