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【-10年前-】
第一都市シルフの郊外に向かって走る人影が一つあった。
美しい短い白銀の髪は陽の光を浴びて煌めいている。
-はぁ、、、はぁ、、、
彼、アシュレイ・ウェルズは郊外にある木造の家へ辿り着くと勢いよく扉を開けた。
「ローナ!産まれたと報せを聞いて飛んで帰って来たぞ!」
扉を開けるなりアシュレイは大きな声でローナに呼びかけながらドスドスと寝室のある二階へと上がっていく。
「貴方。大きな声を出すとエルロイドが起きてしまいますわ。」
アシュレイと酷似した白銀の、しかし腰まで伸びた艶のある髪が特徴的な女性が柔らかな声でアシュレイを嗜める。
「それはすまなかった。しかし、一刻も早く顔が見たくて遠征が終わり次第飛んで戻ってきたんだぞ」
アシュレイはバツの悪そうな顔でそう告げる。
この第一都市には領主に仕える騎士団が駐屯しており、第一騎士団、第二騎士団、第三騎士団、第四騎士団がある。
第一騎士団は騎士団の精鋭達が集まり、主に都市中心にある城の警備や戦時に重要な役割を担う対人戦闘に特化した戦闘集団として名を馳せている。
第二騎士団は城門周辺や都市の警備を主とする集団、第三騎士団は都市周辺から、都市の所属する領土の治安維持を主とした任務にとしている。
第四騎士団はいうなれば騎士見習い達が集まる集団で、騎士に就任したばかりの新人が、騎士精神や、騎士としての役割を実技、座学を通して学ぶ半人前の集団である。
一般には騎士団に就任後に第四騎士団に所属し、騎士として一人前と認められれば、第三騎士団に昇格する。
さらにそこで手柄を上げると第二騎士団に、と順に昇格していく。
アシュレイは第三騎士団に所属しており、遠方の領土へと遠征から戻ってきたところで、妊婦であった妻ローナの出産の報を受けて、急ぎ帰路に着いたところであった。
「さぁローナ、可愛い我が子の顔をみせてくれ」
アシュレイはそういうと赤子を抱いたローナへと近づいて行った。
ローナに抱きかかえられた赤子は、先ほどのアシュレイが立てた騒音に気づかなかったようにすやすやと寝息を立てていた。
ローナとアシュレイは静かに寝息を立てる我が子を見つめながらこれから訪れるであろう幸せな日々を思い微笑んだ。
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