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振り返るとそこには金髪の美丈夫が俺に向かって声をウィンクしながら声をかけてきた。


「また起きたまま夢でもみてたのか?ほら、最近よく見るって言っただろ?」

「カイルか。いや、そんなんじゃない。さっきロイド先生が言ってた話を考えてただけさ」


俺が何でもないようにそう言うとカイルが身を乗り出して興奮したように話しかけてきた。


「あぁ、あれだろ?降魔の儀式!いよいよだもんなぁ。俺もやっと魔法使えると思ったらここんとこずっとワクワクしてるぜ!」


カイルが何処か気合の入った声でガッツポーズを決めている。


「あぁ、俺もここんとこずっと気になってそわそわしてるよ」

そう相槌を打ち、カイルに同意しながら先程の授業を思い返す。




この世界は魔力が満ち溢れてモンスターが蔓延はびこっている危険な世界だ。

モンスターとは、魔石とよばれる魔力の核を体内に持つ生物をいう。


俺たち人族は昔からこのモンスターに悩まされながら生きてきた。


なにしろモンスターは人族にはない鋭い爪や牙を持ち襲いかかるだけでなく、高ランクなモンスターになると魔界から溢れ出した魔力を使い、様々な攻撃方法を持つ。

それは毒や麻痺だけでなく、燃え盛る炎や鋭い石を飛ばしてくるものなど厄介なヤツらもいる。



もちろん人族にはそんな牙や爪などないが、剣や槍、斧といった武器を操る術を磨き、そのモンスター達に立ち向かってきた。

そのなかでも特異的なものが魔法とよばれるものがある。


この魔法とは本来人族には扱えない。なぜなら人族には魔力を扱うための核、魔石が体内にないからだ。


では人族は魔法が使えないかというと、そういうわけではない。

人族は10歳まで成長すると、七つの都市に居るとされる七王の眷属の力を借りることで、降魔の儀式を経て体内に魔石を生成することができるとされている。


何故10歳というボーダーラインが設定されているのかというと、それ以前で降魔の儀式をしてしまうと、肉体がその魔力に負けてしまい、十分な魔石が生成することが出来ずに朽ちてしまうと言われている。

そうなってしまうと、生涯魔法が使えなくなってしまうらしい。そんなは御免被るな。


一方で上手く魔石が生成することが出来ると魔法が使えるようになり、モンスターを討伐するものとして一人前と認識され、Fランクのギルドカードがその都市のギルドから発行される。


俺やカイルはその冒険者を目指している。


「そのために今までこの学園で身体を鍛えてきたんだからな」

俺はまだガッツポーズをしているカイルに声を掛けた。


「そうだよな、俺もできるだけ大きな魔力に身体が馴染めるように頑張って鍛えたんだぜ」


「カイルはまだまだだけどな」



力コブを作って自慢げに言うカイルに切り捨てて言うと、恨めしげな目でこちらを見てきた。



「いや、お前は鍛え方おかしいから、誰もついていけねぇよ」


ため息を吐きながらカイルがそう言うが、俺もそこまでおかしなことをしてるわけじゃない。


毎朝4時から7時までランキング、朝食を食べ終わったら8時まで筋トレをしてから学園に通学し、帰宅後晩御飯まで剣の素振りと型の見直し、その後は寝るまでランニングだ。いや、やっぱりおかしいか。


でも俺も初めからこの量をこなせたわけじゃないからなぁ。

まぁ、日々の積み重ねだな。


しかし何故こんなに身体を鍛えているかというと、もちろんモンスターと戦闘するときに上手く立ち回るためだ。


モンスターと戦闘するときに大切なのは鋭い一撃と、相手の動きを読み取り、行動すること。

そのためには身体スタミナを鍛えておく必要がある。


そして、なにより大切なのは魔法の素養を上げるために必要となる。

魔法とは魔力によって発動される。より多くの魔力を持つという事は、たくさんの魔法が使えるということに他ならない。


そして魔法は契約する眷属によって使える種類が異なる。

火を特異とする眷属の場合はより強大な火魔法が、水を特異とする眷属ではより強大な水魔法が使える。


もちろんその眷属が不得意な魔法は、習得が困難となり、例え習得することができてもその威力は大幅に変わる。



つまり、強大な魔法やたくさんの魔法を行使するためには強大な眷属と契約することが望まれる。強大な眷属と契約するためには、強大な魔力を宿せる強靭な肉体が必要となる。



ならば10歳ではなく、更に歳を重ねて契約すればよいのではないかと考えられていた時代もあったそうだが、成長するにあたり、自我が確立すると契約が上手く出来なくなるという研究結果があったそうだ。


そのために肉体的にも魔力に耐えることが出来、精神が未熟で己以外の異物を受け入れることが出来る年齢が、10歳。ということらしい。



学園では、冒険者を目指す子供たちが、身体を鍛えたり、基本的なモンスターの生体や、冒険に必要な生活学や、その他必要な事を学ぶ場であった。


俺は授業でその話を聞いた日から、ガムシャラに身体を鍛え続けた。強大な眷属と契約するために。





その日はカイルと降魔の儀式についていろいろ語った後、帰路についた。



さぁ、もうすぐだ。

もうすぐヤツを殺すための力が手に入る。


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