魂喰らいは少女と出逢う
「オリヴィアっ!?」
ルーが眠っている部屋から飛び出してきた少女を青年が抱きとめた。
「フェイ、さん?」
何度か瞬きを繰り返して、オリヴィアは己を守る様に抱いた魔術師の顔を見上げた。
久しぶりに会ったフェイは何時もと変わらず、しかし悔しそうに顔をゆがめていた。
「ルーはっ?」
その様子と声で、オリヴィアはすぐに彼は何が起こっているのか知っているのだと悟る。
その後ろにはヴェントスやルチル、フェルネス、エイジ達が慌てた様子で駆けこんできたところだった。ルチルが大きな傷を負ったかのようにつらそうな顔をしていた。
「オリヴィア、無事か?」
「は、い……」
ヴェントスの声に頷くと、何かの切り裂かれる音を聞いて前を向く。
仕切りを作っていた布が切り裂かれ、少年が姿を現す。
持っていた短剣が近くに置いてあったルーの剣に代わっている。そして、こちらの様子を見て顔色一つ変えずに襲いかかって来た。数がどれだけ増えようと、彼には関係なかったらしい。
見なれた少年の様子に数人が顔をゆがめてどうすればいいのかとヴェントスとフェイを見た。しかし、すぐに彼を止めるために行動を開始する。
魔術師であるフェイの前に躍り出たサイカとヴェントスが問答無用で剣を振るうルーを迎え撃つ。
このテントにはけが人や戦えない医術師がいる。オリヴィアはフェイの袖を引いて視線で訴えると、すぐに気づいて外へと向かう。
それに気付いたルーがすぐにその後を追った。サイカもヴェントスも眼中にないらしい。
しかし、二人はルーの行く先を遮って逃げるオリヴィア達の時間を稼ぐ。
外に出たオリヴィアはフェイに導かれて建物の影に潜んだ。
そこにフェイは陣を書きはじめる。
「フェイ?」
「少しの間ここで身を隠す。どうやら狙いはオリヴィアのみのようだからな」
「でもっ」
「オリヴィア、少し休もう。酷い顔をしている。いつも心に余裕を持つように言っているだろう」
印を結び魔力を通すと薄い膜が陣を囲むように広がり中と外を隔絶した。
簡易だがちょっとやそっとでは気付かれない姿隠し用の結界が短時間で創られていた。
その精度も魔力も簡易とは思えない。その姿だけではなく、存在感、音、息遣いまで隠してしまうだろう。
「ここなら誰も見ていない」
「……」
はっとしたオリヴィアはフェイに今度は自分から、抱きついた。
「フェ、フェイ、何を知ってるの? ルーは、どうなっちゃたの? ……ルーは、いき、生きてるよね?」
よく知っているフェイの言葉に今まで、必死に押さえていた感情を言葉にして吐き出していた。
震える声、震える肩、まだ幼い少女の肩をフェイはしっかりと抱きとめる。
初めて出逢った時の背は腰にも届かなかったというのにいつの間にか成長した。いまさらそんな事を思いながら自らの子どもをあやすように頭を撫でつけた。
オリヴィアとフェイはオリヴィアがルーと出逢う前からの知り合いで、フェイにとっては親戚の子どもの様なあい手で、オリヴィアにとっては父親のような存在だった。
「なにがあったのか、教えてくれるか?」
「……は、はい」
震えながら、オリヴィアは先ほどの事を少しずつ話し始める。
ほんの数分前の事、それもほんの少しの出来事だ。だが、それを語り終えた時には魔力を使いきってしまった様な疲労感に苛まされていた。
「そう……」
「ルーは、どこに、いるんですか?」
真っ赤になった瞳でオリヴィアはフェイを見上げた。
潤んだ瞳は不安に揺れている。
幼馴染の少年の中身が、まったく違う人物に代わってしまった。なんて現実を認めたくなかった。ありえない。それに、きっとルーはどこかにいる。そう思いたかった。
