2014/9/20 Sat.

 土曜日の午後。


「やっぱり来ないか……」


 いつものゲームセンターへと、未練がましく銀路は訪れていた。


 『レイディアントシルバーガン』をプレイする者の姿はなく、ただ、デモとタイトル画面を延々ループするのを眺めていた。


 寂しいが、仕方ない。


 ギャルゲー的な考え方でいけばヒロインからご丁寧にフラグブレイクを宣告されるなどというのは完膚なきまでに攻略失敗ということになる。


 往年のアドベンチャーゲームならデッドエンド必至。

 そんな致命的な選択肢のミス。


 彼女なら、よき理解者となってくれると思ったのに。

 一緒にゲームをして楽しめただろうに。


 後悔の念に駆られるが、ゲームセンターの魔女への銀路の想いは、未だその枠を出てはいなかった。


 だからこそ、銀路の心に去来するのは火蜂を倒し損ねたような気分。


 今の自分には無理だった。

 鍛錬が足りなかった。

 戦略と戦術の構築が甘かった。


 合理的な理屈で受け入れる、それだけだ。


「まぁ、いいじゃないか」


 銀路の気持ちを察したように、ことさらに軽く藍華が言う。


「あたしがいるよ。銀くんの理解者なら、な」


 そう言って、銀縁眼鏡の奥で不器用なウィンク。


 魔女とはお近づきになれなかったが、それは己の未熟ゆえ。

 致し方ない結果だ。


 それは銀路の人生というゲームにおける試行錯誤の一つにすぎない。


 新たな理解者を得るチャンスはいずれあるだろう。

 そのときに、この経験を活かせばよい。


 それまでは、


「じゃ、火蜂と戯れようぜ!」


 ほとんど身内だが、これだけ自分のことを理解してくれる人間が存在するのだ。


 昨日、彼女の魅力と、その存在の大きさを再確認した。

 この、豪快でありながら可憐さも内包した幼なじみのお姉さんと共に過ごすのは、それで十分贅沢で幸せなことなのだ。


 銀路は、ようやくそのことを自覚した。

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