第5話 巣窟と遭遇
「こちらにある物をどうぞお使いください」
ヤーに案内され、ライトとウェイミーは地下の一室にやって来た。そこには無骨で物々しい武器が、閑散と所蔵されていた。
部屋全体を見渡しながら、ライトは言う。「これも、コジョ様の発明品なんですか?」
「いいえ、これらはすべて先々代が発明した品々です。その独創的で効果的な武器の数々は先進国の軍事関係者たちの目に止まり、コジョ様の御一族は巨万の富を得るに至ったのです」
「『昔の評判』とか『旅の商人』がどうのこうのって言っていたのは、このことだったんですね」
「でもいいんですか、大切な商品を私たちが使ってしまっても?」
ウェイミーの質問に、ヤーは頷いた。「ご主人様はお二人の御活躍に期待なさっているのだと思います。加えて、これらは長い間買い手がつかず、ずっと埃を被っていたものです。なので使い捨てるように扱って頂いても一向に構いません」
ライトとウェイミーはじっくりと悩んで装備を整えた。といっても、置いてあるほとんどの武器は人の手では扱えない巨大なものばかりだったので、頭と胴の防具と、持ち運びができる武器を一丁だけ装備した。そこに手袋とマスクの装着を合わせ、二人は城外に出た。
「ライトはさ、コジョ様の大切な物って、何だと思う?」汚水の池を遠回りしながら、ウェイミーは訊ねた。
「んー、発明品の一つとか、誰かからの形見とかだとは思うけど、具体的には思いつかないなぁ。ウェイミーは?」
「形見だとすれば、コジョ様のお祖父さんから貰ったものじゃないかな。肖像画があるってことは、そう言うことだと思う」
「なるほど、確かにそんな感じがするね」
ウェイミーの先導を頼りに、進むこと小一時間。途中で休息を挟みつつ、ライトとウェイミーは、小高い丘の上からペルソナを発見した。
ペルソナはその姿を変えていた。巨大なヤドカリだったのが、乗用車のタイヤ程の大きさの鳥になっている。真っ黒な羽根に覆われているが、光の加減では鮮やかな青に見えることもあった。一見カラスに似たペルソナだが、小さい
ペルソナは鎌倉型に積まれたゴミ山の上にいた。そのゴミ山は、プラスチックのフレームと言った比較的小さなものから出来上がっていた。それでも小型のプレハブ程の大きさがあった。
「ウェイミー、あれってまさか、ペルソナが自分で作ったのかな?」
「そうかも。なんだか巣みたいだね」
「ペルソナが巣を作るなんて初耳だけど、あの中にコジョ様の宝物があるかも知れないね」
ライトは、コジョから借りたロケットランチャーを構え、スコープ越しにペルソナの姿を覗いた。
「そんなことしたら宝物まで爆破しちゃうよ!?」
「大丈夫、大丈夫。どうせ当たらないんだから」
ライトは標準をペルソナのわずか上に合わせ、そして引き金を引いた。途端、先端に取り付けられていた
ライトはその反動の威力を甘く見ていた。踏ん張ろうとしても、ゴミの足場ではそれも叶わず、見事に尻もちをついた。それによりロケット弾の軌道は、本来の軌道から十数cm上にずれた。
ロケット弾はペルソナの巣の数m奥に着弾する。白と黒の煙と共に、付近のゴミを盛大に巻き上げた。さらには爆風によって、ペルソナの巣もろとも周囲のゴミも、抉るように吹き飛ばした。予想以上の威力に、ウェイミーも尻もちをついた。
ややあってライトは起き上がり、ウェイミーを起こした後に、様子を確認する。
着弾点には大きなクレーターが出来ていた。ゴミは一掃され、黒く汚れた地面が露出していた。ペルソナの巣は崩壊し、さらには背面が削られていた。
「あぁあ、だから言ったのに……」
「ごめんなさい」ライトは俯いた。
ウェイミーは肩を
「最初はあれだけ攻撃してきたのに、意外と臆病な性格なのかなぁ」
二人は丘を降り、ペルソナの巣に近づいた。そして掘り進むようにして、手分けしてゴミを漁った。
「……何だかとっても惨めな感じがするよ」
「私だってやりたくないけど、でもコジョ様の宝物を見つけないと――」
刹那、ウェイミーが悲鳴を上げた。そしてその場から慌てて後退した。
「ウェイミー!」ライトはウェイミーに駆け寄る。「どうした?!」
「あっ、あれ、あれ……!!」
ウェイミーが指差す先を見て、ライトもまた悲鳴を上げた。
ゴミ山の中から人の手が突き出していたからだ。
二人は大慌てでゴミを掻き出した。宝物の捜索など忘れ、無我夢中に手を動かす。だがその人物の顔を確認した途端、驚きのあまりピタリと手が止まってしまった。
ゴミに埋もれていたのは、コジョの先々代だった。
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