そんな彼女に告げなくてはならないことを考え、フェイは唇を噛んだ。言いたくはないが、言わなければならない。いつかは知るのだから、今のうちに告げておいた方がいい。
「もう、いない。……おそらく、今ルーの身体を操っている者が殺した。もう、ルーは帰ってこない」
あれはもう、誰とも知れない魂喰らいの化物だ。
崩れ落ちた少女を支えながら、フェイはさきほどの少年を思い出していた。
「……ルー」
フェイがオリヴィアを避難させたのを見送ったルチルは、テントから出てきた少年に目を向けた。
つい先日まで、一緒に戦ったことのある少年だ。あの時は共に魔獣と戦った。しかし、今は敵同士。
先ほど、ヴェントス達との会議中にフェイは現れるとあの工房で起こったことを話した。ルーが巻き込まれたのであろう実験の話も聞いた。
半信半疑ながらもルーのいるテントにやってきたが、まさか既に目覚めてオリヴィアを襲っていたとは思っていなかった。
認めるしかないだろう。
「ルーは、殺され、目の前に居るのは……」
ルーではないなにか。決してこちらに友好的な者ではない。
ルチルがちらりとラドクリファのいるテントを見ていた。眠っていたヒスイはラドクリファに頼んでいた。
責任感の強いラドクリファなら守ってくれるだろう。そう思いつつも心配でつい見てしまう。
そんな様子を見ていたルーの姿をした誰かは、興味なさそうに走り過ぎようとした。
彼の目的は本当にオリヴィア一人っきりなのだ。
それを止めるために、ルチルは魔術を放った。光の礫がルーを襲う。
簡単な魔術だが、それも数があればかなりの威力となる。
休みなく幾十、幾百もの光の礫がルーに向かった。
事前にフェイから手加減をしないよう言われていたが、それでも少しだけ威力を下げてしまう。彼は、見た目だけならば本当にルーであり、もしかしたらルーの意識が戻るのではないのか。そんな希望にすがりたく、そんな理由で仲間だった彼を全力で攻撃できずにいた。
それでも、幾百もの魔術だ。
しかし――視界を遮る光が消えた時、彼は平然と立っていた。
黒い影の様な、鈍く光る物が、彼の周囲を漂う。
液体状であり、常に形を変えながら、まるで守る様に、衣の様にあった。
無言でルチルを見る少年は、何を思ったのか身を翻すと森のある方角へと向かう。
「逃がすな!!」
隠れていたはずのフェイがどこからともなく姿を現すとそれを見て叫んだ。
テントから遅れて出てきたヴェントスとサイカがそれを追う。その後を、さらにハーディストが弓を片手に追いかける。
フェイが動かないのを見、ルチルもまた、その後を追った。
とても、暗い場所から目覚めると、そこには見知らずの/よく知った少女がいた。
目じりに涙を溜めて、歓びに笑顔を見せる少女に、もしも『彼』ならば言うであろう言葉を告げた。
「あれ? オリヴィア、呼んだ?」
流れ込んできた記憶の中にある、彼女の幼馴染の少年の言葉を。
聖女オリヴィアの暗殺の失敗。
現在の状況に少年はなにも考えていなかった。
聖女オリヴィアを殺すこと、それだけが彼に与えられた役割だったから。
それが失敗した。
彼女はなぜかこちらが違う事に気づいていた。そして、彼女を助けに来た他の者たちもまた、知っていた。
――記憶によれば、フェイ、ヴェントス、サイカ……記憶の持ち主の、よく知った相手。
その動きもなにもかも、ある程度わかる。が、彼等を倒し、オリヴィアを殺す事は出来ないだろう。
なぜなら、彼にはこの身体の持ち主の記憶しかないから。
そう、彼には記憶がないのだ。目覚めるまで何をしていたのかわからず、わかるのはオリヴィアを殺さなければならないという誰かからの命令を受けたということだけ。
彼は密集して立てられていたテントから離れ、森の中へ隠れようとした。オリヴィアの暗殺以外はなにも命令されていないからだ。失敗した時の事は解らない。だから、勝手に逃げることにした。
