2014/9/14 Sun. - 2

 ゲーセンから帰った後。


「居場所が解っていれば、ゲームなら簡単なのにな」


 テンパって声をかけられなかった不甲斐なさを誤魔化すように、あわよくば何かヒントが得られればという期待も若干籠めつつ、銀路はプレイステーションのコントローラを握っていた。


 画面に映し出されているのは、校舎や街の簡易マップと、そこに重なるデフォルメされたキャラクター。


 かつて山手線をジャックするという派手な宣伝を行ったことでも知られるプレイステーション版『 To Heart 』。大ヒットしたアクアプラスの名作ビジュアルノベルゲーム。


 要するにギャルゲーである。


 おまけゲームの『お嬢様は魔女』がガチの横スクロールシューティングゲームだったのでそちらはやりこんでいたが、本編をプレイするのは久しぶりだった。


 現在攻略しているのは件のおまけゲームの主人公、オカルト研究部所属の来栖川くるすがわ芹香せりかお嬢様。魔女ルックに身を包んだりするオカルトに傾倒したキャラで、魔女繋がりだ。


 このゲームは、移動時にマップ上にデフォルメキャラで居場所が表示されているので、お目当てのキャラを選び続けていれば大概はクリアできる比較的簡単なシステムとなっている。


 だから、あっという間にエンディングまで辿りつくことができた。


「まぁ、現実はゲームみたいにはいかないのは痛感したけど、会わなきゃ何もイベントが起きようもないしな……」


 今日のような爆死であっても、ゲームセンターへ通うのを辞めない。

 小さな覚悟を新たにする程度の成果は得ることができた。


「さて、気持を切り替えて『レイディアントシルバーガン』に挑むか」


 プレイステーションと『 To Heart 』をゲーム庫へ戻し、セガサターンと『レイディアントシルバーガン』を持ち出す。


「赤でいいはずだよなぁ」


 昨日のメモを見ながら、赤い敵だけを狙い撃ちにするルートを選ぶ。


「うん、大分、掴めてきた」


 努力と根性で試行錯誤。


 その性分はゲームセンターの魔女に近づくことには芳しい成果を上げていないが、こういうパターン性の強いゲームでは活きる。


 反復練習により、最初のステージの最後の五体目のボスまでは五分五分で到達できる程度まで上達していた。


「まだまだクリアは遠いけど……少なくともこれで、ここまでは見ても大丈夫だ」


 『レイディアントシルバーガン』の腕を磨いて、その上でゲーセンへ通い続ける。

 先へ進めばそれだけ、魔女のプレイを覗き見できる時間が長くなる。


 今の銀路が思いついた戦略と戦術はそんなところだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る