第3話。誰かを一生愛する不幸

誰かを一生愛することができたのならそれはどれだけ不幸なことだろうか。

いや別に不幸ではないのかもしれないのだけれど、でももし生きていくことが変わっていくことなら、不変の想いというのはもしかすると死んでいることと同義なのかもしれない。そんな風に思うんだ。


そんなことを思うのは貴方だけよ。変わらない想いだなんて、幻想的で、魅力的で、理想的で、計画的で、神秘的で、素敵じゃない。


いや。俺だって不変の想いっていうのは素晴らしいと思うけれどでもそれが幸か不幸かだなんていわれたらそれはそれで分からないって言っているんだよ。

別に批判しているわけじゃないんだ。


じゃあなに?批判していないというのなら侮蔑でもしているのかしら。


なんでそういう話に持っていきたがるんだよ。


それはまぁ、貴方を貶めるのが好きだからよ。


俺はお前に精神的な異常性を感じるよ。

まぁそれはさておき、例えば俺が誰かを一生愛したとしてそれは果たして幸福だと思うか?


それはそうね。貴方みたいな宇宙の最底辺に君臨するごみクズの方がまだマシと思えるような下劣で無粋で悪辣で浅学非才な男に一生愛されるだなんて屈辱は精神的外傷にもなりかねない自殺案件ね。


俺がお前に一体何をしたって言うんだよ。


忘れたとは言わせないわよ。あの夜のこと。


人の記憶を勝手に捏造するな!!耳元で囁くな!御幣を生むな!!


あらあらこれはごめんなさい語弊さん。でも真面目にもっと勉強した方が良いわよ。「御幣」ではなく「語弊」だし、生むものじゃなくて招くものなのよ。


それくらい分かっているさ。


分かっているというのならどうして、何故、どんな理由で間違ったのか百文字以内で説明してもらおうじゃないの。できるわよね当然。


……間違えました。


完全勝利。世界中の皆様、あの憎き男を、世界の敵たるものをこの私が討ちとりました。さぁ、全人類よ私を崇めなさい。崇光たるこの私を。


お前いつか炎上するぞ。


何を言っているの。炎上するには知名度というものが必要なのよ。ところがどっこいこの私にはその知名度というものが欠如しているのよ。


お前に欠如しているのは思いやりと良心だ!!


ありがとう。素直にお礼を言っておくわ。


褒めていない。


閑話休題。話を元に戻すけれど、


自分で脱線しておいてよくそんな偉そうに仕切りなおせるな。


だって私、偉いもの。偉いもの!!


分かった!!分かったから声を張らなくていいし2回言わなくていい!!


何ちょっと、煩いのだけれど静かにしてくれるかしら。私煩いのは嫌いなの。


同じセリフを数秒前の自分に言ってやれ!!


まぁでも確かにそうよね。一方通行な想いなんて重いだけだし、想われている方からしたら迷惑なだけなのかもしれないわね。

でも、だとしても、そういう人たちって無理に自分の感情を相手に押し付けるような真似はしないと思うのだけれど。達観しているというかなんというか。あぁ、自分はこれでいいんだ的な。


それのその想いが一方通行である以上実ることはないんだ。それって幸せか?


あぁ、本当に可哀想だわ。悲惨だわ。もう目も当てられないわ。


急になんだよ。


幸せかどうか何て他人が勝手に決めつけて良いものじゃないのよ。だって幸せなんてこの世の何処にも無いのだから。あるというのなら教えてほしいわ。

言ってしまえば、他人からどれだけ幸福に見えていようとも、本人が不幸だと感じていたらそれは不幸だし、他人からどれだけ不幸に見えていようと本人が幸せだと感じていたらそれは幸福なのよ。

それに、幸せというものに明確な基準なんてものは存在しないでしょう?

つまるところ幸せというのは感じるものなのよ。

例えば貴方。そうね、よく日本が義援金なんかを集めている国の人間を可哀想だと思う?


そりゃ思うよ。


それはどうして??


だって、まともな教育を受けられない、明日食う飯もあるかどうか分からない。そんなの可哀想すぎるだろ。


でも、それって、日本人の勝手な思い込みであったり、価値観の押し付けだったりするのよ。

そりゃ、中にはちゃんと教育を受けたいと願う子がいるかもしれない。ご飯の心配なんかしないで思いっきり遊んでお腹いっぱいご飯を食べたいと思う人もいるかもしれない。

でもね、何年か前に、何かの番組だったか、本だったか、体験談だとかで聞いたのだけれど、そういう国の人たちの中には私達日本人を可哀想だと思う人もいるのよ。


なんでだよ。絶対日本の方が恵まれているじゃないか。教育も受けられて、ご飯の心配もしなくていい。戦争だってないし安全で平和だ。


だからそれが価値観の押し付けだというのよ。

だとすれば極論、日本に不幸な人間なんていないということになるじゃない。


それは極論すぎだろ。で、何が言いたいんだよ。


つまりね、そういう国の人たちはこう言ったそうなのよ。

日本人は生まれてから死ぬまでずっと仕事に自由を奪われている。日本人は私たちを可哀想というけれど私たちは自由だ。自由というのは素晴らしいことだよ。私はとっても幸せ者さ。

ってね。まぁ、いくら私といえど幼少のころに何となく聞いたその言葉を丸暗記するのは無理だったから少しだけ私の見解も入っているけれど意味合いでいえばこんな感じだったわ。


なるほどな。確かにそうかもな。

幸せなんて……


幸せなんて、誰かが勝手に決めていいものじゃないのよ。

だって幸せの形は人それぞれなのだから。

だから貴方の言う誰かを一生愛するという行為は必ずしも不幸なことだとは限らなくって要は自分次第なのよ。

不幸だって思うのなら幸福に変えられるよう努力しないと。

だってそれが、人間というものでしょう??


……最後おいしいところ全部持っていきやがった。


ご馳走様でした。


お粗末様でした!!!








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る