第2話 兵器と兵器
ライトは足を踏み込む角度を半ば無理矢理に変えた。そして右前方にある、冷蔵庫やパソコン本体で出来上がったゴミ山の陰に跳躍した。
直後、ペルソナが装備したガトリング砲の発砲が始まる。切れ間のない連続的なノイズが、ライトの鼓膜を震わせた。ゴミはいとも容易く破壊されつくし、見る影もなくなった。
ライトはすぐさま隣のゴミ山に跳び移る。だが間髪開けずに照準がそちらに向き直り、やはり同じように蜂の巣にされた。
「くそっ、これじゃまったく近づけない!」
ライトは逃げながらも反撃の機会を待った。
何度か、弾切れによって砲撃が止むことがあった。それを狙って接近しようと試みる、が、ペルソナが携えたゴミ山の中から新たなガトリング砲が出現し、間もなく発砲してきたからに、思うような行動が取れなかった。
耐え忍ぶこと十数分、また砲撃が止んだ。すぐに退避できる心積もりでいながらも、ライトは姿勢を低くしながらペルソナに向かって駆けた。
今までは陰から出てきて五秒と待たずに発砲されていたが、今回は十秒以上経っても撃たれなかった。これは行ける! そう思ってライトは足を速めた。
ふと、急に辺りが暗くなった。何やら大きな影の中に入ったようで、ライトは上を見た。そして落下してくる洗濯機や業務用冷蔵庫などを目の当たりにした。
それらは当然ながらペルソナが飛ばしてきていた。貝殻の先端付近、周囲を囲むような配置で四本の巨大な筒が天に向かって伸びる。そこから等間隔に、ゴミが射出されているのだ。ゴミはいずれも重さがある物ばかりで、直撃したらひとたまりもないだろう。
ライトはそれらを必死で避けた。足元が悪いために、間一髪で避ける場面が多かった。軽トラックが降ってきた時は、ライトは奇声を発すほどに仰天した。飛んできたゴミはライトの進行の妨げにもなり、ペルソナへの接近はより難航した。
さらにペルソナは、産業用ロボットのアームのようなものをライトに伸ばしてきた。関節がいくつもある、折り畳み式の長いアームだ。それが四本も五本も現れて、直接攻撃してきたり、掃除機やエアコンなどの中くらいの大きさのゴミを飛ばしてきた。
投擲されてくるゴミも含め、それらの攻撃の脅威性をライトは感じなかった。だが煩わしさが格段に上がり、イライラが募っていた。次々に飛んでくるゴミを荒っぽく両断する。
「ライト、落ち着いて!」
「わかってるよ!」
その時、ペルソナが動き始めた。ライトに背を向けて、ゆっくりと歩き去ろうとしている。
「逃がすか!!」
ライトは我慢できず、ついに特攻した。
ライトがペルソナの前に出て行った途端、ゴミの貝殻の背中から巨大な砲台が出現した。ほどなく砲台の中に青白い光が集まりはじめ、徐々に強い光となっていった。
危険を察知したライトは急いでその場からか離れようとした。だがその途端、ライトの周囲に軽自動車や洗濯機などのゴミが一斉に飛んできた。それにより瞬く間に包囲され、身動きが取れなくなってしまった。
ライトは急いで剣でゴミを攻撃する。だが予想以上にゴミが堅く、なかなか壊すことができなかった。
その間にも、砲台の中の光はより一層輝きを増していく。そしてライトが完璧に冷静さを失い、焦燥に満ち満ちた時、光の増幅は一瞬だけ止まった。
ライトはゴミの包囲から今脱出した。が、弾丸を避けるにはもう間に合わないと直感した。
激しい轟音と目映い閃光が放たれた。太い光の弾丸は一本の線となって、目標を見事に貫いた。
ややあって、ペルソナが造り上げたゴミ山は爆発した。爆風と爆音、そして粉々になったゴミが、四方八方に勢いよく飛び散った。
ほどなく爆風と残骸の飛散が治まった。ゴミから出てきたライトは、茫然自失と周囲の様子を眺めた。
「……何がどうなってるの?」
「良くわからないけど、どうやら助かったみたいだね……」
「ペルソナの気配はある?」
ウェイミーは少し黙った。「……ぼんやりと感じるけどだけだね。今の爆発で吹き飛んじゃったんだと思う」」
「了解。それならある程度集まってきたところを一網打尽して処理しよう」
ライトはゴミ山から下り、向かって左の方向へと歩き始めた。今し方、ペルソナの砲台を貫き、破壊した光線が発射されてきた方向だ。発見を早めるため、ウェイミーは人の姿になった。
しばらく探索すると、二人はそれを発見した。
巨大な砲台がゴミの谷間に立っていた。全長は50mほどはあるだろうか。迷彩色のコーディングが物々しい雰囲気を発していた。土台部分は地面に埋め込まれ、ワイヤーなどでも固定されている。銃口からは薄っすらと煙が立ち上っていた。
「ここから発射されたってことで、間違いないみたいだね」
「うーん、でも一体誰が撃ったんだろう……」
そう言いながら、ライトはさらに砲台に近づき、それに触れようとした。
『勝手に触るんじゃねぇよ』
どこからともなく男性の声が聞こえた。キョロキョロと辺りを見渡すと、ゴミに紛れ、監視カメラとスピーカーがあるのを見つけた。
『お前ら何モンだ?
「僕はライト、彼女はウェイミーと言います。旅人です」
『旅人だぁ? こんな場所をわざわざ通るなんて、モノ好きな奴がいたもんだな』
「あなたのお名前は?」
『……コジョだ。コジョ様と呼べ』
「コジョ様、
ややあって、返答があった。
『いいだろう。今の俺様はとても気分が良いからな』
「ありがとうございます」
『そこから北の方にずーっと歩いて行け。俺の城がある』
「承知しました。では後ほど」
プツン! という音が聞こえた。通信を切ったのだろう。
「で、北ってどっち?」
ウェイミーは肩を落とした。「こっちだよ。コアの気配も感じるよ」
「よし、行こう」
大丈夫かな……とウェイミーは小声で呟いた。
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