しかし、森に入ろうとした直前、すぐそばの木々が燃え、炎が石を持ったように揺らめくと彼の行く手を阻んだ。
「貴様、何者だ」
年季の入った鋭い視線。重く低く響く声。ヴェントスが、問いかけて来る。
振り返れば、先ほどの者たちが各々武器を構え、こちらを仇でも視る様に睨んでいた。
そこにオリヴィアもフェイもいない。
「答えろ」
剣を突きつけるヴェントスは、烈火のごとく問いかける。
「なに、もの……?」
何者、なのだろう。
そうだ、自分は何者なのだろう。
呆然と目の前の人々を見る。
彼等は、敵だ。
殺さなければ。
でもその前に、オリヴィアを殺さないと/オリヴィアだけはまもら……。
「答えないのならば、仕方あるまい」
ヴェントスの言葉が終わる前に、魔力を纏った矢が急所を狙って放たれた。
慌てて避けるが間に合わず、それでも急所だけは庇う。
見れば、影でこそこそとフェルネスが新たな弓を準備している。さらに、それを好機だとばかりにエイジが剣を抜いて向かって来た。
このままでは面倒だ。左手に刺さった矢を無理やり抜くと、炎の中へと走る。
「あっ」
まさか、魔術の炎の中に入っていくなど思っていなかったのだろう。ルチルが驚きに声を上げるがヴェントスは冷静にそれを追いかけてくる。
これから、どうすればいいのだろう。
森の中へと入ったはいいが、すぐに追いつかれるといつのまにか囲まれていた。
逃げ場所が無い。
逃げても、どこにいけばいいのだろう。
そもそも、にげて、いきて、どうなるというのだろう。
「……ルーの為にも、お前は殺す」
ヴェントスが、そう告げた。
「ルーの、ため?」
オリヴィアはどうして気付いたのだろう。そう、再び心の中で呟く。今はそんな事を考えている場合ではないと言うのに。
ヴェントスが問答無用で振るってきた剣は重く、持っていた剣を吹き飛ばされそうになる。
きちんと、記憶通りに動いたのに。誰にもわからないようにと細心の注意を払ってルーのふりをしていたのに。
さらに、エイジが後ろか隙をついて斬りかかってくるが、身をひねって避けた。
服が裂かれ、血が飛び散る。
オリヴィアに気付かれなければ、あのまま手を伸ばして喉をかっきれたはずなのに。
だが、そんなことどうでもいい。
ただ『オリヴィア』を殺せなかった。それだけが事実だ。
自分の存在理由が、もうない。今、『オリヴィア』を殺すと言う命令のみしか与えられていない。
次は、何をするのだろう。
命令は下されてない。
しかし、それにしても……。
目の前の人を見る。
フェルネスの矢を黒い衣が弾き飛ばすが、隙をついて放たれる魔術が容赦なく肢体を傷つける。
この身体の持ち主の記憶を持っているゆえに、彼らの名前もなにもかも分かる。
彼等は、自分を殺すと言っている。
自分は魔術も体術も知らない。現在この身体の持ち主の記憶だけで戦っているようなものでは、決して勝てないだろう。影の様な物を操れると言っても別に意識をしている訳でもないし、傷が若干勝手に治っているようだがそれにも限度はある。
おそらく、殺される。
ーーようやく、死ねる。
「ようやく?」
ふと、自分の考えに疑問を持つ。
ようやくと言う事は長い間待っていたはずだ。しかし、そんなに思いつめるほど死にたいと願っていたかと首をかしげる。
そんな過去の記憶はない。いや、そもそもなにもない。
どうしてここにいるのかも、なぜ『オリヴィア』を殺さなければならないのかも、わからない。
立ち止まった少年にヴェントス達は何があったのかと警戒するが何も無いと気づくとすぐに攻撃を再開する。
ルーのくせや弱点をよく知った者達の攻撃は容赦なく身体を傷つける。
