2014/9/13 Sat. - 3
夕飯も風呂も済ませた後、財部家のリビングのブラウン管テレビには、またしてもセガサターンが接続されていた。
その傍らにあるのは、茜色の空の中を二機の独特なシルエットの戦闘機が斜め上に向かって飛ぶイラストが入ったパッケージ。
今ではプレミア価格で一万円は下らない『レイディアントシルバーガン』だ。幸い、両親は発売当時に購入していたので通常価格で入手したものらしい。
あの少女に近づくと決めた。
今、彼女との確実な接点は『レイディアントシルバーガン』しかない。
なら、このゲームをやってみるしかないという論理だ。
「複雑、だなぁ」
マニュアルを熟読しながら、思わず声が漏れた。
シューティングゲームの基本は撃って避ける。
例外もそこそこあるが、大概は二つのボタンでショットと特殊攻撃程度のシンプルな操作だ。
一方、このゲームでは七種類+一種類もの攻撃方法が用意されている。
三つのボタンの順列組み合わせでA、B、C、A+B、A+C、B+C、A+B+Cがそれぞれの攻撃に対応している。
また、A+B+Cの攻撃で敵弾を吸収してゲージを溜めると、A+B+Cの攻撃が緊急回避のボム代わりの特殊攻撃に切り替わる。
「時間がかかるな、これは」
ボタンと攻撃の対応を覚えるだけで一苦労だ。
その上、パワーアップも厄介だった。
アイテムでパワーアップという一般的なシステムではない。A、B、Cそれぞれの攻撃で倒した敵から得たスコアによって攻撃力が増していく。スコアを経験値に見立てたRPG的な武器成長システムだ。
よって、ただ撃って避けるのではなく、着実にスコアを稼いでいかないと先のステージの敵が相対的に強くなり、難易度が跳ね上がることになる。
更には、赤、青、黄に色分けされた敵を同じ色だけ連続で倒し続けることでスコアがアップするチェーンボーナスシステムが採用されている。
そのため、出てくる敵を片っ端から倒していても稼げない。成長のための高いスコアを目指すなら、特定の色の敵だけを狙い撃ってそれ以外の色の敵は倒さずスルーするというパターンの構築が不可欠となってくるのだ。
「これは、歯ごたえがありそうだ」
攻略に伴うであろう苦労を想像して、銀路の口元は綻んでいた。
なんてやりがいがあるんだ! 熱い!
ゲームセンターの魔女に近づくためというのでは動機が不純かもしれないが、それだけでなく、十分に立ち向かうに相応しいゲームだ。
今まで手を出すのを控えていたが、この機会にプレイを開始するのも一興。
サターンモードとアーケードモードがあるが、ゲームセンターの魔女を意識してなので、迷わずアーケードモードを選択。
表情を引き締めてプレイスタート。
簡単なチュートリアルを経て、本編開始。
「手強すぎる……」
その日、大量のルーズリーフを消費して敵の出現パターンをメモしながら進めたが、結局五つのエリアで構成される最初のステージの二つ目のエリアがクリアできずに終わってしまった。
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