41 江戸の世から伝わる身近な建築用語 大黒柱
まずは、次の文章を読んでもらいたい。
以下の文章は、あくまで私のフィクションであることをお断りしておく。
公務員は、正しく几帳面な仕事をするというイメージがある。ぼんくらでは、とても勤まるような仕事ではない。
仕事がうまくいかないときに、「埒が明かない」からといってあきらめてしまうようでは、有能な公務員といえどもうだつは上がらない。
しかし公務員とて人。仕事尽くめでは、息が詰まってしまい効率は落ちる。束の間の急速に、羽目を外して気分転換する人が結構いると聞く。
終業時間になるとイの一番で職場を飛び出していく者を「5時から男」などと呼んだりするが、これではたたき上げの公務員にはなれない。一家の大黒柱であるからには、家族のためにも日々精進することが肝要だ。
身の回りには、実に多くの江戸の文化が今でも綿々と生きている。中でも普段使われている言葉の中に、江戸の文化をルーツとする単語が多い。
さてここで問題!
上の文章の中で、建築に由来する言葉は何種類あるだろうか?
答えは、10種類。わずか二百七十八文字の中に、10種類もの建築に由来するとされる用語が含まれている。
それでは以下に、それぞれの意味を記してみよう。
1 几帳面
平安時代の貴族の家は「寝殿造り」という立て方で建てられていたが、間仕切りの壁はほとんど無く、今風に言うとパーテーション(間仕切り)で部屋の空間を仕切っていた
その間仕切りは布製の屏風で「几帳」といい、几帳を支える柱の角を様々な形に面取りして装飾を凝らしていた
この面取りの方法を「几帳面」といい、とりわけ正確な技術で狂い無く作ることが必要とされていたため、転じてきちんとした様、真面目という意味になった
2 ぼんくら
諸説あるうちの一つに「盆蔵」という説がある
土蔵は空気の乾燥した冬に建設するのが普通であるが、これを夏に作ると土の表面ばかり乾燥して平均的に乾かないことから、役に立たない土蔵になってしまう
盆の時期に造られた蔵は、使い物にならないことから、ダメな人間のことを「盆蔵」というようになったという
3 埒が明かない
「埒(らち)」は囲いや仕切りのこと 主に馬場の周囲の柵のことをさす
「物事の決まりがつく」という肯定的な意味から「埒が明く」というように使われてきたが、現代では「埒が明かない」という否定的な意味で使うことの方が多い
4 うだつが上がらない
これは私が知っているだけで3種の由来がある
そのうち一番有名なものは、屋根の両端を一段高くして火災の類焼を防ぐために設けられた防火壁のことを「うだつ」という
美濃市にある「うだつのある街並」は有名だが、裕福な家にしか「うだつを上げる」事が出来なかったので、社会的に成功して裕福になることを「うだつが上がる」、逆を「うだつが上がらない」というようになった
5 束の間
梁と棟の間に立てる短い柱を「束」ということから、「わずか」、「ちょっと」という意味が生まれた
6 羽目を外す
「羽目」とは板を重ねずに隙間無く並べて張ること きちんと並べてきれいに張った羽目を外すと、建築意匠が台無しになってしまうことから生まれた
7 結構
中国における建物の組み立て具合をさす言葉
建物を褒めるとき「見事な結構だ」というように使われた それがだんだん短縮されて「結構」だけで「優れている・満足する」ということを意味するようになった
満足するから転じて、「それ以上必要としない」意にも使われる
8 イの一番
家の図面を引くときに、柱の位置を縦方向に「イロハ・・・」、横方向に「一、二、三・・・」というように「番付」という符号をつけ、「イの一番」の柱から建て始めたことから生まれた
9 たたき上げ
「三和土(たたき)・・・土間のこと」を作るときに生半可なたたき方ではいい土間が出来ないことから生まれた 苦労を重ねて腕を磨き、一人前になることをいう
10 大 黒 柱
家の中央にあって、最初に立てる柱のこと 土間と床上部との境にある特に大きな柱をさす
転じて家や組織の中心となり、支えとなっていることのことを指すようになった
以外と知らないうちに建築用語を使ったりしているのではないだろうか。
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