「わたしは、どうして」
どうして、たたかうのだろう。
数人の大人が少年を追い詰めるという一方的な戦いとなっていた。
魂喰らいは、ルーと同じ技術しかもっていなかったからだ。
人間とは思えない様な動きはする様になった。身体能力が以前とは比べ物にならないほどになっている。気付けば、最初の頃の傷が癒えている。
しかし、それでも彼は勝つことは出来ない。
「……素人」
フェルネスが小さく呟いた。
魂喰らいはおそらく今まで戦いをしたことが無い。ルーの記憶だけを使って戦っているのだ。
だから、ルーをよく知っているルチル達には、勝てない。勝てるほど強くない。
オリヴィアに気付かれなければ暗殺を成功したかもしれない。しかし、ルーではないとばれ失敗した彼には、もう勝機が無い。
「かわいそうに……」
彼は、本当にオリヴィアを殺す為だけに送りこまれたような存在だった。
それ以外の戦いなど、想定していない。
これでは、使い捨てだ。
「せめて……」
これ以上、苦しませて殺すのは忍びない。ましてや、相手は知った相手の姿なのだ。
せめて、これ以上苦しむことなく、殺す。
フェイはルーはもう絶対に助からないと言っていた。ならば……。
古の力ある言葉を紡ぐ。
ルチルの周囲に炎が、いや光が、集まる。先ほどまで使っていた簡易な魔術ではない。
詠唱を行った本来の魔術。
人と同じ大きさまで巨大になった光の弾が頭上を幾つも飛び交い、目標を定めようとする。
傍にあった木々の葉がそれに少しでも触れると、真っ黒に焦げて灰となった。
「お、おい、ルチルさん? ちょっとそれは」
やりすぎじゃ……。
魂喰らいから一旦離れたエイジがこちらの様子に気づくと顔を青くしてそれを見た。
彼がそれに気付いたのは、逃げられないほど魔術が完成してしまった時だった。
事前に打ち合わされていたかのようにヴェントス達が退いていくが、彼はすぐに逃げられなかった。
幾つもの周囲を照らす光。話に聞く隕石を模した魔術。
それが、一斉に彼の元へと放たれた。
避ける。とにかく避ける。
ひたすら魔術を目で追い、避けようとする。
しかし、木々をなぎ倒し、地面を破砕させる隕石はやっかいこのうえなく彼の逃げ場を奪い、追い詰めていった。ひび割れた地面に足を取られ、避けるのが遅れる。
直撃した光の弾が少年の右腕を吹き飛ばした。
血が、周囲に飛び散るが、痛みは感じないように逃げていく。
そんななかで、
「かあさまー?」
小さな、声が響いた。
ヴェントス達の元へ聞こえない。魔術による破壊音で声が、ましてや少女の小さな声など聞こえなかったのだ。
ひょこりと姿を見せたのはラドの下で寝ていたはずのヒスイだった。
樹の蔭からルチルの姿が見え、それに喜んで走っていく。
「おかあさま!!」
しかし、そのすぐそばを狙い損なった魔術の光の弾が落ちた。
落ちた衝撃で起きた風が少女の身体を容赦なく打ち付けると、ヒスイは簡単に転んでしまう。
「きゃあ」
すりむいた膝から血がにじむのを見て、ヒスイは涙を溜めた。
近くでは、知っている人達が恐い顔で戦っている。その相手は、ヒスイも知っている少年だ。
オリヴィアと仲の良かった人。よくヒスイのことを困ったように見ていた人。それが少しだけ恐くて、近寄れなかった人だ。
どうしたのだろうとよく視る。
「あれ?」
首を傾げて少年を見つめた。
「ルーおにいちゃんじゃ、ない?」
涙目でたちあがった少女は、少年の元へといこうとした。
よく、少年を見るために。
「ヒ、ヒスイっ?!」
そこに、大好きな母親の声が響く。
なぜ、ここに娘がいるのか。しかも、ルーからそう離れていない場所に居る。
慌てて魔術を中断しようとするが間にあわない。
「ヒスイっ、逃げて!!」
「ふぇ……?」
