48 東京音頭の元歌 丸の内音頭
夏になると『盆踊り』を楽しみにされている方は多いことだろう。北は北海道から南は沖縄まで、老若男女が集まって踊りに興ずる。
時期的には立秋が過ぎてから行なわれるため、俳句の季語としては『秋』を意味する。昔は旧暦の7月15日に行なわれていたため、盆踊りというと『満月』の日だった。
盆踊りの期限は、平安時代に空也上人によって始められた念仏踊りが盂蘭盆の行事と結びついて、精霊を迎え入れ、死者を供養する行事になったといわれているが、現在では信仰性は薄まり、娯楽の一つとなっている。
沖縄で踊る『エイサー』も盆踊りの一つだ。沖縄に暮らしていた頃は、毎年二中前(那覇高校)の城岳公園で行なわれた盆踊りに行っていたが、もちろんエイサーも踊るが、東京音頭や炭坑節からドラえもん音頭まで出てくるのは微笑ましい。
沖縄の盆踊りでも踊られる『東京音頭』には、実は元歌がある。それは『丸の内音頭』だ。
日比谷、丸の内界隈の商店会の依頼で、中山晋平、西条八十のゴールデンコンビが作って、1932年(昭和7年)、ここ日比谷公園で開催された盆踊り大会で披露されたのが最初である。永井荷風の書いた「墨東綺譚」によると、この盆踊り大会は日比谷にあった百貨店の広告イベントで、この百貨店で浴衣を買った人が参加できるものであったと記している。
翌1933年(昭和8年)には東京市民誰でも歌えるようにと改題、改詞されて小唄勝太郎、三島一声の歌唱でビクターからレコードが出されたものが『東京音頭』だ。
レコードは瞬く間に売り上げ120万枚を記録するミリオンヒットとなる。総売り上げ枚数は不明であるが、Wikipediaによると、1971年時点での総売り上げは2000万枚を越えているという。
『東京音頭』には『音頭』と付いているが、楽曲的には音頭ではなく『甚句』だ。
『音頭』とは、独唱者が曲の主要部分を歌い、唱和者が掛け合いを歌う形式で、盆踊りなどの祭りに用いられることが多い。
これに対して『甚句』は、歌詞が7、7、7、5で1コーラスを形成されている。全国各地の民謡にこの形式が多く、囃子言葉が挿入されたり、前後に付けられたりする。
東京音頭は、大正期から昭和にかけてはやった『新民謡』というジャンルに属した『甚句』ということになるのではないか。
東京音頭は、ヤクルトスワローズやFC東京の応援歌としても歌われている。昔は、東京スタジアムに本拠地を置いた東京オリオンズ(現在の千葉ロッテマリーンズ)の応援歌としても使われていた。
歌詞は次をご覧いただきたい。
《丸の内音頭》
1(ハアー)
踊り踊るなら 丸くなって踊れ (ヨイヨイ)
おどりゃ心も (ソイ) おどりゃ心も丸の内 (サテ)
ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ
2(ハアー)
雲は九重 (チョイト) 御稜威(みいつ)は空に (ヨイヨイ)
音頭とる子は(ソイ) 音頭とる子は真ん中に (サテ)
ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ
3(ハアー)
君と民との (チョイト)千歳の契り (ヨイヨイ)
結ぶ都の(ソイ) 結ぶ都の二重橋(サテ)
ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ
4(ハアー)
揃うた揃うたよ 踊り子の手ぶり (ヨイヨイ)
ビルの窓ほど (ソイ) ビルの窓ほどよう揃うた(サテ)
ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ
5(ハアー)
大手うれしく (チョイト)顔三宅坂 (ヨイヨイ)
ほんにお前は (ソイ) ほんにお前は数寄屋橋(サテ)
ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ
6(ハアー)
おらが丸の内 (チョイト) 東京の波止場 (ヨイヨイ)
雁と燕の (ソイ) 雁と燕の上り下り (サテ)
ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ
7(ハアー)
名さへなつかし (チョイト) 霞ヶ関を (ヨイヨイ)
春は蝶々が (ソイ) 春は蝶々が番をする (サテ)
ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ
8(ハアー)
花の桜田 (チョイト) 血染めの雪も (ヨイヨイ)
消えて六昔 (ソイ) 消えて六昔 七むかし (サテ)
ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ
9(ハアー)
東京名物 (チョイト) 日比谷のおどり (ヨイヨイ)
月も笑顔の (ソイ) 月も笑顔の心字池 (サテ)
ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ
※御稜威(みいつ)・・・天皇、神などの威光
※歌詞出展 2010年度丸の内音頭大盆踊り大会のチラシによる
《東京音頭》
1勝太郎
はぁー 踊り踊るなら ちょいと東京音頭(ヨイヨイ)
花の都の(ソイ) 花の都の真ん中で(サテ)
ヤートナァソレヨイヨイヨイ ヤートナァソレヨイヨイヨイ
2一声
はぁー 東京よいとこ ちょいと日の本照らす(ヨイヨイ)
君がみずは(ソイ) 君がみずは天照(サテ)
ヤートナァソレヨイヨイヨイ ヤートナァソレヨイヨイヨイ
3勝太郎
はぁー 花は上野よ ちょいと柳は銀座(ヨイヨイ)
月は墨田の(ソイ) 月は隅田の屋形船(サテ)
ヤートナァソレヨイヨイヨイ ヤートナァソレヨイヨイヨイ
4一声
はぁー おらが丸の内 ちょいと東京の波止場(ヨイヨイ)
雁とツバメの(ソイ) 雁とツバメの上り下り(サテ)
ヤートナァソレヨイヨイヨイ ヤートナァソレヨイヨイヨイ
5勝太郎、一声
はぁー 君と民との ちょいと人手の契り(ヨイヨイ)
結ぶ都の(ソイ) 結ぶ都の二重橋(サテ)
ヤートナァソレヨイヨイヨイ ヤートナァソレヨイヨイヨイ
6勝太郎、一声
はぁー 西に富士がね ちょいと東につくば(ヨイヨイ)
音頭とる子は(ソイ) 音頭とる子は真ん中に(サテ)
ヤートナァソレヨイヨイヨイ ヤートナァソレヨイヨイヨイ
7勝太郎
はぁー むかしゃうさぎの ちょいとすすきの都(ヨイヨイ)
今はネオンの(ソイ) 今はネオンの火の都(サテ)
ヤートナァソレヨイヨイヨイ ヤートナァソレヨイヨイヨイ
8一声
はぁー 花になるなら ちょいと九段の桜(ヨイヨイ)
大和心の(ソイ) 大和心の色に咲く(サテ)
ヤートナァソレヨイヨイヨイ ヤートナァソレヨイヨイヨイ
9勝太郎
はぁー 幼馴染の ちょいと観音様は(ヨイヨイ)
屋根の月さえ(ソイ) 屋根の月さえなつかしや(サテ)
ヤートナァソレヨイヨイヨイ ヤートナァソレヨイヨイヨイ
10勝太郎、一声
はぁー 寄せて返して ちょいと返して寄せる(ヨイヨイ)
東京繁盛の(ソイ) 東京繁盛の人に波(サテ)
ヤートナァソレヨイヨイヨイ ヤートナァソレヨイヨイヨイ
終戦後、『東京音頭』の2番、5番が皇国史観を髣髴とさせ、8番が靖国賛美とうけとめられるとして、削除されたことがある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます