第6話 脆く繊細な……
*残酷描写有り。ご注意下さい
「今日の調子はどうですか〜?」
指や手、肘、肩、膝、足首……全身の関節を動かしながら少女の鼻歌が聞こえる。
その口調と裏腹に何かを見定めるように自分の体の動きを確認しているその目が左手の中指で止まる。
「ここ……」
他の指に比べ第二関節がほんの少し動きが鈍い、と言うより何か引っかかっているようなそんな気もする。
しかしそれはあくまで『気がする』程度で普通の生活に影響が出る程では到底ない。
「んー……」
暫く曲げたり引っ張ったりしながら様子を見ていたが一向に良くならない指に苛立ってきたのかその動きはどんどん激しくなりとうとうその指は取れてしまった。
手羽先の関節を折るように何の躊躇もなく行われたその行為で、彼女は指を一本失った。大抵の人間、そもそも自ら指を折り引きちぎるなんて事をする人間はいないだろうが、まあ、何かで自分の体が欠損したら、その瞬間に意識があったら悲鳴をあげ泣き叫ぶだろう。
しかし、目の前で悪趣味な噴水のように吹き上がる赤い体液を顔に浴びながら少女は悲鳴どころか苦痛に顔を歪めてすらいない。それどころか面白いものを見つけたかのように目を輝かせ近くにあった楊枝で元々指がついていただろう関節の周囲を突き弄っている。
「さっきので取ーれーたーかーなー?ここもう何回もなんだよね。しつこいのは女の子に嫌われるんだぞー」
ひとしきり弄り満足したのか、取れたのが確認できたからなのか、大きく息を一つつくと妙に慣れた手つきでガーゼを当て輪ゴムで止血をする。
パズルのピースをはめるように指を戻そうとするのだがもちろん戻らない。指はそんな構造をしていないのだ。
「あれ?もう壊れちゃった?」
軟骨の代わりにか不思議な色の粘土を当て、ちゃんと動くようにと神経を結び直し、 周囲に先程と違う粘土を巻きを巻き皮で覆う。最後に解けなないように針と糸で何十周も縫い合わせる。
それでも元あった様には戻らない。
「なーんだ。ツマンナイ」
そう言うや否や歪に繋ぎ合わされていた指がごりっと嫌な音を立てて切り落とされた。
少女の右手には大きな肉切り包丁。その歯はぬらぬらと赤黒く艶めいている。
「今回のは案外持たなかったなぁ〜やっぱり大人のはまだ早いのかなぁ……」
そう言いながら開かれた冷蔵庫には瓶詰めのパーツやさっき使っていた粘土や皮が入っている。
「あ〜さっきので最後だったんだ。獲って来ないと……あ、ついでに服ももらおっと。じゃあ可愛い子がいいなぁ。この間本で見たお人形みたいなの」
楽しそうに一人ごとを言いながら着替える少女の肌はパッチワークでもしているかの様にツギハギだらけだった。
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【那月】
「あれ?もう壊れちゃった?なーんだ、ツマンナイ」
この台詞で素敵な作品を より
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