少女が見たのは、落ちて来る隕石だった。
ばらばらと降り注ぐ光が、少女の周囲にもおちていく。
「きゃあっ」
どうにか避けるが、その間にも幾つもの光が少女の近くに落ちる。
爆風。飛び散った石。なぎ倒された木々。ヒスイを容赦なく襲っていく。
さらに、ルーが突然乱入して来た幼い少女の存在に気づいて、視線を向けた。
ルチルから言葉にできない悲鳴が迸った。
「かあさま、たすけてっ! かあさまっ!!」
この現象が母親によって放たれた魔術だとしらない少女は、ただ逃げまどいながら母の元へと向かおうとした。
しかし、子どもの足ではあまりにも遠すぎる。
ヴェントスがヒスイを助けるためにそこへと向かうが、無秩序に落ちていく隕石は、その道さえも遮る。
娘へと走ろうとするルチルを、エイジが必死に止めていた。
この魔術は、隕石のような光の弾を作るもの。放つ場所を大体決めて作りだし、あとは勝手に放たれる。作られた後、魔術師はなにもできないのだ。すでにきまった場所へと勝手に飛んでいく。殲滅戦などでもちいられる、魔術だ。
ヒスイは傍にあったくぼみに、躓き、倒れる。
「ヒスイっ!!」
ルチルが悲鳴を上げた。
「かあさまっ!!」
そこに、幼い子どもには大きすぎる隕石が迫っていた。
「うそ、だろ……」
エイジは、ボロボロになった林だった場所を見ていた。
あたりは土煙や燃えている煙で見えない。
あれから少しして、ようやく魔術の発動が終わった。ヒスイは、生きているのかわからない。
呆然と、ルチルは自らの魔術の結果を見ていた。まさか、ヒスイが来るなんて誰も思わなかった。ただ、ルーを殺した彼を、殺すために、はなった魔術だった。それなのに。
「ヒスイ……」
ふらふらとヒスイがいたはずの場所へ向かおうとする。が、エイジがそれを止めた。
まだ、魂喰らいが生きているかもしれない。
その場へ向かっていたヴェントスが、どうにかそこへ辿り着くと、そこには黒い影のような半球があった。
「……これは」
影は、少しずつ解けて、液体の様に地面に落ちて、消えていく。
その下には、傷だらけの少年と、それに庇われた幼い少女がいた。
守る様に少女を抱きかかえ、ルーは地面に倒れている。
無事だったのかと言う安堵と、どうして魂喰らいがヒスイを守ったのかと言う疑問。ヴェントスは、とにかくヒスイの無事を確保するために近づいた。
「ヴェントスの、おじちゃん……?」
ヒスイが、大した怪我もないようで少年に庇われたままこちらを見る。
「大丈夫か? こっちに、これるか?」
頷くと、少年の腕から抜けて立ちあがる。が、ヴェントスの元へは行かなかった。
「どうしよう。ルーおにいちゃんが、ヒスイのせいで」
ぼろぼろと大粒の涙を流しながら倒れたままの少年の横に膝をつく。
魂喰らいは意識を失っている。
「……それに、ルーおにいちゃんが、ルーおにいちゃんじゃないみたいだった」
「っ?!」
「どうしよう。また、ヒスイのせいでみんな」
ぐすぐすと泣きながら、ヒスイはルーの手をとる。
ヴェントスによって切られた傷を見つけて、淡い光を灯した手を当てた。
まだ、未熟な治癒術。小さな擦り傷ぐらいなら治せるかもしれないが、この現状ではなにもできないだろうそれで、必死に庇ってくれた少年を癒そうとしていた。
「……ヒスイ、おいで。あとは、お母さんやオリヴィアがルーを助けてくれる」
「ほんと? ルーおにいちゃん、しなない?」
「ああ」
それでも離れない少女に、どう話すかまよいながら、ヴェントスは深く息をついた。
ヒスイを助けたのは、魂喰らいだったのか、それとも……。
「ヒスイを守ったのは、ルーなのか?」
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