2014/9/15 Mon. - 1
翌日の朝。
「おはよう」
自席で一限の準備をしているところにかかった挨拶。
「ああ、おはよう……って、え?」
反射的に答えてから、銀路は驚きに固まっていた。
左隣の席を見れば、前髪で目元が隠れた陰気なクラスメートの姿。
『笑わない魔女』がじっとこちらを見ていた。
魔女繋がりながらゲームセンターの魔女とは大違いだな、と思いながら銀路が怪訝な顔で見返していると、乃々が口を開いた。
「そんなに奇妙かしら? わたしも気が向けば挨拶ぐらいするわよ」
「あ、あぁ……でも、どうして?」
急に気が向いた理由が解らず、首を傾げる。
そんな銀路を見つめながら、乃々は口元を顰める。あの見ていて余り愉快ではない表情だ。
「なるほど……そういうことね。うん、やっぱりあなた、おかしいわ」
勝手に納得して頷くと、視線を外して鞄から教科書を取り出し始める。
いつもならそれで終わりにするところだが、藍華に乃々の様子を見るように言われていたのもある。少し食い下がって乃々と話してみようかと思ったのだが、
「おっす! って、え? 今、真城と何か話してたのか?」
と右隣の名取が登校してきて、興味深そうに聞いてくる。
「い、いや、別に……」
「ん? まぁ、そっか。真城と会話なんて成立せんわな」
何となく乃々と会話しているのを誰かに知られるのが気まずくて適当に言葉を濁したのだが、名取は勝手に納得してくれる。それぐらいに思われているのが『笑わない魔女』なのである。
結局、それ以降に乃々が話しかけてくることはなく、銀路から話しかける機会もなく、彼女の意図は闇の中だった。
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